筆者がおうかがいしたとき、松原成樹さんが会場にいらした。
松原さんは話題の豊富な方である。
北広島にお住まいの陶芸家だが、あまり陶芸家っぽくない。
うつわも作るけれど、そこに在るだけで会場の空気を一変させてしまうような、シンプルで個性的なオブジェを作る。
陶芸家らしくないのは、思考がしばしば、絵画や文学、建築の方にまで巡っていくからかもしれない。
法邑さんから当初言われていたのは、茶廊法邑での個展だったらしい。
しかし、あの会場を埋めるのはタイヘンでもあり、美水(よしみず)さんに声をかけたらしい。
STV北2条ビルのエントランスアートでひらいた個展などで、彼女のすぐれた作品には心ひかれるものがあったという。
美水さんにとっては初の2人展である。松原さんにとってもめずらしいのではないか。
「半分新作があればいいよ、といったけど、彼女、ぜんぶ新作をもってきて…」
と松原さんは笑っていた。
美水さんは手漉きの紙でインスタレーションを制作する。
以前は紙の白を生かしていたが、先述のエントランスアートでの個展以来、カラリストに転じた。
今回は緑。にじみや諧調が美しい。
写真では単純な平面に見えるが、8枚の紙を重ね合わせてあり、確乎たる存在感をたたえている。
「余白から」という題は、松原さんが考案した。
脳裡のどこかに、日本を代表する現代音楽家、武満徹のエッセイ「音楽の余白から」があったのかもしれない。
彼の別のエッセイ集である「音、沈黙と測りあえるほどに」の中に、イルカは沈黙で相手の言うことを聞き取る-という話があった、という。
そういう話をしているときの松原さんの表情は、じつに生き生きとしている。すくなくても筆者はそう思う。
骨器のような陶片は、いつものように紙やすりをかけたもの。平たい石のような物体は、透明な釉薬をかけて仕上げたという。
作為を排除したような、それでいてやっぱり松原さんの息づかいが感じられる青い線や点が、作品の中央に置かれている。それは、まるで1時間もたつと蒸発してしまう、たまった水のように見えた。
2008年11月22日(土)-11月30日(日) 10:00-18:00(最終日-17:00)、火曜休み
品品法邑(東区本町1の2)
・地下鉄東豊線「環状通東」駅・4番出口から徒歩8分
・中央バス「東67 伏古線」(東営業所-環状通東駅-サッポロビール博物館)の「本町1条2丁目」から徒歩2分
■はしご展(2008年9-10月)=松原さん出品、プロデュース
■松原成樹展(08年7月)
■OPERA Exhibition vol.2
■松原成樹展(07年7月)
■松原成樹展(06年)
■三羽の会「棲むもの」 (06年)
■松原成樹展(03年)
■企画展「九つの箱」(02年)
■美水まどか「雪の果 YUKI NO HATE」 (2008年4月、画像なし)
■美水円小品展(05年、画像なし)