道立近代美術館の開館40周年にふさわしい展覧会。
同館所蔵品から、北海道の美術のベスト50を、学芸員15人が選び、手分けして解説を付して展示しました。
会場の各作品の前にあった解説文は非常に詳しく読みごたえのあるものですが、立ったまま読むのはいささか難儀でした。会場で監視員に尋ね、この解説が、中西出版から最近出た書籍「北海道美術50」の版下をそのまま流用したものと判明。
解説は、本を買って、家に帰ってからゆっくり読むことにしました。
この本自体はなかなかおもしろく、道内の美術に関心のある人におすすめできる一冊です。
オールカラーで本体1200円と、お値段も手ごろです。
反対側から言えば、展覧会自体は、見逃してもそれほど後悔する必要はないかもしれません。
名品が多いので、これからも作品は目にするチャンスが必ずあると思われるからです。
これまで道内の美術史はもっぱら「グループ展」「団体公募展」など、人の集合を軸に語られることが少なくなかったのですが、この本は個々の作家の営為に焦点を当てているのが特徴だと思います。
そして、まえがきで、同館の佐藤幸宏学芸副館長が語っていますが
「作品のここをぜひ見てほしい、この鑑賞ポイントをどうしても楽しんでほしいという、学芸員の気持ちがこれまでの名品図録よりも強く出た画集といえるかもしれません」。
それでは、50人の顔ぶれを見てみます。
下のほうに表形式で載せました(このブログの仕様なのかバグなのか、やたらと空白ができてしまう…)。
当然、人それぞれ、いろいろな見方があることでしょう。
「どうしてあの画家が入っているんだ」
とか
「こんな作家が入っているのは意外」
とか。
先ほど、佐藤幸宏さんのことばを引いたとおり、この人選には多くの「主観」が入っています。そして、それは悪いことではありません。アートの評価に完全な「客観」などあるはずがないからです。
とはいえ、学芸員が思いっきり自分の好みを押し出しているのではなく
「それほど好きな作家ではないけれどこの人はどうしても外せない」
など一般的な評価も加えながらの人選になっていることは、いうまでもありません。
ですから、この50人を金科玉条とするのではなくて、みんながそれぞれの「50人」「50点」を選んでいけばいいのではないでしょうか。
もうちょっとマニアックな指摘をすれば、道内にはもっとたくさんの美術館学芸員がおり、ここに参加しているのは、たまたま本の刊行当時、札幌の道立館に勤務している学芸員です。なので、転勤のサイクルによっては、この50人の顔ぶれがかなり異なってくることは、容易に想像できます。たとえば今回の執筆陣には、函館勤務の長い学芸員がいるため、函館拠点の作家がちょっと多いなあという印象を筆者は抱きました。逆に、道北の作家が少ないように感じます。
念のために、道立近代美術館編で、北海道新聞社から出されていた名シリーズ「ミュージアム新書」にラインナップされていながら、今回の人選から漏れた固有名詞を挙げておきます。
中村善策
松樹路人
居串佳一
田上義也
山下りん
金子鷗亭(鷗は、鴎の正字)
しかし、筆者がほんとうに言いたいことは、もっとほかにあります。
長くなってきたので稿を改めます。
2017年8月26日(土)~11月7日(火)午前9時半~午後5時(金曜は午後7時半まで)、月曜休み(月曜が祝日の場合は翌火曜休み。11月6日も開館)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
同館所蔵品から、北海道の美術のベスト50を、学芸員15人が選び、手分けして解説を付して展示しました。
会場の各作品の前にあった解説文は非常に詳しく読みごたえのあるものですが、立ったまま読むのはいささか難儀でした。会場で監視員に尋ね、この解説が、中西出版から最近出た書籍「北海道美術50」の版下をそのまま流用したものと判明。
解説は、本を買って、家に帰ってからゆっくり読むことにしました。
この本自体はなかなかおもしろく、道内の美術に関心のある人におすすめできる一冊です。
オールカラーで本体1200円と、お値段も手ごろです。
反対側から言えば、展覧会自体は、見逃してもそれほど後悔する必要はないかもしれません。
名品が多いので、これからも作品は目にするチャンスが必ずあると思われるからです。
これまで道内の美術史はもっぱら「グループ展」「団体公募展」など、人の集合を軸に語られることが少なくなかったのですが、この本は個々の作家の営為に焦点を当てているのが特徴だと思います。
そして、まえがきで、同館の佐藤幸宏学芸副館長が語っていますが
「作品のここをぜひ見てほしい、この鑑賞ポイントをどうしても楽しんでほしいという、学芸員の気持ちがこれまでの名品図録よりも強く出た画集といえるかもしれません」。
それでは、50人の顔ぶれを見てみます。
下のほうに表形式で載せました(このブログの仕様なのかバグなのか、やたらと空白ができてしまう…)。
日本画 | 油彩、水彩(洋画) | 版画 | 彫刻 | 工芸 | 現代アート・写真・デザイン | |
---|---|---|---|---|---|---|
戦前の作品 | 谷文晁印/蠣崎波響/筆谷等観/北上聖牛 | 林竹治郎/俣野第四郎/三岸好太郎/能勢眞美/小川原脩 | 中原悌二郎 | |||
戦後の作品 | 本間莞彩/山口蓬春/片岡球子/岩橋英遠/菊川多賀 | 木田金次郎/難波田龍起/赤穴宏/三岸節子/神田日勝/田辺三重松/岩船修三/深井克美/国松登/小谷博貞/宮川美樹/米谷雄平 | 一原有徳/尾崎志郎/北岡文雄/佐藤克教 | 米坂ヒデノリ/本田明二/砂澤ビッキ | 小森忍 | 栗谷川健一 |
現役作家 | 羽生輝 | 伊藤光悦/絹谷幸二/井上まさじ | 渡会純价/中谷有逸 | 安田侃/阿部典英 | 折原久左エ門/大野耕太郎/嶋崎誠 | 岡部昌生/露口啓二/鈴木涼子 |
当然、人それぞれ、いろいろな見方があることでしょう。
「どうしてあの画家が入っているんだ」
とか
「こんな作家が入っているのは意外」
とか。
先ほど、佐藤幸宏さんのことばを引いたとおり、この人選には多くの「主観」が入っています。そして、それは悪いことではありません。アートの評価に完全な「客観」などあるはずがないからです。
とはいえ、学芸員が思いっきり自分の好みを押し出しているのではなく
「それほど好きな作家ではないけれどこの人はどうしても外せない」
など一般的な評価も加えながらの人選になっていることは、いうまでもありません。
ですから、この50人を金科玉条とするのではなくて、みんながそれぞれの「50人」「50点」を選んでいけばいいのではないでしょうか。
もうちょっとマニアックな指摘をすれば、道内にはもっとたくさんの美術館学芸員がおり、ここに参加しているのは、たまたま本の刊行当時、札幌の道立館に勤務している学芸員です。なので、転勤のサイクルによっては、この50人の顔ぶれがかなり異なってくることは、容易に想像できます。たとえば今回の執筆陣には、函館勤務の長い学芸員がいるため、函館拠点の作家がちょっと多いなあという印象を筆者は抱きました。逆に、道北の作家が少ないように感じます。
念のために、道立近代美術館編で、北海道新聞社から出されていた名シリーズ「ミュージアム新書」にラインナップされていながら、今回の人選から漏れた固有名詞を挙げておきます。
中村善策
松樹路人
居串佳一
田上義也
山下りん
金子鷗亭(鷗は、鴎の正字)
しかし、筆者がほんとうに言いたいことは、もっとほかにあります。
長くなってきたので稿を改めます。
2017年8月26日(土)~11月7日(火)午前9時半~午後5時(金曜は午後7時半まで)、月曜休み(月曜が祝日の場合は翌火曜休み。11月6日も開館)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)