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坂坦道「幕間」(札幌市北区)

2020年06月02日 08時33分00秒 | 街角と道端のアート
 坂坦道たんどう(1920~98)は石川県生まれの彫刻家。

 本名は坂青嵐。9歳のときに北海道に渡り、旧制北海中学(現北海高)から東京美術学校(現東京藝大)に進みました。
 戦後は道内で日展系の具象彫刻家として重きをなすとともに、「道展三羽烏」と称され、道展会員でもありました。

 坂坦道といえば、なんといっても、札幌の羊ケ丘展望台に立つ「丘の上のクラーク像」が有名でしょう。
 しかし、ほかにも大通公園の石川啄木像など、数多くのパブリックアートを手がけています。

 そして、なぜかほとんど知られていないようなのが、札幌市北区北24西10の公務員住宅(幌北住宅)の中庭にならんでいる、三つのブロンズ像です。

 青木由直(曲直)さんによる豆本「爪句@彫刻のある風景ー札幌編」には坂坦道の彫刻が8点取り上げられ、本郷新らに次いで第4位なのですが、この3点については言及されていません。
 札幌の野外彫刻をまとめた「札幌散策」にも、ふれられていません。
 札幌彫刻美術館友の会が長年かけて作り上げた「札幌デジタル彫刻美術館」でも黙殺されているありさまです。

 筆者も昨年6月に調べるまではノーマークでした。

 さすがに、公式サイトともいうべき「坂家三代の芸術家」では紹介されているようで、それによると1991年の作だそうです。

 それにしても、たとえば
「“坂坦道 " 幕間」
で検索すると、なんと6件しかヒットしません
 人里離れた場所にあるのならいざしらず、札幌の街なかにある有名作家の彫刻がこれほどまでに無視されているのは、ちょっとめずらしいのではないでしょうか。
 たしかに公的機関や学校の前、公園などではないのですが、札幌北高のすぐそばですからねえ。


 作品それ自体はとても見どころが多いと思います。

 母子像だとみてさしつかえないでしょう。
 向かって左側の母親はしゃがんでいます。
 右の女児は、母親のほおにキスしています。
 チュチュのような衣裳をつけています。題名から推すと、バレエ教室の発表会か何かの一場面で、幕あいに出てきた子が客席か控え室のママに
「うまくできたよ」
と言っているのかもしれません。

 子どもは、たったいま母親のところに飛び込んできたかのように、両手をうしろに広げています。
 母親の左手がやさしく子の背中に添えられていて、母の深い愛情が伝わってきます。
 なんともほほえましい場面です。

 ただ、坂さんは、サービス精神というと読者からおしかりを受けそうですが、母親の胸をはだけさせているんですよね。
 こういう作品で、べつに表現する必要性がかならずしも感じられない性的な要素を盛り込んでしまうのが、ちょっとふしぎなところです。


 背後から見ると、お母さんの左手がすてきです。

 この団地の中庭に、3基が南北に一直線にならんでいるので、のこる二つも順次紹介していきます。


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参考
□坂家三代の芸術家 http://saka-tandou.com/index.html

□ブログ「豆の育種のマメな話」 恵庭の彫像-16 「坂 坦道」初期作品が恵庭にあった,島松小学校「よい子・つよい子像」 https://blog.goo.ne.jp/taktsuchiya/e/309d24f636ab36815ef5848d32211564



・地下鉄南北線「北24条駅」から約1キロ、徒歩13分



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