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■會田千夏展―ちいさなせかい(5月21日~6月6日、札幌) 2022年6月4日は9カ所(4)

2022年06月06日 09時59分38秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 下のリンク先を見ると、札幌の画家會田千夏さんの活動の幅広さにあらためて驚かされます。
 団体公募展や個展だけでなく、若手が集まってわいわい楽しんでいそうなグループ展にも顔を出したりしているのは、絵画の世界とは異なる空気に触れようとしているのかもしれません。

 ギャラリーレタラで作品を見たのは5年前で、そのときは壁一面を覆う巨大なドローイングが展示されていました。
 今回は打って変わって、これまでの彼女の展示ではめずらしいぐらい、小品が中心です。
 冒頭画像のいちばん右手前の「あさ―1」が割と大きく、50号ぐらいです。
 もし、販売主眼の小品展ということなら、こういう陳列はしないでしょう。額におさめて、同じ高さに並べると思います。
 「ちいさなせかい」という小品8点、「あさ―2」などは、ばらばらの高さで壁に架かっています。 
 会場の中央には、草を生けた花瓶が二つ。
 ちょっとしたインスタレーションのようでもあります。

 次の画面の「portrait 2021 9a」「portrait 2021 8a」「portrait 2021 9b」「portrait 2021 8b」も、額装はされていません。



 東側の壁の「am8:00」「pm4:00」「pm11:00」の3点だけが、同じ高さで、等間隔に展示されていました。
 いずれも「あさ」の2点とおなじような、雲を思わせる楕円形が中央に、草原みたいな地面が下に描かれており、時間の経過を表現しています。

 會田千夏さんの絵は、水や苔のような緑などを細密な筆で描くことが多く、実際「ちいさなせかい 1」などはそのような描法ですが、「あさ」や「am8:00」などはわりあいラフな筆遣いで、意外の感に打たれました。

 「ちいさなせかい」という題名から思い出したのは、ディズニーランドのアトラクションの歌としても知られる「It's a Small World」でした。
 日本語の歌詞では、原曲にはない
「せかいはひとつ」
という繰り返しが歌われます。

 今回は、5年前と異なり、作家によるテキストの類はまったくありません(過去作のポートフォリオなども会場には見当たりませんでした)。
 ただ、海の向こうで戦争が始まり、多くの人が心穏やかでないことを、会場に足を運んだ人なら知っています。
 また多くの人が、圧倒的で悲惨な現実を前に、無力感にさいなまれていることも。
 美術家にも、見る側にも、できることはごく限られています。
 そして、心の平衡と穏やかさを失わないために、ちいさな画面の孤塁に閉じこもること自体を、非難することはだれにもできないと思うのです。元気が回復できれば、そこから這い出てくればいいのですから。

 もともと、2人展を「ビオトープ」と称していたこともあったように、會田千夏さんは、ごくささやかな身の回りのものをいつくしむ視線の持ち主でした。 
 現実を峻拒して閉塞するのではなく、確かな拠点からじっと現実を見守ること。それも、おそらくは、美術家に或る意味でふさわしい身振りなのだと思うのです。

 
2022年5月21日(土)~6月6日(月)正午~午後6時、火曜休み
Gallery Retara(札幌市中央区北1西28 MOMA place 3階)


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※小樽・岩内方面行き都市間高速バス全便(北大経由は除く)と、手稲、銭函方面行きの全便が止まります




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