3月24日、夕張に行く。
財政の苦しい夕張市を助けるためには、夕張に本社のある会社に、少しでもカネを落とすようにしたい。
そう思って、夕鉄バスの札幌急行線に乗った。
というのは建前で、要は、札幌急行線に、ずっと前から全線通しで乗りたかったのだ。
札幌(大通西3丁目)と夕張を1時間40分で結び、1日8往復。
まさに、夕鉄バスの「フラッグシップ」とでも形容すべき路線なのだ。
そもそも「急行」という響きが良いではないか。
現代は、都市間高速バスがたくさんあるが、あれは、大都市と地方都市をとにかく短時間で直結させるのが優先事項であり、その中間の過程は知らないよ-という、はなはだビジネスライクな乗り物である。
しかし、急行バスは、あくまで路線バスである。ただ、停留所はいくつか通過していく。
札幌急行線の場合、途中の中央長沼で乗って由仁駅前で降りる、なんてことも可能だ。
列車の世界でも、現在道内で「急行」を名乗っているのは「はまなす」しかない。
ひたすら速度を追求する新幹線や特急と、普通列車・路線バスとの狭間にあって、急行とは、すでに時代遅れの存在なのかもしれないが、だからこそ、急行を掲げた路線を堂々と会社の時刻表のトップに出している夕鉄バスの姿勢が、好ましく感じられるのだ。
筆者が最初に札幌急行線に乗ったのは1970年代の前半である。
当時、白石方面に用事があり、地下鉄東西線が開通していなかったこともあって、国道12号を走るバスに何度か乗ったものだった。
たいていは国鉄バスを利用したが、1度か2度、夕鉄バス札幌急行線に乗った。
車内に足を踏み入れると、革のかばんをさげた車掌さんが来て、行き先を聞く。
「白石中央まで」
と言うと、代金と引き換えにきっぷをくれる。
さすがに70年代に入ると、車掌の乗務するバスは少数派になっており、めずらしく感じられたものだ。
しかし、なにより札幌急行線で胸がときめいたのは、全席ロマンスシート(2人がけ)で、しかも最前列が、フロントグラスのすぐ後ろにあったことである!
バスのいちばん前は、ワンマンならいうまでもなく乗降口だし、車掌のいるバスでもバケツかなにかを置くスペースになっていることが通例で、かぶりつきで車窓風景を楽しめるバスは、札幌急行線以外にはなかったのだ。
「東橋」とか「西白石」といった、ふだんはいちいち停車していく停留所を、ほとんどすっ飛ばしていく韋駄天(いだてん)ぶり。
そのバスの、いちばん前の列を、白石中央で離れなくてはならない悔しさ。
札幌急行線を全線通して乗るというのは、三十数年来の夢だったのである。
(この項つづく)
財政の苦しい夕張市を助けるためには、夕張に本社のある会社に、少しでもカネを落とすようにしたい。
そう思って、夕鉄バスの札幌急行線に乗った。
というのは建前で、要は、札幌急行線に、ずっと前から全線通しで乗りたかったのだ。
札幌(大通西3丁目)と夕張を1時間40分で結び、1日8往復。
まさに、夕鉄バスの「フラッグシップ」とでも形容すべき路線なのだ。
そもそも「急行」という響きが良いではないか。
現代は、都市間高速バスがたくさんあるが、あれは、大都市と地方都市をとにかく短時間で直結させるのが優先事項であり、その中間の過程は知らないよ-という、はなはだビジネスライクな乗り物である。
しかし、急行バスは、あくまで路線バスである。ただ、停留所はいくつか通過していく。
札幌急行線の場合、途中の中央長沼で乗って由仁駅前で降りる、なんてことも可能だ。
列車の世界でも、現在道内で「急行」を名乗っているのは「はまなす」しかない。
ひたすら速度を追求する新幹線や特急と、普通列車・路線バスとの狭間にあって、急行とは、すでに時代遅れの存在なのかもしれないが、だからこそ、急行を掲げた路線を堂々と会社の時刻表のトップに出している夕鉄バスの姿勢が、好ましく感じられるのだ。
筆者が最初に札幌急行線に乗ったのは1970年代の前半である。
当時、白石方面に用事があり、地下鉄東西線が開通していなかったこともあって、国道12号を走るバスに何度か乗ったものだった。
たいていは国鉄バスを利用したが、1度か2度、夕鉄バス札幌急行線に乗った。
車内に足を踏み入れると、革のかばんをさげた車掌さんが来て、行き先を聞く。
「白石中央まで」
と言うと、代金と引き換えにきっぷをくれる。
さすがに70年代に入ると、車掌の乗務するバスは少数派になっており、めずらしく感じられたものだ。
しかし、なにより札幌急行線で胸がときめいたのは、全席ロマンスシート(2人がけ)で、しかも最前列が、フロントグラスのすぐ後ろにあったことである!
バスのいちばん前は、ワンマンならいうまでもなく乗降口だし、車掌のいるバスでもバケツかなにかを置くスペースになっていることが通例で、かぶりつきで車窓風景を楽しめるバスは、札幌急行線以外にはなかったのだ。
「東橋」とか「西白石」といった、ふだんはいちいち停車していく停留所を、ほとんどすっ飛ばしていく韋駄天(いだてん)ぶり。
そのバスの、いちばん前の列を、白石中央で離れなくてはならない悔しさ。
札幌急行線を全線通して乗るというのは、三十数年来の夢だったのである。
(この項つづく)