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訂正あり●テンポラリースペース(札幌)の中森敏夫さん死去

2023年03月27日 20時55分24秒 | 情報・おしらせ
 札幌で長く美術展の企画やオルタナティブスペースの運営に携わってきた中森敏夫さんが3月25日深夜亡くなったそうです。
 正確な年齢が分かりません。確か1946年生まれです。
 この3カ月ほど入院していたそうですが、体調はかなり前から悪そうだったと記憶しています。筆者は札幌に戻ってきてから一度も話をしていませんでした。

 もともと札幌の中心部(現在のpivot)で営んでいた「中森花器店」を親から引き継いだと聞いています。
 筆者が知ったときはすでに円山北町(中央区北4西27)に2階建ての店舗を営んでおり、2階では陶芸やガラスの展覧会を時々開いていました。
 その南隣に、平屋の小屋があって、花器店からは室内のドアで行き来できました。その小屋が「temporary space」です。

 吉田豪介著「北海道の美術史」によると、中森さんがアートにかかわったきっかけは、1983年、いまや世界的作家の川俣正がまだ若い時分、近くの民家を角材で覆う大規模なインスタレーション(仮設展示)「TETRA-HOUSE」をバックアップしたのが最初だそうです。
 同著から引きます。

その彼がプロデュースした企画では「界川游行」が最大規模のものであろう。
「アート・イベント・イン・サッポロ 1989 界川游行ゆぎょう」は、札幌市の円山地区をかつて流れていた川で、いまは暗渠となって地下に潜った界川さかいがわの記憶と原風景をよみがえらせるイベントで、1989(平成1)年10月1日からほぼ1か月の期間で実施されたものである。美術家としては岡部昌生、阿部典英、楢原武正、戸谷成雄、保科豊巳、国安孝昌ら8名、それに詩人と音楽家、さらに生け花作家などが加わり、合計200点の作品で約1キロの川の跡を仮構するものである。(中略)現代美術の行為が日常の社会構造の中で、どう関わり、どんな意味を持つか、このコンセプトはお祭り気分の側面で、芸術の存在理由に向けて垂直に切り込む問題意識を感じさせるものだといえる。


 漢数字は洋数字に直し、ルビをふりました。
 参加した顔ぶれを見ると、すごいな~としかいいようがありません。
 ちなみに詩人は吉増剛造だろうし、日本を代表する舞踏家、大野一雄も関係しているはずです。

 temporary space も、岡部、戸谷のほか一原有徳、インドネシアのメラ・ジャルスマなど、さまざまな展覧会を企画しました。
 特筆すべきなのは、当初はカラーの図録を毎回制作していたこと。展覧会を開くたびに大赤字だったはずですが、意に介する様子がありませんでした。
 こういうどんぶり勘定の経営がたたったのだと思いますが、花器店とテンポラリースペースは2006年1月末に立ち退くことになりました。

 同年春に、現在地で再開したのが、きのう26日まで秋元さなえ展が開かれていた現テンポラリースペースです。
 古い民家で、壁面は狭くて絵画展示には向いていませんでしたが、2階まで吹き抜けになっていて、はしごで上り下りするというユニークな構造で、それを生かしたインスタレーションなどの展示がたびたび開催されていました。

 とりあえず、このブログでとりあげた、テンポラリースペースでの展示を下に挙げておきます。
 このスペースが果たした役割や、これまで行われた展示について、あらためて振り返る機会がほしいと感じています。
 ご冥福をお祈りします。


※秋元さんの姓が「岡元」と誤っていたのでおわびして訂正します。申しわけありませんでした。(3月28日)

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