オーナーの大井恵子さんから
「ギャラリー門馬を建て替える」
という話を聞いたときは、おどろくとともに、ありがたい話だと思いました。
この数年は、それまで一貫して増加基調にあった札幌圏のギャラリーが、「閉まる」という話題ばかりになっています。
1990年代以降、前オーナーで母親の門馬よ宇子さんの時代から、札幌の現代アートなどにとってほんとうに貴重な場所であり続けてきたこのギャラリーが、たとえ二つのスペースが一つになったとしても、存続するというだけで、手を合わせて拝みたいような気分なのです。
冒頭画像は正面から見た姿。
左側の茶色は車庫です。中央の黄色い部分が入口。
その右側は窓ですが、間違えてそこから入ろうとする人がいるもよう。
全体は
1) 入口があり、南北いずれも大きな窓になっている部分
2) 窓のない展示スペース
3) 南側にのみ窓のある第2展示スペース
の、三つの部分からなっています。
1) は、ギャラリー門馬の両サイドにある小さな河谷をつなぐ空間の役割を果たしています。
2)、3)ともピクチャーレールはありません。
天井板がなく、梁がむき出しになっているため、天井はけっこう高いですが、広さはそれほどでもなく、2部屋合わせてもかつてのギャラリーたぴおにくらべて少し狭いかなという感じ。
さて、川上りえさんの個展が、新しいギャラリー門馬のこけら落としです。
このインスタレーションは「After Blades」。
「Blades」とは、風力発電の羽根をさしているようです。
作家の住む石狩市ととなりの当別町では、風力発電所の計画が目白押しですが、低周波の恐れがあるのに住民説明が足りない―という声もあり、反対運動が起きています。
たとえ自然エネルギー関連のものであっても、人が造ったものはいずれ老朽化し、土にかえっていくものです。
そのことを、自らのメイン素材である鉄を用いて表象するというあたりに、作者の覚悟というか、強い思いを感じます。
作者は最初、10個あるパーツを横一列に整列させようとしたそうですが、空間とのからみで、ランダムに転がすことになったそう。
表面の痕跡も、作者の思いを伝えるものであり、たとえばドナルド・ジャッドの取り付く島もないミニマルアートとは違うんですね。
この部屋には、空と、まわる羽根を写した映像作品も、壁のモニターで上映されています。
二つめの部屋には、レジンを固めて、ベルトサンダーで取り巻いた立体作品「island」3点と、レジンに斑点をまじえた板状の小品「pubble」2点なども展示されていました。
冬場はレジンが固まりにくく、なかなか扱いの難しい素材だとのことです。
うまく表面をさびつかせた鉄の棒を曲げて作ったインスタレーション「Composed Object」が、窓の外と内側に展開していました。
さて、新・ギャラリー門馬ですが、基本的に、取り扱い作家の個展の企画を1カ月単位で回しつつ、「貸し」も時々入れていくとのこと。
取り扱い作家といっても、よそでは発表不可みたいな厳しいことはいわない―というのが、大井さんのおおらかなスタンスのようです。
「これまでは冬場になると、水道が凍結してるんじゃないかとか、ビクビクしてた。これで気が楽になりました」
と大井さん。
2)と1)に隣接して、バックスペースがあり、事務作業などができる空間になっています。
また、1)には本棚があって、作者の愛読書が並べられていました。
今回の個展に限り火・木曜休みですが、通常は火・水曜になるもようです。
2021年12月3日(金)~24日(金)午前11時~午後6時、火・木曜休み
ギャラリー門馬(中央区旭ケ丘2 g-monma.com )
過去の関連記事へのリンク
ギャラリー門馬(札幌)、2021年12月3日にリニューアルオープン。第1弾は川上りえ個展「思考の化石」
【速報】札幌のギャラリー門馬・アネックスを建て替えへ (2020年5月)
北海道文化賞に羽生輝さん、文化奨励賞に川上りえさん、北村清彦さん、旭川彫刻フェスタ実行委
■フィギュールの森 Work in Progress 北翔大学北方圏学術情報センタープロジェクト研究 美術グループ成果報告作品展 (2021)
■札幌ミュージアム・アート・フェア2020-21
■BENIZAKURA PARK ART ANNUAL 2020
「イコロの森ミーツ・アート」は1年延期。今年はオンライン展覧会に (2020)
■Rie Kawakami solo exhibition : Landscape Will 2019 川上りえ個展
■JR Tower Art Planets Grand prix Exhibition 2018
■*folding cosmos 2013 「松浦武四郎をめぐる10人の作家達」
■川上りえ 札幌文化奨励賞受賞記念 Plus1 Group Exhibition (2013)
■川上りえ個展 UNLIMITED LIFE ZONE (2013年6月22日~7月7日)
■谷口明志・川上りえ Space Abstraction II (2012年)
【告知】まぼろしのいえ 川上りえ×冨田哲司
■谷口明志 × 川上りえ (2010年)
■PLUS ONE THIS PLACE(2010年9月)
■川上りえ個展 イロジカル・ムーブメント (2010年6月)
■SAG Introduction II (2009年10月)
■交差する視点とかたち vol.3 阿部典英 加藤委 川上りえ 下沢敏也(2009年7月)
川上りえ「ANCIENT SUN」(野外立体作品)
■SAG INTRODUCTION(2008年12月)
■On the wall/Off the wall 山本雄基、西田卓司、川上りえ(2008年9月)
■川上さんの米国滞在報告(08年6月)
■川上さん、米国でレジデンス中(08年4月)
■川上りえ展 Trace of Will(06年)
■米国での個展報告(04年)
■札幌の美術2003 ワークショップ
■札幌の美術2003
■北の彫刻展2002(画像なし)
■水脈の肖像(02年、画像なし)
■川上りえ個展-浸透痕(01年)
■北の創造者たち(2000-01年)
・円山公園駅からのアクセス
・啓明ターミナルからのアクセス
・南11条西22丁目からのアクセス
・地下鉄東西線「円山公園駅」バスターミナル、もしくは「大通西25丁目」から、ジェイアール北海道バス「循環10 ロープウェイ線」に乗りつぎ、「旭丘高校前」降車、約130メートル、徒歩2分
・「円山公園駅」バスターミナルもしくは「大通西25丁目」から、ジェイアール北海道バス「円13 旭山公園線」に乗りつぎ、「界川」降車、約500メートル、徒歩7分
・「円山公園駅」バスターミナルもしくは「大通西25丁目」から、ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」「円11 西25丁目線」「循環11 ロープウェイ線」に乗りつぎ、「啓明ターミナル」降車、約800メートル、徒歩10分
・地下鉄南北線「中島公園駅前」「幌平橋駅前」から、ジェイアール北海道バスに乗り「旭丘高校前」もしくは「啓明ターミナル」降車
※駐車スペースもあります。
※帰路は、旭丘高校前で良いバスの便がない場合、階段を下りて「南11西22」までいくと、休日の日中で1時間に5、6本のバスがきます(ただし、行き先は、円山公園駅、都心、札幌駅、桑園駅などバラバラ)
「ギャラリー門馬を建て替える」
という話を聞いたときは、おどろくとともに、ありがたい話だと思いました。
この数年は、それまで一貫して増加基調にあった札幌圏のギャラリーが、「閉まる」という話題ばかりになっています。
1990年代以降、前オーナーで母親の門馬よ宇子さんの時代から、札幌の現代アートなどにとってほんとうに貴重な場所であり続けてきたこのギャラリーが、たとえ二つのスペースが一つになったとしても、存続するというだけで、手を合わせて拝みたいような気分なのです。
冒頭画像は正面から見た姿。
左側の茶色は車庫です。中央の黄色い部分が入口。
その右側は窓ですが、間違えてそこから入ろうとする人がいるもよう。
全体は
1) 入口があり、南北いずれも大きな窓になっている部分
2) 窓のない展示スペース
3) 南側にのみ窓のある第2展示スペース
の、三つの部分からなっています。
1) は、ギャラリー門馬の両サイドにある小さな河谷をつなぐ空間の役割を果たしています。
2)、3)ともピクチャーレールはありません。
天井板がなく、梁がむき出しになっているため、天井はけっこう高いですが、広さはそれほどでもなく、2部屋合わせてもかつてのギャラリーたぴおにくらべて少し狭いかなという感じ。
さて、川上りえさんの個展が、新しいギャラリー門馬のこけら落としです。
このインスタレーションは「After Blades」。
「Blades」とは、風力発電の羽根をさしているようです。
作家の住む石狩市ととなりの当別町では、風力発電所の計画が目白押しですが、低周波の恐れがあるのに住民説明が足りない―という声もあり、反対運動が起きています。
たとえ自然エネルギー関連のものであっても、人が造ったものはいずれ老朽化し、土にかえっていくものです。
そのことを、自らのメイン素材である鉄を用いて表象するというあたりに、作者の覚悟というか、強い思いを感じます。
作者は最初、10個あるパーツを横一列に整列させようとしたそうですが、空間とのからみで、ランダムに転がすことになったそう。
表面の痕跡も、作者の思いを伝えるものであり、たとえばドナルド・ジャッドの取り付く島もないミニマルアートとは違うんですね。
この部屋には、空と、まわる羽根を写した映像作品も、壁のモニターで上映されています。
二つめの部屋には、レジンを固めて、ベルトサンダーで取り巻いた立体作品「island」3点と、レジンに斑点をまじえた板状の小品「pubble」2点なども展示されていました。
冬場はレジンが固まりにくく、なかなか扱いの難しい素材だとのことです。
うまく表面をさびつかせた鉄の棒を曲げて作ったインスタレーション「Composed Object」が、窓の外と内側に展開していました。
さて、新・ギャラリー門馬ですが、基本的に、取り扱い作家の個展の企画を1カ月単位で回しつつ、「貸し」も時々入れていくとのこと。
取り扱い作家といっても、よそでは発表不可みたいな厳しいことはいわない―というのが、大井さんのおおらかなスタンスのようです。
「これまでは冬場になると、水道が凍結してるんじゃないかとか、ビクビクしてた。これで気が楽になりました」
と大井さん。
2)と1)に隣接して、バックスペースがあり、事務作業などができる空間になっています。
また、1)には本棚があって、作者の愛読書が並べられていました。
今回の個展に限り火・木曜休みですが、通常は火・水曜になるもようです。
2021年12月3日(金)~24日(金)午前11時~午後6時、火・木曜休み
ギャラリー門馬(中央区旭ケ丘2 g-monma.com )
過去の関連記事へのリンク
ギャラリー門馬(札幌)、2021年12月3日にリニューアルオープン。第1弾は川上りえ個展「思考の化石」
【速報】札幌のギャラリー門馬・アネックスを建て替えへ (2020年5月)
北海道文化賞に羽生輝さん、文化奨励賞に川上りえさん、北村清彦さん、旭川彫刻フェスタ実行委
■フィギュールの森 Work in Progress 北翔大学北方圏学術情報センタープロジェクト研究 美術グループ成果報告作品展 (2021)
■札幌ミュージアム・アート・フェア2020-21
■BENIZAKURA PARK ART ANNUAL 2020
「イコロの森ミーツ・アート」は1年延期。今年はオンライン展覧会に (2020)
■Rie Kawakami solo exhibition : Landscape Will 2019 川上りえ個展
■JR Tower Art Planets Grand prix Exhibition 2018
■*folding cosmos 2013 「松浦武四郎をめぐる10人の作家達」
■川上りえ 札幌文化奨励賞受賞記念 Plus1 Group Exhibition (2013)
■川上りえ個展 UNLIMITED LIFE ZONE (2013年6月22日~7月7日)
■谷口明志・川上りえ Space Abstraction II (2012年)
【告知】まぼろしのいえ 川上りえ×冨田哲司
■谷口明志 × 川上りえ (2010年)
■PLUS ONE THIS PLACE(2010年9月)
■川上りえ個展 イロジカル・ムーブメント (2010年6月)
■SAG Introduction II (2009年10月)
■交差する視点とかたち vol.3 阿部典英 加藤委 川上りえ 下沢敏也(2009年7月)
川上りえ「ANCIENT SUN」(野外立体作品)
■SAG INTRODUCTION(2008年12月)
■On the wall/Off the wall 山本雄基、西田卓司、川上りえ(2008年9月)
■川上さんの米国滞在報告(08年6月)
■川上さん、米国でレジデンス中(08年4月)
■川上りえ展 Trace of Will(06年)
■米国での個展報告(04年)
■札幌の美術2003 ワークショップ
■札幌の美術2003
■北の彫刻展2002(画像なし)
■水脈の肖像(02年、画像なし)
■川上りえ個展-浸透痕(01年)
■北の創造者たち(2000-01年)
・円山公園駅からのアクセス
・啓明ターミナルからのアクセス
・南11条西22丁目からのアクセス
・地下鉄東西線「円山公園駅」バスターミナル、もしくは「大通西25丁目」から、ジェイアール北海道バス「循環10 ロープウェイ線」に乗りつぎ、「旭丘高校前」降車、約130メートル、徒歩2分
・「円山公園駅」バスターミナルもしくは「大通西25丁目」から、ジェイアール北海道バス「円13 旭山公園線」に乗りつぎ、「界川」降車、約500メートル、徒歩7分
・「円山公園駅」バスターミナルもしくは「大通西25丁目」から、ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」「円11 西25丁目線」「循環11 ロープウェイ線」に乗りつぎ、「啓明ターミナル」降車、約800メートル、徒歩10分
・地下鉄南北線「中島公園駅前」「幌平橋駅前」から、ジェイアール北海道バスに乗り「旭丘高校前」もしくは「啓明ターミナル」降車
※駐車スペースもあります。
※帰路は、旭丘高校前で良いバスの便がない場合、階段を下りて「南11西22」までいくと、休日の日中で1時間に5、6本のバスがきます(ただし、行き先は、円山公園駅、都心、札幌駅、桑園駅などバラバラ)