絵画から出発した作家の多いプラスワンだが、招待作家の川上りえさん(石狩在住)はバリバリの彫刻畑の作家である。金属でパワフルな抽象作品を作る。
近年は海外でのレジデンス経験も重ねており、米国や韓国での発表も多い。
下のリンク以外にも、ことしは、道立旭川美術館と中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館の同時開催となった「旭川彫刻フェスタ」、時計台ギャラリーではなくほんとの時計台を会場とした「時計台をARTする。」展、ギャラリー門馬など3会場で展開された「試みの茶事 EZO茶会」に参加。昨年は樽前ARTYや、ギャラリー創のいす展などに出品している。
プラスワンの人って、どうも忙しい方が多いようだ。
それはさておき。
今回の「Surface of 79.7」は、美術館の一角が海になったような作品。
この一角は、周辺より少し低くなっており、階段の上から全体をちょっと俯瞰気味に見渡せる。
水の波紋を思わせる曲線が全体に走るなか、ちょっと突き出ているのは、岩礁に見立てることができる。
79.7は美術館のある場所の海抜のメートルという。
丘の中腹に立つ美術館に水が押し寄せてくる天変地異の映像を幻視したような、そんな作品だ。
「圧迫感を呼び起こすような空間を作ってみたいと思った。線で面を作ったことで、水と空気のある空間という感覚が呼び覚まされる」
と話す川上さん。衣服の汚れてもかまわないかたは、どうぞ作品に入って、水の中にいるような感覚を呼び覚ましてほしい-と言うので、入ってみた。
ぶくぶく。。
とは、もちろんならないんだけど、確かに圧迫感がある。
水の中に沈んでいくような。
もちろん、ただの比喩的な表現ではない。それなら、鉄を青く塗れば済む。
そういう、本物に似せるのではなく、針金をまげて、区切られた空間に平らな面を現出させることで、見る人の想像力を促す。
川上さんの作品は細い鉄の線が空間を走りまわるものが少なくない。
その線は、自由かつ力強いので、見ている人の身体性に直接働きかける作用があるように思う。
線を目で追う。
知らず知らずのうちにこちらのからだが動き出しているような、そんな感覚があるのだ。
ストロークのときの腕の動きを、見ている側でも思わず反復してしまうような。
楢橋朝子、と冗談のひとつもいいたくなる画像です(笑)。
図録には
私は、宇宙という次元のなかで物事を捉えていくことに興味があります。物事の現象、変化の中に内在するエネルギーを私の感性によって抽出し、作品を通して具現化することを試みています。表現手段は、彫刻、インスタレーション、インタラクティブ・ワーク等様々です。空間に足を踏み入れることで、観る人の、心の奥底に沈殿している感覚が引き出され、鮮明に甦えるきっかけになるような作品を作りたいと考えています。
2010年9月11日(土)~26日(日)10:00am~5:00pm(入館は4:30まで)、月曜休み(月曜が祝日の場合は翌火曜休み)
本郷新記念札幌彫刻美術館本館(札幌市中央区宮の森4の12)
入場無料
□http://riekawakami.net/
■川上りえ個展 イロジカル・ムーブメント (2010年6月)
■SAG Introduction II (2009年10月)
■交差する視点とかたち vol.3 阿部典英 加藤委 川上りえ 下沢敏也(2009年7月)
川上りえ「ANCIENT SUN」(野外立体作品)
■SAG INTRODUCTION(2008年12月)
■On the wall/Off the wall 山本雄基、西田卓司、川上りえ(2008年9月)
■川上さんの米国滞在報告(08年6月)
■川上さん、米国でレジデンス中(08年4月)
■川上りえ展 Trace of Will(06年)
■米国での個展報告(04年)
■札幌の美術2003 ワークショップ
■札幌の美術2003
■北の彫刻展2002(画像なし)
■水脈の肖像(02年、画像なし)
■川上りえ個展-浸透痕(01年)
■北の創造者たち(2000-01年)