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■高橋喜代史「フリー・スイカ・バー」/ KIYOSHI TAKAHASHI new project "Free watermelon bar" (2024年9月1、2日、札幌)

2024年09月03日 09時15分23秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 現代アートに腰を据えて取り組む作家が少ない札幌の地で、独自の作品を制作・発表し続け、道なき道を歩み続ける高橋喜代史さん。
 札幌の中心商店街「狸小路」の5丁目にある「空き地」で9月1、2の2日間、プロジェクト「フリー・スイカ・バー」を展開しました。
 
 
 「空き地」ってなんじゃい? と思った方もおられるでしょうが、ほんとうにそういう名前のついた期間限定のスペースがあるのです(画像は、南2条側の入り口。南2条通りと狸小路のどちらからでも入れる)。

 飲食のお店もあり、中には人工芝やリクライニングシートがあって、まったりとくつろぐことができます。入るのは無料です。

 目まぐるしさを増す一方の現代社会と市場経済へのゆるいアンチテーゼでもあるようですし、同時に、こんなことまで流行の話題として消費してしまう現代社会があらわになってしまうとか、あれこれ議論ができそうですが、この文章の主題は会場のことではないので、話をプロジェクトのほうに戻します。
 
 
 この一角に、キーボーこと高橋さんがブースを出し、スイカジュースやスイカ入りのお酒などを無料で提供するというもの。
 もらった人は、用紙に署名して、ブース横にあるボードにサインをすることが条件です。
 
 もちろん、プロジェクトは彼一人だけではできず、今村育子さんが一緒に飲料を作ったり、小町谷健彦さんらがビデオを回したり、協力しています。
 映像は10月に札幌のギャラリー「CAI03」で開かれる高橋喜代史個展で使われるとのこと。
 
 
 筆者は1日夕に訪れました。
 ちょっとアーティストの話でも聞きたいなと思っていたのですが、到着してびっくり、ブースの前には長蛇の列ができています。
 
 話を聞くどころではなく、写真のブログ掲載だけ応じてもらって、次の予定に行きました。
 
 尋ねたかったのは一つ。

 これらの文字列やイメージから連想されるメッセージは明確なのに、なぜ、現地にもウェブサイト・SNS にも一切そのことについて書かれていないのか。


 以下は、筆者の勝手な想像と推測です。

 日本には「言論の自由」があることになっており、憲法でも保障されています。

 しかし実際にそれを行使しようとすれば、おそろしくたくさんの障壁があることが痛感されます。
 
 数々の公共空間には使用条件として、政治的・宗教の活動には用いない旨が記されています。

 どこまでが政治的で、どこからが非政治的か、そんな明確な区分けは存在しないはずです。
 
 そりゃ筆者も、たとえば、公民館の一室を、議員が選挙事務所に使ったりするのはどうかと思いますよ。でも「平和を訴える」というような漠然とした活動にも、なんとなく制約が生じていないか。
 なにせ、遊説中の総理大臣に短いヤジを飛ばしただけで、警察官がたくさんやって来て、理由もわからないうちに拘束されるのが日本ですからね。
 ヤジより銃弾を飛ばす人を警戒すべきなのに。

 「空き地」の利用ルールがどうなっているのか、筆者は知りません。
 でもおそらく、駅や地下街がそうなっているように、旗を立てたり、演説をしたりすることは、容認されていないのではないでしょうか。
 
 であれば、その制約を逆手にとってアートにしちゃえ! というふうに作者は考えたのではないだろうか。そう推測したのです。
 
 この
「BAR IS OPEN!」
のロゴが、ジョン・レノン&ヨーコ・オノの
「WAR IS OVER!」
を踏まえていることは明らかです。
 ほんと、うまいよねえ。
 「BAR」と「WAR」は文字列がよく似ているし、三つ目の単語も頭文字が同じです。

 うまいといえば「FREE」には「無料」と「自由にする」の、双方の意味があります。
 
 
 ジョンとヨーコのメッセージで次に有名なのは「IMAGINE」でしょう。
 「想像しなさい」ってことです。

 「イマジン」はジョンがビートルズ解散の後に発表したソロでの代表曲です。
 しかしコンセプトの源は、コンセプチュアル・アーティストとしてのヨーコの本「グレープフルーツ・ジュース」にあるともいえます(スイカ・ジュースではありません笑)。
 

 サインだけでよいのに、絵を描く人が多くなったボードですが、筆者も右下の隅にサインしてきました。
 ジョンとヨーコのひそみにならって「ギブ・ピース・ア・スイカ」です。

 
 言論の自由や表現の自由を憲法で認めている国は多くあります。
 しかし、実際にモスクワの街路で戦争への反対を叫ぶと、官憲に逮捕されます。
 そういえば、テルアビブやエルサレムでは、そういう行動は行われていないのでしょうか。これまでも和解に向けた誠実な表現活動を行ってきた指揮者バレンボイムなどは、いまどこでどうしているのでしょう。
 もちろん筆者は、だから日本も完全な自由なんて幻想だからがまんしろ、などと言いたいわけではありません。この手の自称現実主義者は好きじゃないな。

 アップルジュース入りのスイカジュースを飲みながら、札幌の空を見上げます。

 青空はここ (here) にもよそ (there) にもおなじように広がっているはずです。

 ここではない「よそ」をイマジンすること。
 ここから「よそ」へ寄り添うこと。
 ほのめかされているメッセージを読み取ること。

 それこそが「アートの力」なのではないかと思います。

(以上、アーティスト本人にまったく話を聞かないまま、3千字も書いてしまいました。ごめんなさい)

 
2024年9月1日(日)午後1~8時、2日(日)午後3~6時
空き地(札幌市中央区南2西5)

https://takahashikiyoshi.com/blog

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(※本郷新記念札幌彫刻美術館での個展の記事を書いていません。すみません)


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