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■和と洋の距離感 (2015年1月24日~2月28日の土曜のみ、札幌)

2015年02月15日 10時38分36秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 2月14日のギャラリーまわり、最初はHOKUBU絵画記念館「和と洋の距離感」である。

 ここは有料であるが、コーヒーを出してくれるし、いつ行ってもほとんど他の客がおらず、静かな環境で絵をじっくり鑑賞できる。絵画好きにはたまらない施設である。
 年に数回、所蔵する版画や絵画の展覧会を開いており、昨年の「空までのプレリュード」で見た水口かよこの木版画など、本当にすばらしかった。
 版画がメーンであるが、展覧会のたびに作品が入れ替わっているから、かなりの点数を所蔵しているのだろう。
 1階は受付で、2階と3階に展示室がある。書棚もあって「版画芸術」のバックナンバーなどがそろっている。

 北海道の施設によくあることで、1月と2月は毎年閉館しているのだが、今年は土曜に限って開館している。
 今回の展覧会は、2階は和田三造、伊東深水、山口華揚、吉井淳二、今井ロダン、藤田嗣治、栗原喜依子。3階はヒロ・ヤマガタ、池田満寿夫、熊谷善正、絹谷幸二。
 2階にくらべると、3階が、この施設としては、いささか通俗的なイメージを持たれる作家といえるのかもしれず、そのためにこんな、冬の土曜だけという見せ方をしているのだろうか、などと考えてしまった。

 2階では、やはり藤田の2点が貴重か。
 「少女」はコロタイプ、「シャラオの入口」はリトグラフである。
 「少女」は戦後の藤田がよく手がけていたタイプの少女像だが、背景は描かれていない。
 いつ見ても藤田の人物像は、肌が大理石のように硬く感じられる。

 それを引き継いだのが栗原喜依子なのだろう。「朝の街(シャルトル)」は、石膏や大理石のような画肌が魅力的だ。この絵を見ていると、人間は目でも、対象を触っているということを、あらためて実感する。

 吉井淳二の版画「舞妓」も良かったなあ。
 紫の着物を着た舞妓が正面を向いてすわり、鼓をたたいている。
 確かに「和」の世界だが、顔の描き方はもはや浮世絵調ではない。目元はきりりとしている。
 日本に生きた洋画家の、「洋」と「和」の距離のとり方が凝縮されている作品だと思った。

 伊東深水「花留根尾」は墨彩画。
 これは「ボルネオ」と読むのではないだろうか。ジャングルの中の高床式の小屋と、そこに向けて小さな橋を歩く、笠をかぶった人物が描かれている。

 3階。
 ヒロ・ヤマガタは、クリスチャン・ラッセンとならんで
「美術愛好家でない人に最も知名度が高く、美術愛好家が全くといっていいほど言及しない、現代の画家」
といえると思う。
 人間がたくさん描かれ、色数も多くにぎやかな画面は、お得感があるのかもしれない。
 「美術館」という作品は、オルセー美術館の印象派の部屋をモデルにしているのだろうか。もっとも、ゴッホやセザンヌは、印象派というよりポスト印象派だろうが。
 この絵で奇妙なのは、展示室の中に大量の風船を持っている人がいることもさることながら、「トランプをする男たち」などの絵画が実物よりもはるかに巨大なことである。
 そもそも、日本人がカリフォルニアに行ってフランスを題材にしたポップな絵を描いているという事態は、なかなかややこしいと思う。

 池田満寿夫は「令嬢ジュリー」の連作5点。83年の作である。
 70年代以降の池田満寿夫といえば、暗い色調の中にエロティックな裸婦をリアルに描写するという印象があったので、デフォルメした人物像というのはちょっと意外であった。
 絹谷幸二「鳥」は、水色の空に飛ぶカモメらしき鳥が題材で、リアリスティックな描線と落ち着いた色調は、彼のいつもの画風と異なる。

 じつは、3階でいちばん通俗的なのは、熊谷善正「柘榴と女」だと思う。
 昔の二科には、この手の絵がたくさん並んでいたのだ。
 いかにも60~70年代の洋画らしく、人物や果実、花を、甘やかに描いている。
 もっとも、熊谷の名誉のために言えば、彼はこんな甘ったるい絵ばかりを描いていたのではないだろう。 


 時間があれば、いつまでものんびりしていたい空間だ。


2015年1月24日~2月28日の土曜のみ、午前10時~午後5時(入館30分前まで)
HOKUBU 絵画記念館 (豊平区旭町1)
高校生以上300円、小中学生200円



・地下鉄東豊線「学園前」から約570メートル、徒歩8分

・中央バス「豊平橋」「豊平3条4丁目」から約580メートル、徒歩8分

・じょうてつバス「環56」(真駒内本町→平岸駅前→真駒内本町)の「旭町1丁目」から約170メートル、徒歩3分

・地下鉄南北線「中島公園」から約1キロ、徒歩13分


(この項続く) 


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