道展水彩部門会員の深山秀子、竹津昇、湯淺美恵の3氏と、会友の佐藤恵利子さんによるグループ水煌。
水彩では、静物や人物を描くことが一般的で、比較的少数派の、抽象画や心象風景を描く人たちのグループです。
佐藤さんは数年前までクジラなどが画面に登場していたような記憶がありますが、今回は完全に抽象でした。
直線と曲線がさまざまに交叉する中に、濃い色や薄い色が不規則に置かれています。
注目したのは、これだけ多様な色を置いているのに、絵の具の濁りがほとんど見られず、あくまで澄んでいること。
マスキングテープや紙片を支持体の上に配して、文様のような白抜き模様をつくっているのでしょうか。
出品作は「Bloom P」(P100)、「Bloom B」(P80)、「Bloom R」(P100)と、水彩画としては大きいです。
小品も「薄暮」「春愁」「古潭」「いにしえの調べ」「Flora」と5点もあり、意欲がうかがえます。
ベテラン深山さんの作品は、トレードマークとでもいうべき、三段跳びの軌跡のような、あるいは、公園の境界柵のような曲線が、画面を軽やかに跳ねています。
画像右の「はるらんまん」(20号)は、かな書の料紙を思わせる和風の図柄です。
色の配置も渋さを感じます。
左の「薄命の季」(F80)は、先述の跳ねる曲線と、木々のシルエットを重ね合わせています。
こういう抽象の方向性って、宗達光琳派のデザイン感覚と、どこか共通するものがあります。
深山さんはほかに「春遠からじ」と、小品「はるうらら」を出品しています。
湯淺さんは、自ら主宰する水彩グループもあるなど、盛んに発表しているひとりです。
以前は、かなりリアルな人物画を、これまた非常に精緻な筆で描き込まれた時計の歯車やアジサイなどを背景に描いていました。
画像右「いつかどこかで(漂着)」(F60)は、その画風で描かれています。
ところが、左側の「いつか何処かで(佇む)」(F100)は、やや画風が転換しています。
ひたすら細かく描くのではなく、人物描写に適度な省筆を効かせるとともに、にじみをいかして背景に微妙な色彩のうつろいを表現しています。
また背景の下部の模様も、ややラフなタッチが特徴になっています。
これが「いつか何処かで(幻想)」(F100)になると、人物もおおまかな描写になってきており、かなり変遷してきたという印象があります。
ほかに「いつかどこかで(早春)」と、「薔薇」(同題2点)。
竹津さんの作品は、段ボールに着彩して貼り付けているコラージュですが、すこし離れたところから見ると、驚くほど写実的です。
この「遠くから見るとリアル」というのは、画家の力量の証明といってさしつかえないと思います。
画面のもつ奥行き感は、実際に段ボールを貼ることによる立体感というのも一因でしょうが、それにとどまらない色彩感覚なども要因でしょう。
「黄昏の部屋」(F100)と「父のいたところ」(F50)。
北海道の農村ではごくあたりまえの存在である、D型ハウスです。
さらにコラージュ的手法を推し進めたのが「玩具屋の扉」。
水彩画としては破格のF120です。
かつて札幌・狸小路にあった老舗の「中川ライター店」に着想を得ており、かすれた緑の扉は本物を彷彿とさせます。これも、段ボールに着彩したものです。そして、上部に記された店名は「中山商店」になっていて、これはミシン店を連想させます。
店内に積まれたプラモデルの箱にも、扉のガラスに貼られたシールにも見えるステッカーは、サバイバルゲーム好きな生徒からもらい受けたものだそう。
クレジットカード会社のほか、アニメ「けいおん!」のものもあります。さらに周囲のカラー写真には、プラモデル類と全く無関係なものもあり、これを細かく見ていくことはたぶんあまり意味がないのでしょう。
近くから見るといかにもコラージュでも、離れて見るとリアリティがすごいのは、竹津さんの熟練の技といえそうです。
ほかに「アンダルシアの馬」「兵馬俑」。
2022年6月21日(火)~26日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
ギャラリー大通美術館(札幌市中央区大通西5 大五ビル)
過去の関連記事へのリンク
■第6回グループ水煌展 (2018、画像なし)
【告知】第3回グループ水煌展 (2011、画像なし)
■第2回グループ水煌 (2009、画像なし)
■第1回グループ水煌 (2007、画像なし)
■深山秀子展(2004、画像なし)
■第9回 水彩連盟 北海道札幌支部展 (2014、画像なし)
■水彩連盟北海道札幌支部展 (2013、画像なし)
※佐藤さん出品
■想紫苑(おもわれしおん) 第四回三人展 (2016)
■第10回透明水彩展 コロコニ (2016年5月)
■湯淺美恵 透明水彩展 何時かどこかでおだやかな時 (2015年3月)
【告知】第3回グループ水煌展 (2011)
【告知】透明水彩コロコニ (2011)
■2009年の透明水彩コロコニ
■44th 札幌大谷大学・札幌大谷大学短期大学部同窓会美術科 谷の会展 (2009)
■第3回水彩連盟北海道札幌支部展 (2008)
■湯淺美恵水彩画展(2008)
■透明水彩展 コロコニ(2008、画像なし)
■第1回水彩連盟北海道札幌支部展(2006)
□竹津さんのブログ(toledoのブログ) https://ameblo.jp/toledo817
■第6回一水会北海道出品者展 (2020、画像なし)
■第5回一水会北海道支部展 (2019)
■第5回グループ象展(2018)
■第6回グループ水煌展 (2018、画像なし)
■第9回 水彩連盟 北海道札幌支部展 (2014)
■第3回グループ象(しょう)展 (2014)
■水彩連盟北海道札幌支部展 (2013)
【告知】第2回一線北海道五人展(2012) ■一線北海道3人展(2010)=竹津さん出品
■第28回 一線美術会北海道支部展 (2010年5月、画像なし)
■第40回記念北海道教職員美術展(2010年1月)
■竹津昇水彩画展-原風景を求めて (2009年11月)
■第2回グループ水煌 (2009年9月、画像なし)
■竹津昇水彩画展 (2009年6月)
■第27回一線美術会北海道支部展(2009年)
■第3回水彩連盟北海道札幌支部展(2008年11月、画像なし)
■第26回一線美術会北海道支部展
■第1回グループ水煌(すいこう、2007年 画像なし)
■竹津昇・石垣渉2人展(2007年)
■竹津昇・Arcosスケッチ展(2007年)
■第25回一線美術会北海道支部展 (2007、画像なし)
■第1回水彩連盟北海道札幌支部展(2006年)
■竹津昇『スペイン・スケッチ展』(2006年)
■竹津昇スペインスケッチ展(2006年)
■竹津昇エストラマドゥーラ・スケッチ展(2006年、画像なし)
■第36回北海道教職員美術展(2006年、画像なし)
■竹津昇・アンダルシア・スケッチ展(2005年)
■竹津昇スケッチ展(2004年、画像なし)
■第22回一線美術会北海道支部展(2004、画像なし)
■竹津昇水彩展 MADRID FREE TIME(水彩の旅)=2003年、画像なし
■竹津昇水彩スケッチ展(2002年、画像なし)
水彩では、静物や人物を描くことが一般的で、比較的少数派の、抽象画や心象風景を描く人たちのグループです。
佐藤さんは数年前までクジラなどが画面に登場していたような記憶がありますが、今回は完全に抽象でした。
直線と曲線がさまざまに交叉する中に、濃い色や薄い色が不規則に置かれています。
注目したのは、これだけ多様な色を置いているのに、絵の具の濁りがほとんど見られず、あくまで澄んでいること。
マスキングテープや紙片を支持体の上に配して、文様のような白抜き模様をつくっているのでしょうか。
出品作は「Bloom P」(P100)、「Bloom B」(P80)、「Bloom R」(P100)と、水彩画としては大きいです。
小品も「薄暮」「春愁」「古潭」「いにしえの調べ」「Flora」と5点もあり、意欲がうかがえます。
ベテラン深山さんの作品は、トレードマークとでもいうべき、三段跳びの軌跡のような、あるいは、公園の境界柵のような曲線が、画面を軽やかに跳ねています。
画像右の「はるらんまん」(20号)は、かな書の料紙を思わせる和風の図柄です。
色の配置も渋さを感じます。
左の「薄命の季」(F80)は、先述の跳ねる曲線と、木々のシルエットを重ね合わせています。
こういう抽象の方向性って、宗達光琳派のデザイン感覚と、どこか共通するものがあります。
深山さんはほかに「春遠からじ」と、小品「はるうらら」を出品しています。
湯淺さんは、自ら主宰する水彩グループもあるなど、盛んに発表しているひとりです。
以前は、かなりリアルな人物画を、これまた非常に精緻な筆で描き込まれた時計の歯車やアジサイなどを背景に描いていました。
画像右「いつかどこかで(漂着)」(F60)は、その画風で描かれています。
ところが、左側の「いつか何処かで(佇む)」(F100)は、やや画風が転換しています。
ひたすら細かく描くのではなく、人物描写に適度な省筆を効かせるとともに、にじみをいかして背景に微妙な色彩のうつろいを表現しています。
また背景の下部の模様も、ややラフなタッチが特徴になっています。
これが「いつか何処かで(幻想)」(F100)になると、人物もおおまかな描写になってきており、かなり変遷してきたという印象があります。
ほかに「いつかどこかで(早春)」と、「薔薇」(同題2点)。
竹津さんの作品は、段ボールに着彩して貼り付けているコラージュですが、すこし離れたところから見ると、驚くほど写実的です。
この「遠くから見るとリアル」というのは、画家の力量の証明といってさしつかえないと思います。
画面のもつ奥行き感は、実際に段ボールを貼ることによる立体感というのも一因でしょうが、それにとどまらない色彩感覚なども要因でしょう。
「黄昏の部屋」(F100)と「父のいたところ」(F50)。
北海道の農村ではごくあたりまえの存在である、D型ハウスです。
さらにコラージュ的手法を推し進めたのが「玩具屋の扉」。
水彩画としては破格のF120です。
かつて札幌・狸小路にあった老舗の「中川ライター店」に着想を得ており、かすれた緑の扉は本物を彷彿とさせます。これも、段ボールに着彩したものです。そして、上部に記された店名は「中山商店」になっていて、これはミシン店を連想させます。
店内に積まれたプラモデルの箱にも、扉のガラスに貼られたシールにも見えるステッカーは、サバイバルゲーム好きな生徒からもらい受けたものだそう。
クレジットカード会社のほか、アニメ「けいおん!」のものもあります。さらに周囲のカラー写真には、プラモデル類と全く無関係なものもあり、これを細かく見ていくことはたぶんあまり意味がないのでしょう。
近くから見るといかにもコラージュでも、離れて見るとリアリティがすごいのは、竹津さんの熟練の技といえそうです。
ほかに「アンダルシアの馬」「兵馬俑」。
2022年6月21日(火)~26日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
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