寺井暢彦さんと宣子さんは夫婦で、2人とも道展会員。
暢彦さんは長く道教大で木工を教え、宣子さんは日本水彩画会の会員としても活動してきました。個展は、宣子さんのほうが活発に開いてきた印象があります。
会場の中央には、どことなくユーモアをたたえた大型の立体が並びます。
左から「心象」「登高」。
異なる種類の木を組み合わせ、中央に大きな空洞やスリットをあけた構成が、周囲の空気を和らげます。スリットに挟まるように配置された玉もユニークです。
会場には、自由にすわれるいすもありました。
左から「寛ぐ」「森精」「憩う」。
中央はオブジェですが…。
カタチは異なるのに、腰掛けるとほっとひと息つけます。
会場には手作りのボードゲームまで置いてありました。
ドミノやバックギャモンなどです。
いずれも奇をてらわないオーソドックスな仕上がりでした。
さて、宣子さんは以前から、文様などを精緻に描き込む画風で目を引いてきました。
今回、多くの作品の中に仏像のシルエットが描かれています。
数年前、病気した折にふと買い求めた菩薩の像が、ある日
「(自分を)描いて! と言ってるように感じて」
描き始めたのだそうです。
次の4点は、日本水彩画会が、東京都美術館の改修工事で会場を移している間、作品の号数制限が厳しかった頃に描いたもの。
春は桜の花びら、冬は椿など、ちょうど四季に対応しています。
冒頭の画像は、その後に描きついだ菩薩のシリーズ。
それにしても、背景のレース編みのような模様との重なり合いは、綿密な描き込みに驚かされます。
聞くと、描いてから3、4週間後に、一度古いブラシやたわしを使って洗っているとのこと。
なるほど、模様がちょうどいいぐあいに薄い色合いなのは、そのためなのでしょう。
この手法は、札幌西高で長く美術教育に携わった宮前三晴さんに教わったとのこと。
筆者が「去年、青梅の美術館で、宮前さんの絵を見ましたよ!」と言うと、がぜん話が盛り上がりました。
寺井宣子さんも札幌西高の出身で、宮前先生を慕っているのです。嵐玲子さん(全道展会員)など、西高で宮前さんの薫陶を受けた人の多いことを、あらためて実感しました。
身近な庭の植物などを描いた小品にも、季節の移ろいをいつくしむ作者の心情が反映されているようで、見ていて、心が温かくなるようでした。
2016年9月12日(月)~17日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
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