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■フォールディング・コスモス (7月17、18日、札幌/September3 - 11,NYC)

2011年08月06日 22時08分52秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
承前。日本語は英文のあとにあります)


Exhibition: *folding cosmos

2011 July 17(Saturday)noon - 9pm,July 18(Sunday)9am - 7pm
Moere Park,glass pyramid(Higashi-ku,Sapporo-city,JAPAN)

September 3(Saturday) - 11(Sunday) 1pm - 6pm
Modern Arts Building(38 West 39th Street,NY,NY10018)
 
artists: Makoto Fujimura, Shinobu Kanefuji, Fumie Ando, Toshiya Shimozawa

http://www.foldingcosmos.org


 趣旨などについては、告知の際のエントリをご覧ください。 

 ごくごくおおざっぱにいえば、もともとニューヨークでの発表が先で、北海道でも展示するというのは後から出てきた話とのこと。
 現代と茶道、みたいなことがテーマになっている。
 出品者は、札幌2、愛知県豊橋市1、ニューヨーク1の計4人。

 昨年の6月ごろ、札幌で展開された茶室のアートもあったし、なんだか最近、お茶とアートというのがトレンドなんだろうか。

 もともと「美術」という枠組みは明治になって西洋から輸入されたものであって、もともと日本には存在しない。
 だから「書画骨董」という枠組みで言えば、「美術」「絵画」というカテゴリーなら仲間入りして当然の「浮世絵の新作」は入らないわけだし、「お稽古事」という枠組みで考えると茶道もいけばなも三味線も墨絵もおんなじ範疇ということになる。茶道やいけばなが、いまの日本で油絵やインスタレーションとぜんぜん接点がないように見えるのは、明治以降の概念に従っているからにすぎないともいえる。
 このうちいけばなは1960年代の草月流などに代表されるように美術との親近性は高い。となると、茶道を美術の文脈で語りなおしとらえなおそうとするのは、あたらしい試みだといえそうだ。

 実際、茶道は、掛け軸、うつわ(釜や茶器、花器)、菓子などもふくめた「総合芸術」であることはまちがいない。茶席そのものは、観客参加型のパフォーマンスに近いものがあるし。

 今回、札幌組の下沢敏也さんは、会場の入口附近に、「つくばい」にあたる作品を出品していた。
 土の感触を生かした、ぼこぼこした感じの作品だったように記憶する。

 その次に、安藤文絵さんは、中空の直方体のような、内側が金色になった作品を、宙に浮かせるように設置している。
 彼女によると、これは「にじり口」とのこと。なるほど!

 よく見ると作品にギリシャ文字が書かれている。

 新約聖書の言葉で

狭き門より入れ

ということらしい。
 あまりに「にじり口」にぴったりの言葉で、ナットクしてしまった。

 にじり口の片方に立って、向こう側をのぞき込むと、床の間が見える位置関係になっている。

 ちなみにこの有名な言葉は「マタイ福音書」第7章第13節の
狭き門より入れ、滅にいたる門は大きく、その路は広く、之より入る者多し。
というイエスの言葉に由来するという。
 いろんな解釈があるだろうが、これまたおおざっぱにいえば、真の信仰の困難さを諭したものではないかと思う。彼女の作品のバックボーンにはキリスト教があるわけで、言葉の選択も彼女らしい。
 本来、「狭き門」というのは、入試を伝えるニュースの決まり文句ではないのだ。
(ここで、アンドレ・ジッドについても語りたくなるが、省略)


 会場のつきあたりには、茶室的な狭い空間(床の間)があり、そこの壁にかかっている軸がフジムラマコトさんの絵ということだが、あまりに小さくてよくわからなかった。すみません。
 その奥に、豊橋の陶芸家兼藤忍さんの手になるユニークで現代的な感覚あふれる茶器の数々が置かれていた。


 ニューヨークのギャラリー空間が、モエレ沼公園「ガラスのピラミッド」にくらべて小さいため、作品の大きさが会場に合っていなかった(=ガラスのピラミッドギャラリーが大きすぎ)感があったのは残念だけど、いきさつを考えればやむをえないだろう。

 

フォールディング・コスモス (9月3~11日、ニューヨーク)

2011年7月17日(土)正午~午後9時、18日(日)午前9時~午後7時
モエレ沼公園 ガラスのピラミッド(札幌市東区モエレ沼公園)



(この項続く) 


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