「怪獣」ってなんだろう。
決して大昔からある概念ではないし、実在する生き物でもない。
1950年代のゴジラから70年代のウルトラマンシリーズまで、歴史的にはそれほど長くない期間、スクリーンやテレビのブラウン管に数多く登場し、その時代に幼少期を過ごした子どもたち(おもに男の子)の脳裡に深い印象を刻んだ。でも、それ以降の若い世代にとってさほど身近な存在だとはあまり感じられないし、多くの女性・少女にはいささか縁遠い存在のような気がする。
でも、小さい頃「帰ってきたウルトラマン」を毎週金曜の午後7時から見ていた自分にとっては、怪獣の居ない世界というのは信じられない。いや、実際にはいないんだけど。
ウルトラマンシリーズでいうと、身長は40~60メートルほど。体重は2万~4万トン前後。
人間の20~40倍程度の背丈で、体重は30万~60万倍もあるというのは重すぎるような気もする。重すぎて地面にめり込んでしまうのではないか。でも、それぐらいの体重がないとビルディングは壊せないという説もある。たしかにほとんどの人間は、小さなコンクリート塊を破壊することはできない。
さらにいえば、もし怪獣が生物だとしたら、当然両親、祖父母がいるわけで、単独では生存できない。地球上にあれほど巨大な生物が世代を重ねているというのはほとんど無理なのだ。だから宇宙からやって来たという設定が好まれるのだろう。
この個展では、ほとんどが水戸さんオリジナルの怪獣が描かれている。
「帰ってきた鮭怪獣 HOCHA-LAY」(3枚組み)は、豊平川のミュンヘン大橋のあたりに出現している。
真駒内のサケ科学館にも登場する。
怪獣が破壊するのは東京か、架空の都市が多く、札幌の例はほとんどない(例外は「ガメラ2」)。だから、身近な風景への異種生物の挿入は、とても斬新に感じられる。
「HOCHA-LAY」が、遡上してきて川で力尽きたサケを表す「ホッチャレ」に由来することはいうまでもないだろう。
この怪獣も最期を迎え、多くの生き物が死骸に登る。
次の絵は「南区石怪獣 モアイゾー」。
南区石山が札幌軟石などの産地であることと、区内の真駒内滝野霊園に石のモアイ像が並んでいることに引っかけて作ったのだろう。
ただ、筆者がツッコミを入れたいのは、この絵の「ぽすとかん」(札幌軟石で造られた旧石山郵便局)の左側の道路である。狭すぎて、通れないだろう!(笑)
筆者がいちばん気に入ったのは、これ。「未確認建造物 ラムネの塔」。
キャプションに説明があった。
いや~、エモいですね。
手前に「太陽の塔」をぽんと置いたのは、ゴルディロックスのアイタさんです。
あらためて。
怪獣とは、何だろう。
怪獣は毎週のように東京を破壊していた。あんな災害が毎週襲っていたら、日本経済は立ち直れないだろう。
それでも、怪獣とは、少年たちの「夢」だったのだと思う。
大きくなりたい。
世界が一変すればいい。
そういう、ごく漠然とした夢の結晶。
長じて、夢が現実にはかなわないと知るにつれ、怪獣は意識の後ろ側にしりぞく。
もっとも、身長40~60メートルでは、もう東京の街ではビルを見上げるように歩くしかないだろうな。
いまや日本を代表する怪獣はポケットサイズが人気者になっている。
夢にとぼしい時代なのかもしれない。
だからこそ、水戸さんは、夢をキャンバスに描いたのかもしれない。
必見。
出品作はほかに
道民正月お祝い怪獣 オカザリ
食鬼怪獣 キングイトー
砂漠のキャラバン 怪獣のバラード
東区怪獣 タマネギン
信念の真っ赤なバラ
獲物
ブラックアウトの色彩
魚鬼怪獣 キングイトー
西岡公園工作怪獣 オーウバユリ
北海魚怪獣 カジカン
月下美人竜
疫病退散聖獣 アーマービエ
北海魚怪獣 GOCCO
生き残っていた恐竜
ブルートレイン怪獣 北ト星
(北ト星は原文のママ。ヘッドマークにもそう書かれています)
2023年1月6日(金)~29日(日)午後0時半~8時、月、火、水、木曜休み
絵本と cafe ゴルディロックス(札幌市東区伏古10の4)
作者ツイッター : @mitorama
絵本とcafe ゴルディロックス への道順
過去の関連記事へのリンク
■さいとうギャラリー企画展 ゆく年くる年 '22▶'23展 (画像なし)
■さっぽろ雪像彫刻展 (2019)
■企画展「ゆく年くる年 '17-'18」 (画像なし)
■New Point vol.12 (2015、画像なし)
■MITORAMA―胎児の観るユメ―水戸麻記子絵画展 (2014)
■New Point Vol.11 (2014年1月=画像なし)
■織姫たちのスイーツ・アート 楽しい現代美術入門 (2013年、画像なし)
●MITORAMA-プリティ- 水戸麻記子絵画展 (2011)
■水戸麻記子絵画展 MITORAMAFUL (2010年2月)
■New Point vol.7 (2009年1月)
■4つの世界の物語(2008年)
■水戸麻記子展 MITORAMA14(2008年)
■MITORAMA13 夜と朝(07年1月)
■06年4月のミトラマ12
■04年のMITORAMA 11(画像なし)
■02年のMITORAMA X
■02年の二人展
・地下鉄東豊線「環状通東駅」から中央バス「東66 東苗穂線」豊畑行き、「ビ68 伏古札苗線」豊畑行き(夏の一部はモエレ沼公園行き)、「東68 伏古札苗線」豊畑行きか豊畑東行きのいずれかに乗り継ぎ、「伏古10の5」で降車、約210メートル、徒歩3分
・札幌駅北口か地下鉄東豊線「環状通東駅」で「東64 伏古北口線」か「東65 伏古・北13条線」(いずれも東営業所行き)に乗り、「伏古5の3」で降車、約990メートル、徒歩13分
・地下鉄南北線「北24条駅」か東豊線「元町駅」で中央バス「東70 元町線」に乗り継ぎ、「伏古7の5」で降車、約640メートル、徒歩9分
・地下鉄南北線「北34条駅」か東豊線「新道東駅」で中央バス「東78 札幌新道線」に乗り継ぎ、「伏古10の5」で降車(東66などと停留所の位置が異なるので注意)、約350メートル、徒歩5分
決して大昔からある概念ではないし、実在する生き物でもない。
1950年代のゴジラから70年代のウルトラマンシリーズまで、歴史的にはそれほど長くない期間、スクリーンやテレビのブラウン管に数多く登場し、その時代に幼少期を過ごした子どもたち(おもに男の子)の脳裡に深い印象を刻んだ。でも、それ以降の若い世代にとってさほど身近な存在だとはあまり感じられないし、多くの女性・少女にはいささか縁遠い存在のような気がする。
でも、小さい頃「帰ってきたウルトラマン」を毎週金曜の午後7時から見ていた自分にとっては、怪獣の居ない世界というのは信じられない。いや、実際にはいないんだけど。
ウルトラマンシリーズでいうと、身長は40~60メートルほど。体重は2万~4万トン前後。
人間の20~40倍程度の背丈で、体重は30万~60万倍もあるというのは重すぎるような気もする。重すぎて地面にめり込んでしまうのではないか。でも、それぐらいの体重がないとビルディングは壊せないという説もある。たしかにほとんどの人間は、小さなコンクリート塊を破壊することはできない。
さらにいえば、もし怪獣が生物だとしたら、当然両親、祖父母がいるわけで、単独では生存できない。地球上にあれほど巨大な生物が世代を重ねているというのはほとんど無理なのだ。だから宇宙からやって来たという設定が好まれるのだろう。
この個展では、ほとんどが水戸さんオリジナルの怪獣が描かれている。
「帰ってきた鮭怪獣 HOCHA-LAY」(3枚組み)は、豊平川のミュンヘン大橋のあたりに出現している。
真駒内のサケ科学館にも登場する。
怪獣が破壊するのは東京か、架空の都市が多く、札幌の例はほとんどない(例外は「ガメラ2」)。だから、身近な風景への異種生物の挿入は、とても斬新に感じられる。
「HOCHA-LAY」が、遡上してきて川で力尽きたサケを表す「ホッチャレ」に由来することはいうまでもないだろう。
この怪獣も最期を迎え、多くの生き物が死骸に登る。
次の絵は「南区石怪獣 モアイゾー」。
南区石山が札幌軟石などの産地であることと、区内の真駒内滝野霊園に石のモアイ像が並んでいることに引っかけて作ったのだろう。
ただ、筆者がツッコミを入れたいのは、この絵の「ぽすとかん」(札幌軟石で造られた旧石山郵便局)の左側の道路である。狭すぎて、通れないだろう!(笑)
筆者がいちばん気に入ったのは、これ。「未確認建造物 ラムネの塔」。
キャプションに説明があった。
夏の原っぱに忽然とあらわれる。
周囲の道を一回りすると夏がおわる。
たまにビー玉のすずしい音がする。
いや~、エモいですね。
手前に「太陽の塔」をぽんと置いたのは、ゴルディロックスのアイタさんです。
あらためて。
怪獣とは、何だろう。
怪獣は毎週のように東京を破壊していた。あんな災害が毎週襲っていたら、日本経済は立ち直れないだろう。
それでも、怪獣とは、少年たちの「夢」だったのだと思う。
大きくなりたい。
世界が一変すればいい。
そういう、ごく漠然とした夢の結晶。
長じて、夢が現実にはかなわないと知るにつれ、怪獣は意識の後ろ側にしりぞく。
もっとも、身長40~60メートルでは、もう東京の街ではビルを見上げるように歩くしかないだろうな。
いまや日本を代表する怪獣はポケットサイズが人気者になっている。
夢にとぼしい時代なのかもしれない。
だからこそ、水戸さんは、夢をキャンバスに描いたのかもしれない。
必見。
出品作はほかに
道民正月お祝い怪獣 オカザリ
食鬼怪獣 キングイトー
砂漠のキャラバン 怪獣のバラード
東区怪獣 タマネギン
信念の真っ赤なバラ
獲物
ブラックアウトの色彩
魚鬼怪獣 キングイトー
西岡公園工作怪獣 オーウバユリ
北海魚怪獣 カジカン
月下美人竜
疫病退散聖獣 アーマービエ
北海魚怪獣 GOCCO
生き残っていた恐竜
ブルートレイン怪獣 北ト星
(北ト星は原文のママ。ヘッドマークにもそう書かれています)
2023年1月6日(金)~29日(日)午後0時半~8時、月、火、水、木曜休み
絵本と cafe ゴルディロックス(札幌市東区伏古10の4)
作者ツイッター : @mitorama
絵本とcafe ゴルディロックス への道順
過去の関連記事へのリンク
■さいとうギャラリー企画展 ゆく年くる年 '22▶'23展 (画像なし)
■さっぽろ雪像彫刻展 (2019)
■企画展「ゆく年くる年 '17-'18」 (画像なし)
■New Point vol.12 (2015、画像なし)
■MITORAMA―胎児の観るユメ―水戸麻記子絵画展 (2014)
■New Point Vol.11 (2014年1月=画像なし)
■織姫たちのスイーツ・アート 楽しい現代美術入門 (2013年、画像なし)
●MITORAMA-プリティ- 水戸麻記子絵画展 (2011)
■水戸麻記子絵画展 MITORAMAFUL (2010年2月)
■New Point vol.7 (2009年1月)
■4つの世界の物語(2008年)
■水戸麻記子展 MITORAMA14(2008年)
■MITORAMA13 夜と朝(07年1月)
■06年4月のミトラマ12
■04年のMITORAMA 11(画像なし)
■02年のMITORAMA X
■02年の二人展
・地下鉄東豊線「環状通東駅」から中央バス「東66 東苗穂線」豊畑行き、「ビ68 伏古札苗線」豊畑行き(夏の一部はモエレ沼公園行き)、「東68 伏古札苗線」豊畑行きか豊畑東行きのいずれかに乗り継ぎ、「伏古10の5」で降車、約210メートル、徒歩3分
・札幌駅北口か地下鉄東豊線「環状通東駅」で「東64 伏古北口線」か「東65 伏古・北13条線」(いずれも東営業所行き)に乗り、「伏古5の3」で降車、約990メートル、徒歩13分
・地下鉄南北線「北24条駅」か東豊線「元町駅」で中央バス「東70 元町線」に乗り継ぎ、「伏古7の5」で降車、約640メートル、徒歩9分
・地下鉄南北線「北34条駅」か東豊線「新道東駅」で中央バス「東78 札幌新道線」に乗り継ぎ、「伏古10の5」で降車(東66などと停留所の位置が異なるので注意)、約350メートル、徒歩5分