(承前)
下のリンク先を見ると、札幌の画家會田千夏さんの活動の幅広さにあらためて驚かされます。
団体公募展や個展だけでなく、若手が集まってわいわい楽しんでいそうなグループ展にも顔を出したりしているのは、絵画の世界とは異なる空気に触れようとしているのかもしれません。
ギャラリーレタラで作品を見たのは5年前で、そのときは壁一面を覆う巨大なドローイングが展示されていました。
今回は打って変わって、これまでの彼女の展示ではめずらしいぐらい、小品が中心です。
冒頭画像のいちばん右手前の「あさ―1」が割と大きく、50号ぐらいです。
もし、販売主眼の小品展ということなら、こういう陳列はしないでしょう。額におさめて、同じ高さに並べると思います。
「ちいさなせかい」という小品8点、「あさ―2」などは、ばらばらの高さで壁に架かっています。
会場の中央には、草を生けた花瓶が二つ。
ちょっとしたインスタレーションのようでもあります。
次の画面の「portrait 2021 9a」「portrait 2021 8a」「portrait 2021 9b」「portrait 2021 8b」も、額装はされていません。
東側の壁の「am8:00」「pm4:00」「pm11:00」の3点だけが、同じ高さで、等間隔に展示されていました。
いずれも「あさ」の2点とおなじような、雲を思わせる楕円形が中央に、草原みたいな地面が下に描かれており、時間の経過を表現しています。
會田千夏さんの絵は、水や苔のような緑などを細密な筆で描くことが多く、実際「ちいさなせかい 1」などはそのような描法ですが、「あさ」や「am8:00」などはわりあいラフな筆遣いで、意外の感に打たれました。
「ちいさなせかい」という題名から思い出したのは、ディズニーランドのアトラクションの歌としても知られる「It's a Small World」でした。
日本語の歌詞では、原曲にはない
「せかいはひとつ」
という繰り返しが歌われます。
今回は、5年前と異なり、作家によるテキストの類はまったくありません(過去作のポートフォリオなども会場には見当たりませんでした)。
ただ、海の向こうで戦争が始まり、多くの人が心穏やかでないことを、会場に足を運んだ人なら知っています。
また多くの人が、圧倒的で悲惨な現実を前に、無力感にさいなまれていることも。
美術家にも、見る側にも、できることはごく限られています。
そして、心の平衡と穏やかさを失わないために、ちいさな画面の孤塁に閉じこもること自体を、非難することはだれにもできないと思うのです。元気が回復できれば、そこから這い出てくればいいのですから。
もともと、2人展を「ビオトープ」と称していたこともあったように、會田千夏さんは、ごくささやかな身の回りのものをいつくしむ視線の持ち主でした。
現実を峻拒して閉塞するのではなく、確かな拠点からじっと現実を見守ること。それも、おそらくは、美術家に或る意味でふさわしい身振りなのだと思うのです。
2022年5月21日(土)~6月6日(月)正午~午後6時、火曜休み
Gallery Retara(札幌市中央区北1西28 MOMA place 3階)
過去の関連記事へのリンク
【告知】イコロの森ミーツ・アート 2021
■高橋靖子・八子直子・會田千夏 (2020)
【告知】イコロの森ミーツ・アート2020 web展覧会
【告知】2 + 2 Two plus Two 北海道・光州美術交流展 (2019)
■第46回北海道抽象派作家協会展 (2019)
■nor-hay展 「林教司を偲ぶ会」(2018)
■會田千夏展 "the fissure" ~裂罅(れっか)~ (2016)
■ハルカヤマ藝術要塞2017 FINAL CUT
■黒展 2 (2016)
■New Point vol.12 (2015、画像なし)
■ART×STORY EXHIBITION SPRING GATE (2014)
■N.P.Blood 21 vol.9 會田千夏展 (2011、画像なし)
■會田千夏個展 (2009年)
■會田千夏個展■會田千夏小品・ドローイング展(2009)
=以下、画像なし
■さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展(2009年7月)
■44th 札幌大谷大学・札幌大谷大学短期大学部同窓会美術科 谷の会展(2009年6月)
■法邑芸術文化振興会企画展【滲-shin-】 (2008年10月)
■第63回全道展(2008年6月)
■企画展「07-08展」
■第13回さいとうギャラリー企画 夏まつり「風」パートII (2007年)
■New Point Vol.4(2007年)
■會田千夏、久保綾乃 二人展「ビオトープ」(2006年)
■05→06展
■第58回全道展(2003年)
■第57回全道展(2002年)
・地下鉄東西線「円山公園駅」(T06)・円山公園駅バスターミナルから約360メートル、徒歩5分
・同「西28丁目駅」から約540メートル、徒歩7分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」から約690メートル、徒歩9分
※小樽・岩内方面行き都市間高速バス全便(北大経由は除く)と、手稲、銭函方面行きの全便が止まります
下のリンク先を見ると、札幌の画家會田千夏さんの活動の幅広さにあらためて驚かされます。
団体公募展や個展だけでなく、若手が集まってわいわい楽しんでいそうなグループ展にも顔を出したりしているのは、絵画の世界とは異なる空気に触れようとしているのかもしれません。
ギャラリーレタラで作品を見たのは5年前で、そのときは壁一面を覆う巨大なドローイングが展示されていました。
今回は打って変わって、これまでの彼女の展示ではめずらしいぐらい、小品が中心です。
冒頭画像のいちばん右手前の「あさ―1」が割と大きく、50号ぐらいです。
もし、販売主眼の小品展ということなら、こういう陳列はしないでしょう。額におさめて、同じ高さに並べると思います。
「ちいさなせかい」という小品8点、「あさ―2」などは、ばらばらの高さで壁に架かっています。
会場の中央には、草を生けた花瓶が二つ。
ちょっとしたインスタレーションのようでもあります。
次の画面の「portrait 2021 9a」「portrait 2021 8a」「portrait 2021 9b」「portrait 2021 8b」も、額装はされていません。
東側の壁の「am8:00」「pm4:00」「pm11:00」の3点だけが、同じ高さで、等間隔に展示されていました。
いずれも「あさ」の2点とおなじような、雲を思わせる楕円形が中央に、草原みたいな地面が下に描かれており、時間の経過を表現しています。
會田千夏さんの絵は、水や苔のような緑などを細密な筆で描くことが多く、実際「ちいさなせかい 1」などはそのような描法ですが、「あさ」や「am8:00」などはわりあいラフな筆遣いで、意外の感に打たれました。
「ちいさなせかい」という題名から思い出したのは、ディズニーランドのアトラクションの歌としても知られる「It's a Small World」でした。
日本語の歌詞では、原曲にはない
「せかいはひとつ」
という繰り返しが歌われます。
今回は、5年前と異なり、作家によるテキストの類はまったくありません(過去作のポートフォリオなども会場には見当たりませんでした)。
ただ、海の向こうで戦争が始まり、多くの人が心穏やかでないことを、会場に足を運んだ人なら知っています。
また多くの人が、圧倒的で悲惨な現実を前に、無力感にさいなまれていることも。
美術家にも、見る側にも、できることはごく限られています。
そして、心の平衡と穏やかさを失わないために、ちいさな画面の孤塁に閉じこもること自体を、非難することはだれにもできないと思うのです。元気が回復できれば、そこから這い出てくればいいのですから。
もともと、2人展を「ビオトープ」と称していたこともあったように、會田千夏さんは、ごくささやかな身の回りのものをいつくしむ視線の持ち主でした。
現実を峻拒して閉塞するのではなく、確かな拠点からじっと現実を見守ること。それも、おそらくは、美術家に或る意味でふさわしい身振りなのだと思うのです。
2022年5月21日(土)~6月6日(月)正午~午後6時、火曜休み
Gallery Retara(札幌市中央区北1西28 MOMA place 3階)
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■ハルカヤマ藝術要塞2017 FINAL CUT
■黒展 2 (2016)
■New Point vol.12 (2015、画像なし)
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■N.P.Blood 21 vol.9 會田千夏展 (2011、画像なし)
■會田千夏個展 (2009年)
■會田千夏個展■會田千夏小品・ドローイング展(2009)
=以下、画像なし
■さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展(2009年7月)
■44th 札幌大谷大学・札幌大谷大学短期大学部同窓会美術科 谷の会展(2009年6月)
■法邑芸術文化振興会企画展【滲-shin-】 (2008年10月)
■第63回全道展(2008年6月)
■企画展「07-08展」
■第13回さいとうギャラリー企画 夏まつり「風」パートII (2007年)
■New Point Vol.4(2007年)
■會田千夏、久保綾乃 二人展「ビオトープ」(2006年)
■05→06展
■第58回全道展(2003年)
■第57回全道展(2002年)
・地下鉄東西線「円山公園駅」(T06)・円山公園駅バスターミナルから約360メートル、徒歩5分
・同「西28丁目駅」から約540メートル、徒歩7分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」から約690メートル、徒歩9分
※小樽・岩内方面行き都市間高速バス全便(北大経由は除く)と、手稲、銭函方面行きの全便が止まります
(この項続く)