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■第25回郁文社書道展 (2013年12月10~15日、札幌)、あるいは「誰が歴史を書くか」問題。 12月14日(8)

2013年12月15日 11時53分24秒 | 展覧会の紹介-書
承前

 さいとうギャラリーの次は、ギャラリー大通美術館へ。
 先日の読売新聞北海道面にこの書展の記事が載っていたので、気になっていたのだ。
 「第25回」とあるが、道内の開催は初めて。主宰の高木聖雨氏は、東京在住で、月に1度、このギャラリーで指導をしているという。日展会員、読売書法展の幹部であり、全国を指導で飛び回っているのであろう、約110人の出品者も九州、関東など全国にまたがっている。
 作者名の横に添えられている都道府県名を見ると、北海道は10人程度。筆者が存じ上げている名前は函館の下山邃堂さんぐらいのものであった。しかも、会場の係の方によると、この表示は出身地の場合もあるという。
 作品は大半が漢字。行草書でも書風はまずまずバラエティーに富んでいるほうだとは思うが、隷書や、淡墨の作などはない。毎日書道展的な分類でいうと「多字数」ばかりで、数文字からなる作品はほとんどない。調和体や刻字、写経なども数点あった。
 出品者に堀江尚子、生野陽子とあるのは、フジテレビのアナウンサーであるようだ。

 これだけ道内関係者の少ない書展は珍しいと思うが、最大のセールスポイントになりそうなのは、青山杉雨、高木聖鶴という文化勲章受章者の作品が1点ずつあることだ(ちなみに、青山は特別展観、高木は賛助出品となっているが、違いはよくわからない)。
 意外なことだが、書の分野で文化勲章を受けた人はこれまで(たしか)6人ほどしかいない。
 6人中2人が並ぶというのは、道内ではめったにない機会だろう。

 しかし…。と考える。

 この手の顕彰制度の常とはいえ、近代日本の書道史を変えたといわれる比田井天来や、海外での知名度の高さでは他をしのぐであろう井上有一は、文化勲章を受けていない。

 誰が評価の主体という権力になるのか、そして、誰がその分野の歴史を書くか…という<闘争>の過程と結果により、いろんなことが変わっていくだろう。

 例えば、近代日本の彫刻史では、日展系は歴史を書く主体の座につくことに失敗したため、もっぱら新制作系の目線で歴史が書かれることになったといえなくもない。もちろん、それは、新制作系の彫刻作品を評価する<目>とワンセットであるわけだが。
 もうひとつ例を挙げれば、1880年ごろのフランス画壇で、まさか後年ここまで印象主義主体で美術史・絵画史が叙述されることになるだろうとは、誰も自信をもって断言できなかったのではないか。
 歴史なんてものは、時代によって、書く人によって、大きく様相を異にするものなのだ。

 書、とりわけ近現代日本の書道をめぐって書かれる批評や歴史などは、他の美術分野に比べると少ないが、比田井や金子鷗亭(彼は文化勲章受章者。鷗は機種依存文字で、「鴎」の正字)、井上、上田桑鳩などを評価する歴史叙述の立場からすれば、なんで読売書法展から文化勲章受章者がこんなに出るんだ―ということになるかもしれない(ここらへんは筆者が事情をきっちりわかって書いているわけではない。要精査)。
 
 1880年代のフランス美術史がどう叙述されるかの闘争ははるか昔に決着をみたが、現代日本の書道史が今後どう書かれていくのかは、まだ闘争の最中なのかもしれない。


2013年12月10日(火)~15日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後4時)
ギャラリー大通美術館(札幌市中央区大通西5 大五ビル)

□高木聖雨 http://www.geocities.jp/seiutakaki/





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