北見から石北峠に向けて車で約45分、道東を代表する温泉郷である温根湯温泉がある。
その入り口附近に、昨年の12月まで、小野塚正信記念館という、大きな看板を掲げた絵の展示施設があった。
入場料600円。小野塚さんが自作の絵を展示しているらしい。しかし、近くの道の駅などに置いてある紹介のリーフレットを見る限り、正直なところ申し訳ないが、お金を払ってまで見たいとは思われない。
全国、全道規模の公募展はおろか、地元のオホーツク美術協会に出品したこともない。個展やグループ展の記録も、筆者の調査が及ぶ範囲では見当たらない。
その小野塚さんが、大きな体育館を借り切って、1日限りの個展を開くという。
作品およそ9千枚。
行ってみたら、体育館の床に、画用紙、半紙、色紙に描かれた作品が、すき間を詰めて、びっしりと並んでいた。
クレヨン、木版など、制作手法の同じ、サイズも同じ作品がまとめられている。
ふつうの絵画展にあるようなキャンバスの作品、サイズの大きな作品は、1点もない。
一部、隷書などの書もあるが、9割以上は抽象画である。
それも、黒い太い線で描かれた模様に、ところどころ着彩を施したものが大半を占める。
強いて言えば、不動産広告で見るような、アパートの間取りの図に、鮮やかな色を塗ったようでもある。クレーかミロが不動産屋に就職したのか。いや、誰にも似ていない。
ほかに、小さな手作りの本がざっと2千冊もある。
ぱらぱらとめくってみれば、やはり同じような線の模様が即興的なタッチでかいてある。
筆者は見なかったが、短歌を詠んだものもあるという。
実は、これまで制作してきた本は、この数倍あるらしい。
半世紀も制作を続けているのであれば、ひとつ公募展で腕試しをしてやろう、ついては大きな作品にじっくり取り組もう…というような考えが頭をもたげてくるのがふつうではないかと思われるのだが、そういう形跡はない。
聞くところによれば、小野塚さんは東洋大を卒業し、ホテルでの勤めを経て、北見市中心部で1992年まで靴屋を営んでいたという。店を閉じ、1997年に冒頭で記した記念館を開設した。
絵も短歌も独学のようなのだ。
ということは、これらの作品は、むしろアール・ブリュット(アウトサイダー・アート)の枠組みで把握したほうがよいのではないか。
アール・ブリュットは、けっして障碍者の芸術とイコールではない。
専門的な教育を受けず、通常のルートで世に出ることを考えず、ひたすら自分流を貫き創作する。
これこそまさに、アール・ブリュットのあり方ではないだろうか。
2012年4月25日(水)午前10時~午後3時
道立北見体育センター(北見市東陵町)
その入り口附近に、昨年の12月まで、小野塚正信記念館という、大きな看板を掲げた絵の展示施設があった。
入場料600円。小野塚さんが自作の絵を展示しているらしい。しかし、近くの道の駅などに置いてある紹介のリーフレットを見る限り、正直なところ申し訳ないが、お金を払ってまで見たいとは思われない。
全国、全道規模の公募展はおろか、地元のオホーツク美術協会に出品したこともない。個展やグループ展の記録も、筆者の調査が及ぶ範囲では見当たらない。
その小野塚さんが、大きな体育館を借り切って、1日限りの個展を開くという。
作品およそ9千枚。
行ってみたら、体育館の床に、画用紙、半紙、色紙に描かれた作品が、すき間を詰めて、びっしりと並んでいた。
クレヨン、木版など、制作手法の同じ、サイズも同じ作品がまとめられている。
ふつうの絵画展にあるようなキャンバスの作品、サイズの大きな作品は、1点もない。
一部、隷書などの書もあるが、9割以上は抽象画である。
それも、黒い太い線で描かれた模様に、ところどころ着彩を施したものが大半を占める。
強いて言えば、不動産広告で見るような、アパートの間取りの図に、鮮やかな色を塗ったようでもある。クレーかミロが不動産屋に就職したのか。いや、誰にも似ていない。
ほかに、小さな手作りの本がざっと2千冊もある。
ぱらぱらとめくってみれば、やはり同じような線の模様が即興的なタッチでかいてある。
筆者は見なかったが、短歌を詠んだものもあるという。
実は、これまで制作してきた本は、この数倍あるらしい。
半世紀も制作を続けているのであれば、ひとつ公募展で腕試しをしてやろう、ついては大きな作品にじっくり取り組もう…というような考えが頭をもたげてくるのがふつうではないかと思われるのだが、そういう形跡はない。
聞くところによれば、小野塚さんは東洋大を卒業し、ホテルでの勤めを経て、北見市中心部で1992年まで靴屋を営んでいたという。店を閉じ、1997年に冒頭で記した記念館を開設した。
絵も短歌も独学のようなのだ。
ということは、これらの作品は、むしろアール・ブリュット(アウトサイダー・アート)の枠組みで把握したほうがよいのではないか。
アール・ブリュットは、けっして障碍者の芸術とイコールではない。
専門的な教育を受けず、通常のルートで世に出ることを考えず、ひたすら自分流を貫き創作する。
これこそまさに、アール・ブリュットのあり方ではないだろうか。
2012年4月25日(水)午前10時~午後3時
道立北見体育センター(北見市東陵町)