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■はらださとみ展 spring to mind キオクサレテイル (2016年3月15日~27日、札幌)

2016年03月27日 10時18分24秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 案内状を見たとき、陶芸展だとは思わなかった。
 会場に置かれた陶片のアクセサリー(オブジェ?)を眺めていたら、作者に話しかけられて
「ギャラリー門馬アネックスで、いすを千個並べていた者です」。

 2014年6月、彼女の作品展「ありとあらゆる あまねく あまた」を、筆者を見た記憶がある(しかし、このブログには何も書いていなかった…)。
 しかし、案内状を見ると、羊皮紙かなにかの作品みたいなのだ。

 はらださとみさんは、あまり素材にこだわらない人らしく、会場中央に設置されたインスタレーション「雨やどりの幻想」は、銅や真鍮の針金を、糸と同じように鈎針で編んだものを、いくつも上からつるしている。金属なので、手が痛くなったらしい。
 照明に詳しい知人が床の上にあかりをセットしたおかげで、天井にそれぞれの影がうつって、おもしろい光景となった。




 北側の壁にいくつも展示されているのは、ちいさな陶板の作品。
 景色(絵画でいえばマチエール)や色彩がさまざまで、見飽きない。
 「遠くに見えるカケラ」「あわあわ・あわ」「大人ブランコ」「金平糖のおどり」といった詩的でユニークな題がついている。
 別に思いついたことばを書き留めておき、それにあう作品と結びつけるとのこと。つまり、最初から題をつけて制作するのでもなければ、できあがった作品を見て題を考えるのでもないとのことだ。




 今回の個展のタイトルにもなった「spring to mind」。

 はらださんにとって、陶芸に取り組むことで、子供時代を思い出すことが多いという。
 土をこね、ふるいで土をより分ける行為は、たしかに、幼いころに砂場などでやったおままごとなどに似ている。




 これが、案内状に印刷されていた作品。
 額はあるが、支持体がないので、額と作品のあいだは壁が丸見えになっている。
 陶板は、なんと自分の素肌の胸に土をじかに押し当てて成形したのだそう。
 表面の文字は、釘のようなもので引っかいて書いている。素焼きのあとで、鉄釉を筆跡のくぼみに入れて、色をつけるとのことだ。ちなみにこれは、永遠の青春文学「シラノ・ド・ベルジュラック」からの引用。


 はらださんは陶芸家なので、会場にはふつうの器もたくさん置いてある。
 電動ろくろを使わず、手びねりで成形するのだそうだ。
 底の部分にきれいな色がついている小さな猪口のような器があったので
「きれいな釉薬だまりですね」
と言ったら、なんとこれは、あらかじめガラスを埋め込んで焼成したという。もちろん、釉薬だまりもあるのだが、色の濃さが異なるのがはっきりわかる。
 はらださんはさらりとおっしゃるが、こういう発想はなかなかできない。さりげない自由さがすばらしいと思った。


2016年3月15日~27日(日)午前10時30分~午後10時(日曜~午後8時)、会期中無休
to ov cafe(札幌市中央区南9西3 マジソンハイツ)



・地下鉄南北線「中島公園駅」から約220メートル、徒歩3分
・地下鉄東豊線「豊水すすきの駅」から約600メートル、徒歩8分

・中央バス、ジェイアール北海道バス「中島公園入口」から約380メートル、徒歩5分
・市電「山鼻9条」から約610メートル、徒歩8分


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