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芽ぶきの春から白い冬まで 北海道の風景美展(6月26日まで)

2006年06月25日 06時42分26秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 萩原勇雄・石川雄一・近藤博史・吉田貴幸の4氏の風景画約50点を展示しており、絵画好きには見逃せない展覧会です。今回の出品作はすべて道内の風景がモティーフになっており、ほとんどの人が「これはきれい!」と思うのではないでしょうか。

 石川さんは札幌在住。色が鮮やかで、まるで写真のようです。「丘の道(美瑛)」「ラベンダーと十勝岳」など、美瑛・富良野地方に材を得た作品の多くは、遠景から近景までスケール感のある構図を採用しており、見ていて非常に心地よいです。もちろん、写真のように花の色がにじむなんてこともありません。
 「紅葉の散歩道(野幌)」も、色とりどりの紅葉が美しくまとめられています。

 江別在住の近藤さんもたいへんリアルな風景画ですが、石川さんよりも、緑色を中心に濃い目の色合いになっています。やはりモティーフで多いのは、「薄暮の深山峠」など、美瑛・富良野方面です。「能取湖」や、北大のポプラ並木などを描いた絵もありました。

 稚内の吉田さんは、4人のうちでいちばんフォトリアリズム系といえるかもしれません。ただし、稚内という、光にとぼしい風土を反映してか、色合いは派手さからはほど遠いものです。海岸に取材した「浜1」「浜2」や「逆光」など、描写の腕がすごいという以上に、最果てのさびれた情緒を感じてしまうのは、見る側が稚内在住だということを知っているからでしょうか? 「古びた農機具」も、しんみりします。

 4人の中で最ベテランの萩原さん(札幌)は、唯一リアリズムからちょっと離れた、大まかな筆遣いでモティーフをとらえています。4人とも迫真・細密では見る側も疲れるかもしれませんから、この構成は良いと思います。
 萩原さんのモティーフも多岐にわたっていて「初冬の藻岩山」「エンルム岬(日高)」「積丹神威岬」「霧多布湿原」など、全道各地の風景を描いています。さすがに、構図には安定感があります。

 それにしても、この4人のうち、萩原さんは「グループ環」でおなじみであり、吉田さんはご自身のサイトで作品を拝見していましたが、あとの2人はまったく初めて見ました。4人とも公募展には所属しておらず、なかなか見る機会もないのですが、このような実力の持ち主がいたとは驚きでした。
 「売り絵」と片付けてしまうには惜しい展覧会だと思います。

6月20日(火)-26日(月)10:00-20:00(日曜-19:30、最終日-18:00)
三越札幌店(中央区南1西3)

□吉田さんのサイト

 なお、おなじ会場で
「近代洋画巨匠版画展 梅原龍三郎・小磯良平・萩須高徳」
「リアリズム絵画展」
も開催中です。
 「近代…」のほうは、この3人以外に中川一政や熊谷守一、向井潤吉なんかもありました。価格は100万円弱がほとんど。
 また、少しですが油彩もあり。梅原の3号と荻須の15号がいずれも1500万円でした。断然、荻須のほうがいいです。梅原って、どうしてこんなに高いんでしょうかね。

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