「もっともしたしまれているカメラ雑誌」
というキャッチフレーズを掲げ、1950年以来刊行を続けてきた月刊誌「日本カメラ」が5月号で休刊し、会社を清算するということを知り、あわてて本屋に行ってきました。
4月号をめくると、月例写真コンテストへの挑戦や年間購読申し込みを募るページもあって、ほんとうに突然のことだったのだなあと感じます。
筆者はカメラ雑誌はあまり買っていないので、偉そうなことはぜんぜん言えませんが、気がついた変化を二、三書くことにします。
口絵が白川義員や大西みつぐといったベテランの作品だったり、ミラーレスの超高級機(ソニーα1と富士フイルムGFX100S)を紹介するページや新製品レビューがあったり、以前と変わっていないところももちろん多いんですが。
イ)広告が少ない
カメラ雑誌の巻末といえば、中古カメラ店の広告です。
新橋や高輪などにあるお店が、中古のカメラやレンズや周辺機器を、価格付きでびっしりと載せていました。
「こんど上京したら、これを見てみよう」
「通信販売で買ってみるか」
と思っていた人もいたのではないでしょうか。
ところが、その広告が2ページしかないのです。
たしかに月刊誌に広告が出た時点で、そのレンズは売り切れているかもしれません。細かい文字で並べられるよりも、写真つきのほうがイメージがわきますし、この手の中古品広告こそ、インターネットによる販売に適しているといえそうです。
実物を見ないと買えない、といって通販に二の足を踏む人もなかにはいるでしょうが、全体としては、新型コロナウイルスの感染拡大による人出の減少は、各店の経営と、広告出稿に影響を及ぼしたと考えられます。
広告といえば、カメラメーカーの広告も同様に少ないです。
表紙をめくるとキヤノンが、裏表紙にはライカが、さすがメーカーというべき美しい広告を載せています。
しかしカメラ業界全体としては、あのニコン(キヤノンと並ぶ世界カメラメーカーの2強といわれたニコンです!)が一眼レフ製造からの撤退をうわさされる(まだうわさの段階で、発表などはないのですが)ほどの不況に陥っているのが現状です。
広告が少ないと雑誌社の収入が減るのはもちろん、一般読者にとっても、雑誌の厚みがなくなって、なんとなく損をしたような気分になるので、部数減につながる可能性がないとはいえません。
ロ)投稿者の高齢化
カメラ雑誌といえば、アマチュアからの投稿を募集するフォトコンのページは、戦後の日本の写真史でも重要な役割を果たしてきたと思います。
全国津々浦々で、サークルに集う愛好家たちが、プロによる選評を読んで一喜一憂してきました。
「日本カメラ」のフォトコンは、投稿者の年齢が、半分ぐらいの人に添えられているのですが、それを見てびっくり。
50~70代がほとんどで、20~40代は数えるほどです(学生のページ、というのは別立てになっている)。
若い世代が写真を撮らなくなったということではないでしょう。
ただ、若い人は撮影してもプリントはしないし、こういう場で腕を競うということにもあまり興味がないのかもしれません。
また、これは昨年休刊した「アサヒカメラ」も同様でしたが、投稿者の略歴には所属サークル名も書かれています。この手の写真サークルに参加することもあまり積極的ではなさそうです。
写真を撮るという行為自体はむしろ昔よりも増えていると思われますが、高価な機材を買いそろえて、人よりもすぐれた作品を狙う―ということまでしようという人は減っているのかもしれません。
ハ) それにしても
多くの人が書いていますが、昨年の「アサヒカメラ」「カメラマン」誌に続く休刊は残念です。
雑誌業界とカメラ業界全体の不景気に加え、新型コロナウイルスの感染拡大が引き金をひいたということでしょうか。
「アサヒカメラ」などの休刊で「日本カメラ」に読者が流れてきて部数が持ち直すということがなかったのでしょうか。
キヤノンが主催してきた有力コンテスト「写真新世紀」も今年で終了が決まっており、ほんとに暗い話題が続きます。
写真を撮るという行為は、雑誌を便りにする技術面の割合がどんどん減り、SNS などを主舞台にしたパーソナルなものへと変貌しているのかもしれません。
カメラは、ものづくりニッポンが今なお誇れる最後の牙城のひとつ。これから、写真の世界はどうなっていくんでしょうか。
なお、4月号の特集は「写真家の動画配信が面白い!」で、なかなかおもしろかったです。
□日本カメラ社 https://www.nippon-camera.com/index.php
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「アサヒカメラ」休刊の衝撃
というキャッチフレーズを掲げ、1950年以来刊行を続けてきた月刊誌「日本カメラ」が5月号で休刊し、会社を清算するということを知り、あわてて本屋に行ってきました。
4月号をめくると、月例写真コンテストへの挑戦や年間購読申し込みを募るページもあって、ほんとうに突然のことだったのだなあと感じます。
筆者はカメラ雑誌はあまり買っていないので、偉そうなことはぜんぜん言えませんが、気がついた変化を二、三書くことにします。
口絵が白川義員や大西みつぐといったベテランの作品だったり、ミラーレスの超高級機(ソニーα1と富士フイルムGFX100S)を紹介するページや新製品レビューがあったり、以前と変わっていないところももちろん多いんですが。
イ)広告が少ない
カメラ雑誌の巻末といえば、中古カメラ店の広告です。
新橋や高輪などにあるお店が、中古のカメラやレンズや周辺機器を、価格付きでびっしりと載せていました。
「こんど上京したら、これを見てみよう」
「通信販売で買ってみるか」
と思っていた人もいたのではないでしょうか。
ところが、その広告が2ページしかないのです。
たしかに月刊誌に広告が出た時点で、そのレンズは売り切れているかもしれません。細かい文字で並べられるよりも、写真つきのほうがイメージがわきますし、この手の中古品広告こそ、インターネットによる販売に適しているといえそうです。
実物を見ないと買えない、といって通販に二の足を踏む人もなかにはいるでしょうが、全体としては、新型コロナウイルスの感染拡大による人出の減少は、各店の経営と、広告出稿に影響を及ぼしたと考えられます。
広告といえば、カメラメーカーの広告も同様に少ないです。
表紙をめくるとキヤノンが、裏表紙にはライカが、さすがメーカーというべき美しい広告を載せています。
しかしカメラ業界全体としては、あのニコン(キヤノンと並ぶ世界カメラメーカーの2強といわれたニコンです!)が一眼レフ製造からの撤退をうわさされる(まだうわさの段階で、発表などはないのですが)ほどの不況に陥っているのが現状です。
広告が少ないと雑誌社の収入が減るのはもちろん、一般読者にとっても、雑誌の厚みがなくなって、なんとなく損をしたような気分になるので、部数減につながる可能性がないとはいえません。
ロ)投稿者の高齢化
カメラ雑誌といえば、アマチュアからの投稿を募集するフォトコンのページは、戦後の日本の写真史でも重要な役割を果たしてきたと思います。
全国津々浦々で、サークルに集う愛好家たちが、プロによる選評を読んで一喜一憂してきました。
「日本カメラ」のフォトコンは、投稿者の年齢が、半分ぐらいの人に添えられているのですが、それを見てびっくり。
50~70代がほとんどで、20~40代は数えるほどです(学生のページ、というのは別立てになっている)。
若い世代が写真を撮らなくなったということではないでしょう。
ただ、若い人は撮影してもプリントはしないし、こういう場で腕を競うということにもあまり興味がないのかもしれません。
また、これは昨年休刊した「アサヒカメラ」も同様でしたが、投稿者の略歴には所属サークル名も書かれています。この手の写真サークルに参加することもあまり積極的ではなさそうです。
写真を撮るという行為自体はむしろ昔よりも増えていると思われますが、高価な機材を買いそろえて、人よりもすぐれた作品を狙う―ということまでしようという人は減っているのかもしれません。
ハ) それにしても
多くの人が書いていますが、昨年の「アサヒカメラ」「カメラマン」誌に続く休刊は残念です。
雑誌業界とカメラ業界全体の不景気に加え、新型コロナウイルスの感染拡大が引き金をひいたということでしょうか。
「アサヒカメラ」などの休刊で「日本カメラ」に読者が流れてきて部数が持ち直すということがなかったのでしょうか。
キヤノンが主催してきた有力コンテスト「写真新世紀」も今年で終了が決まっており、ほんとに暗い話題が続きます。
写真を撮るという行為は、雑誌を便りにする技術面の割合がどんどん減り、SNS などを主舞台にしたパーソナルなものへと変貌しているのかもしれません。
カメラは、ものづくりニッポンが今なお誇れる最後の牙城のひとつ。これから、写真の世界はどうなっていくんでしょうか。
なお、4月号の特集は「写真家の動画配信が面白い!」で、なかなかおもしろかったです。
□日本カメラ社 https://www.nippon-camera.com/index.php
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「アサヒカメラ」休刊の衝撃