(承前)
石山透、という名前を見ても、ぴんと来ない人は多いかもしれない(筆者もそうだった)。
小樽生まれのシナリオライターなのだが、手がけた作品が、いずれもNHKテレビの「タイムトラベラー」(1971)、「新八犬伝」(1973~75)、「プリンプリン物語」(1979~82)とくれば、おそらく40~50代でこれらに夢中にならなかった人は少ないのではないだろうか。
こういう、すごい人だけれども、決して文学史の本流に名を残しているわけではない書き手に着目したり、有名な作家の知られざる一面にスポットを当てたりする、小樽文学館の企画力にはいつもうならされる。
さて、今回はシナリオ作家の展覧会なので、会場に並んでいるのは、シナリオが多い。ただし、ガラスケースに入っており、冊子の表紙しか見えない。黄ばんだ紙に、ガリ版で書かれた文字が時代を感じさせる。
「新八犬伝」の人形のキャラクターデザインの絵、「プリンプリン物語」の人形なども展示されている。
ただし、非常に残念なことに、それらの映像を見るコーナーがない。これは、ないものねだりだと、自分でも思う。
というのは、NHKにも当時の放送は残っていないだろうからだ(70年代までビデオは非常に高価なものだったし、各テレビ局は映像を保存しておくという発想がそもそも稀薄だった)。
そういう事情は承知している。とはいえ、やはり1話でも、部分でもいいから、人形劇の実際の映像を見たかった。
石山透は1927年生まれ。
小樽出身で、その後札幌に移る。
幼い頃、小樽市相生町の自宅で、布団の中から窓越しに、小樽港に浮上した帝国海軍の潜水艦を目撃するという体験をしている。
上京し、49年には熊倉一雄らと「感覚座」を旗揚げするが、北海道に戻り、52年にNHK札幌放送劇団に入って、札幌局の専属作家となる。
59年には東京局の専属作家になる。
札幌にいた当時を思い出した「夏の柿 小樽を思う」という随筆がパネル展示されていた。
なぜ汽車で行かなかったんだろうと思うが、彼の小樽に寄せる愛着が伝わってきて、思わず涙が出そうになった。
2014年9月12日(金)~11月3日(月)午前9:30~午後5:00(入館は4時半まで)
休館日:月曜日(9月15日、10月13日、11月3日を除く)、9月16日(火)、17日(水)、24日(水)、10月14日(火)、15日(水)
市立小樽文学館(色内1)
入館料:一般300円、高校生・市内高齢者150円、中学生以下無料
石山透、という名前を見ても、ぴんと来ない人は多いかもしれない(筆者もそうだった)。
小樽生まれのシナリオライターなのだが、手がけた作品が、いずれもNHKテレビの「タイムトラベラー」(1971)、「新八犬伝」(1973~75)、「プリンプリン物語」(1979~82)とくれば、おそらく40~50代でこれらに夢中にならなかった人は少ないのではないだろうか。
こういう、すごい人だけれども、決して文学史の本流に名を残しているわけではない書き手に着目したり、有名な作家の知られざる一面にスポットを当てたりする、小樽文学館の企画力にはいつもうならされる。
さて、今回はシナリオ作家の展覧会なので、会場に並んでいるのは、シナリオが多い。ただし、ガラスケースに入っており、冊子の表紙しか見えない。黄ばんだ紙に、ガリ版で書かれた文字が時代を感じさせる。
「新八犬伝」の人形のキャラクターデザインの絵、「プリンプリン物語」の人形なども展示されている。
ただし、非常に残念なことに、それらの映像を見るコーナーがない。これは、ないものねだりだと、自分でも思う。
というのは、NHKにも当時の放送は残っていないだろうからだ(70年代までビデオは非常に高価なものだったし、各テレビ局は映像を保存しておくという発想がそもそも稀薄だった)。
そういう事情は承知している。とはいえ、やはり1話でも、部分でもいいから、人形劇の実際の映像を見たかった。
石山透は1927年生まれ。
小樽出身で、その後札幌に移る。
幼い頃、小樽市相生町の自宅で、布団の中から窓越しに、小樽港に浮上した帝国海軍の潜水艦を目撃するという体験をしている。
上京し、49年には熊倉一雄らと「感覚座」を旗揚げするが、北海道に戻り、52年にNHK札幌放送劇団に入って、札幌局の専属作家となる。
59年には東京局の専属作家になる。
札幌にいた当時を思い出した「夏の柿 小樽を思う」という随筆がパネル展示されていた。
NHKの放送作家になってからの七年間を、港と坂道のない札幌に住んだ。その間、何度小樽へ行ったことだろう。
五番館の横からバスに乗った。札樽国道が今ほど立派でもない代わりに、車も少くて、バスも空いていた。ただ南小樽に近づくと、いつも急に混み出してすし詰めになった。
何という名のトンネルか、それを過ぎると大きなカーブを廻り、黒々とした小樽の町が見えはじめる。すると、心が小さく躍る。何故なのか自分でも不思議であった。
(北の話19号 1967年6月1日)
なぜ汽車で行かなかったんだろうと思うが、彼の小樽に寄せる愛着が伝わってきて、思わず涙が出そうになった。
2014年9月12日(金)~11月3日(月)午前9:30~午後5:00(入館は4時半まで)
休館日:月曜日(9月15日、10月13日、11月3日を除く)、9月16日(火)、17日(水)、24日(水)、10月14日(火)、15日(水)
市立小樽文学館(色内1)
入館料:一般300円、高校生・市内高齢者150円、中学生以下無料
(この項続く)