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小さなビルの階段をおりていく。
薄暗い部屋はかび臭く、いすが倒れ、奥は暗闇に沈んでいる。
床の上には、時計が転がり(まるで神田一明氏の絵のようだ)、紙が散らばっていて、どこまでが作者の意図で、どこからが偶然の作用なのか、判断に悩む。
テーブルの上には、水彩に写真を組み合わせたコラージュが描かれたスケッチブックが何冊もひろげられている。
タブローも何点かあるが、それが脇役であるところが、ふつうの美術展とは異なるところだ。
スケッチブック以外にも、おびただしいオブジェや画材、写真のプリントなどが、ところ狭しと卓上を埋め尽くしている。
まるで、これらの断片が、世界現代史の断片であり、廃墟を構成する要素であるかのようだ。
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写真はほとんどがモノクロ。
飛ぶカモメ、観覧者、手…。
ビクトル・エリセ監督の映画「ミツバチのささやき」に登場する女の子アナのイメージもある。
なかでも多いのが、少女の顔だ。
うつろな顔。希望を浮かばせる顔。沈んだ顔。
そのあいまに、小さな本がところどころに転がっている。上の画像にも下の画像にも見えているのが分かるだろうか。
それらはページの端がこげている。
トリュフォー監督の「華氏451」のイメージ。
いつでも危機にさらされる、わたくしたちの「見る、聞く、話す、書く」という権利。
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別のテーブルには、画材や筆、文具、クラシックカメラなどがたくさん配されている。
となりには、標本を収めるようなガラスの戸棚が置かれ、中にもオブジェがいくつもある。たとえば、外国の切手を詰め込んだ透明な入れ物。
先日、小樽の文学館と美術館で瀧口修造の展覧会が開かれていたが、晩年の瀧口が夢想していた店とは、あるいはこういう世界だったかもしれないと思う。
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そのかたわらには、鉄条網が写った写真と、たくさんの白い靴が写った写真。
これはナチスドイツの強制収容所をあらわしているのだろう。
「アウシュヴィッツの後に詩を書くのは、野蛮だ」
という、ドイツ生まれの思想家アドルノの言葉は有名だ。
だとしたら、わたくしたちは、アウシュヴィッツを繰り返さないための詩(や美術や音楽でもなんでもいい)、アウシュヴィッツを撃つ詩を繰り出して、対抗していくしかない。
その近くには、ヘッセ「デミアン」の写真もあった。
2度の世界大戦、そしておびただしい戦争、内乱、クーデタ、難民。
それらの記憶と記録が断片のままに散らばっている部屋。
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トーマス・マンはかつて言った。
「どん底に落ちたひとりの人間が如何にしてそこからはいだすか、これを語ることが文学の使命なのだ」と。
この言葉はいまや胸を打つ。
―井上光晴「岸壁派の青春」
世界は、引用で編まれた廃墟として、目の前に現前している。
だとしたら、われわれは、世界が崩れていくよりも速く、走り続け、踊り続ければいいのだろうか。
夜通し祝祭をしたディオニュソスの信者たちのように。
それが、アポロン的な理性の果てに訪れる世界の破綻から、永遠に逃走し、あるいは破綻と闘争し、反抗する道なのだろうか。
(この項未完)
2013年8月2日(金)~11日(日)午前11時~午後6時
公開制作:7月29日(月)~8月1日(木)午後2~6時
コワーキングカフェサブロク(札幌市豊平区豊平3の8 BUIEビル)
※旧豊平駅の向かい。歩道橋のすぐそば
□Facebook ページ https://www.facebook.com/events/420741711375204/?ref=22
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【告知】三神恵爾個展「ディオニュソスの部屋」
■三神恵爾展-廃墟から (2010年)
■三神恵爾展「秘めやかな叛逆」 (2006年)
■閉塞形状展(2002年)=画像なし
・中央バス「豊平3条8丁目」「豊平3条10丁目」で降車、約180メートル、徒歩3分
(札幌駅前=東急百貨店の南側、北1条=市民ホールの西側、南1条=モスバーガー前などから、月寒、平岡、千歳方面のバスがほとんどすべて止まります。時間帯にもよりますが、1時間に10本以上走ってます)
・地下鉄東豊線「学園前」から約840メートル、徒歩11分
・地下鉄東西線「東札幌」から約1100メートル、徒歩15分