(承前)
「夕日の美術館」は、中央区南3西1のKT三条ビル(旧・HBC三条ビル)で、道内ゆかりの画家を中心に長年、美術作品を販売している北海道画廊が、石狩市望来(もうらい)の、日本海を望む別荘地に開設した施設。
北海道の施設にありがちだが、夏の間(5月上旬~10月末)のみのオープンで、時間は、午後1時から日没までとなっている。
ことしは5月2日からの開館で、筆者は3日に訪ねた。
1.アクセス
車だと、北区麻生から、だいたい50分くらいであった。
国道231号をひたすら北上し、八幡、聚富(シップ。シュップともいう)を過ぎて、望来地区へと坂をぐっと下っていく(ここの景観はなかなか美しい)。
坂を下りて、郵便局を通り過ぎ、正利冠(マサリカップ)川を渡る橋のところに、こんな看板が出ている。
ここから左にわき道を入り、ずーっと行くと、右手は石狩湾、左手に別荘地が現れる。
夕日の美術館はその一角にある。
なお、館の前の道路を南へ行くと、知津狩(シラツカリ)のほうに続いて、国道にも出られそうであるが、そちらの道は走っていないので、誰か報告してください。
2.館内
入館料は大人300円、中学生以下無料。
館内には、道内ゆかりの画家の大作・小品が、びっしりと飾られている(彫刻、工芸も少しあり)。
印象としては、いわゆる「美術館」というよりは、わずかに「画廊の倉庫」寄りの雰囲気といえそう。また、それが楽しかったりする。
実際に、以前、南3条の北海道画廊のショーウインドーで見た絵も置かれていた。
また、まだ作者名などが付されていない絵や彫刻もけっこうあった。
筆者がメモしてきた範囲で、画家の名のみ記す。裸婦の彫刻も1体あったが、作者は分からなかった。
川村正男、(豊島輝彦)、守矢正男、菊地又男、八木伸子
金子幸正、中野邦昭、越智紀久張、中村善策、市成太煌、
亀山良雄、森本三郎、森本光子、岩城千、橋本冨
福岡幸一、渋谷政雄、岸葉子、東武明、(木島務)
(鶴田昌子)、(渡辺伊八郎)、原義雄、江口秋彦、畠山三代喜
白石順一、前野昌市、桜田精一、砂澤ビッキ、北岡文雄
長谷川三雄、長谷哲也、金野宏治、草刈喜一郎、小竹義夫
酒谷小三郎、森田哲隆、田中針水、(青木淳子)、(金丸雄司)
白崎幸子、石塚常男、平澤貞章、小野州一
なお( )内は、サインや画風などから筆者が割り出した画家名(なんて書くと、偉そうだな~)。どうがんばっても誰のものかわからない作品も数点あった。
この中で、いくつか触れると、守屋正男「聖護院 STEPHANS DON WIEN」は、ウィーンのシュテファン寺院を粗いタッチで描いた1969年の作。筆者の書架には、荒巻義雄全集の「シュテファン寺院の鐘の音は」が待機しているが、作中の時代と近いと思う。
砂澤ビッキは木のいす。だれでも座ることができる。
豊島輝彦は、モノクロの大作で、裸の男女の群像。ギリシャ神話のようなアルカイックな雰囲気をかもし出している。描写力はさすが。最初からモノクロのつもりだったのか、下書きのまま放置されていたのかは、わからない。
菊池又男「北国の眼」は85年作。菊地さんの作品は、札幌芸術の森美術館の回顧展でも小品が多く、団体公募展などに出した大作は意外と残っていないと思うので、これは貴重。色数を抑えた、菊地さんとしては、おとなしい抽象画である。
八木伸子さんの絵は、晩年の個展で拝見したもので、これがここにあるとは! 雪景色を、少ない要素で構築し、東洋的な美のたたずまいを感じさせる。
酒谷小三郎「函館風景」。
酒谷(1896-1957)は戦前の函館で活躍し、道展創立会員の画家で、帝展にも入選したことがあるという。作品は100号大で、窓越しに冬の函館港を望む家並みを描いている。日本的フォーブの画風で、これは悪くない。
となりの小竹義夫は「小樽運河」で、埋め立て前の運河をしっかりと重厚な描いた貴重な作品だ。
小野州一さんのは、なんと屏風。軽快な筆遣いで、単色で、パリの街並みを描いている。
なお、ここに挙げた作品をずっと展示しているのではなく、今後、展示替えがあるものと推察される。
3.感想
美術家、画家を名乗って活動する人は大勢いるが、長く記憶されて、作品が後世に残っていくのは、ほんの一握りである。
上に名を書いた人でも、美術館が作品を所蔵している人は、ごく一部にすぎない。美術史の本や団体公募展の図録の巻末年表に名前だけが載って、あとは忘れられていく人が多い。
しかし、それでいいのだろうか。超一流でなくても、それなりに良いものを作った人はけっこういるのだ。
この場に来ると、そういうことをあらためて考える。
超有名画家と、やや有名な画家とのあいだに、それほどの差なんて無いということも。
石狩市望来389-268
・中央バス「望来坂下」から約1.2キロ、徒歩16分
(土日祝日は上り4本、下り5本。日没後に望来を出る上りバスはありません)
□ http://hokkaidogarou.co.jp/mouraikaigakan.html
「夕日の美術館」は、中央区南3西1のKT三条ビル(旧・HBC三条ビル)で、道内ゆかりの画家を中心に長年、美術作品を販売している北海道画廊が、石狩市望来(もうらい)の、日本海を望む別荘地に開設した施設。
北海道の施設にありがちだが、夏の間(5月上旬~10月末)のみのオープンで、時間は、午後1時から日没までとなっている。
ことしは5月2日からの開館で、筆者は3日に訪ねた。
1.アクセス
車だと、北区麻生から、だいたい50分くらいであった。
国道231号をひたすら北上し、八幡、聚富(シップ。シュップともいう)を過ぎて、望来地区へと坂をぐっと下っていく(ここの景観はなかなか美しい)。
坂を下りて、郵便局を通り過ぎ、正利冠(マサリカップ)川を渡る橋のところに、こんな看板が出ている。
ここから左にわき道を入り、ずーっと行くと、右手は石狩湾、左手に別荘地が現れる。
夕日の美術館はその一角にある。
なお、館の前の道路を南へ行くと、知津狩(シラツカリ)のほうに続いて、国道にも出られそうであるが、そちらの道は走っていないので、誰か報告してください。
2.館内
入館料は大人300円、中学生以下無料。
館内には、道内ゆかりの画家の大作・小品が、びっしりと飾られている(彫刻、工芸も少しあり)。
印象としては、いわゆる「美術館」というよりは、わずかに「画廊の倉庫」寄りの雰囲気といえそう。また、それが楽しかったりする。
実際に、以前、南3条の北海道画廊のショーウインドーで見た絵も置かれていた。
また、まだ作者名などが付されていない絵や彫刻もけっこうあった。
筆者がメモしてきた範囲で、画家の名のみ記す。裸婦の彫刻も1体あったが、作者は分からなかった。
川村正男、(豊島輝彦)、守矢正男、菊地又男、八木伸子
金子幸正、中野邦昭、越智紀久張、中村善策、市成太煌、
亀山良雄、森本三郎、森本光子、岩城千、橋本冨
福岡幸一、渋谷政雄、岸葉子、東武明、(木島務)
(鶴田昌子)、(渡辺伊八郎)、原義雄、江口秋彦、畠山三代喜
白石順一、前野昌市、桜田精一、砂澤ビッキ、北岡文雄
長谷川三雄、長谷哲也、金野宏治、草刈喜一郎、小竹義夫
酒谷小三郎、森田哲隆、田中針水、(青木淳子)、(金丸雄司)
白崎幸子、石塚常男、平澤貞章、小野州一
なお( )内は、サインや画風などから筆者が割り出した画家名(なんて書くと、偉そうだな~)。どうがんばっても誰のものかわからない作品も数点あった。
この中で、いくつか触れると、守屋正男「聖護院 STEPHANS DON WIEN」は、ウィーンのシュテファン寺院を粗いタッチで描いた1969年の作。筆者の書架には、荒巻義雄全集の「シュテファン寺院の鐘の音は」が待機しているが、作中の時代と近いと思う。
砂澤ビッキは木のいす。だれでも座ることができる。
豊島輝彦は、モノクロの大作で、裸の男女の群像。ギリシャ神話のようなアルカイックな雰囲気をかもし出している。描写力はさすが。最初からモノクロのつもりだったのか、下書きのまま放置されていたのかは、わからない。
菊池又男「北国の眼」は85年作。菊地さんの作品は、札幌芸術の森美術館の回顧展でも小品が多く、団体公募展などに出した大作は意外と残っていないと思うので、これは貴重。色数を抑えた、菊地さんとしては、おとなしい抽象画である。
八木伸子さんの絵は、晩年の個展で拝見したもので、これがここにあるとは! 雪景色を、少ない要素で構築し、東洋的な美のたたずまいを感じさせる。
酒谷小三郎「函館風景」。
酒谷(1896-1957)は戦前の函館で活躍し、道展創立会員の画家で、帝展にも入選したことがあるという。作品は100号大で、窓越しに冬の函館港を望む家並みを描いている。日本的フォーブの画風で、これは悪くない。
となりの小竹義夫は「小樽運河」で、埋め立て前の運河をしっかりと重厚な描いた貴重な作品だ。
小野州一さんのは、なんと屏風。軽快な筆遣いで、単色で、パリの街並みを描いている。
なお、ここに挙げた作品をずっと展示しているのではなく、今後、展示替えがあるものと推察される。
3.感想
美術家、画家を名乗って活動する人は大勢いるが、長く記憶されて、作品が後世に残っていくのは、ほんの一握りである。
上に名を書いた人でも、美術館が作品を所蔵している人は、ごく一部にすぎない。美術史の本や団体公募展の図録の巻末年表に名前だけが載って、あとは忘れられていく人が多い。
しかし、それでいいのだろうか。超一流でなくても、それなりに良いものを作った人はけっこういるのだ。
この場に来ると、そういうことをあらためて考える。
超有名画家と、やや有名な画家とのあいだに、それほどの差なんて無いということも。
石狩市望来389-268
・中央バス「望来坂下」から約1.2キロ、徒歩16分
(土日祝日は上り4本、下り5本。日没後に望来を出る上りバスはありません)
□ http://hokkaidogarou.co.jp/mouraikaigakan.html
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