難しそうな題がついていますが、うつ病・アルコール依存症を患っているMさん(本人が名前をおおっぴらにしていないのでこのように表記します)が、病気のことを少しでもわかってほしいと、工作という手段で表現している作品二十数点の展示です。
本人は、アートや美術という語を使っていません。
もちろん、何がアートなのかを決めるのは本人の申告とは限りません。
Mさんは、おなじような境遇で絵や音楽で表現する人もいるが、自分はそういう才能はないので、工作で表現していると話していました。
ここに展示されているのがアートか否かというのも論じるに値する主題であり、アーサー・C・ダントーの議論などを思い出しもするのですが、きょうは深入りしません。
Mさんの工作がアートとして優れているかどうかは、正直なところいささか疑問があります。
たとえば冒頭画像は「隔靴搔痒」という作品です。
100円ショップで買ったというミニチュアの靴を並べた作品は、見た目はユニークですが、隔靴搔痒という言葉をビジュアル化したものだともいえそうです。ただ、アートとして優れているかは、この場合たいした話ではないわけです。
これはインターネットや電話、郵便など、いろいろな相談先につながろうとしてつながらない、あるいはつながりが混乱しているという図式を表現しています。
Mさんは「もっと早く行政に相談すればよかった」と振り返ります。
うつ病を患って混乱している状態、ということはわかります。
そして、多くの人に見てもらい、病気の実態を知ってほしいというMさんの熱い思いも伝わってきます。
ただ筆者は、これって表現というより説明だよなあーという気がしてしまうのも確かなのです。
靴をちりばめたり、古い地図やフロッピーディスクを並べたりして迂回的に説明することが悪いとはいいませんが、言葉でストレートに語ったほうがそのつらさにより共感してもらえるのではないかとも思ってしまうのです。
もちろん、言葉よりも、こうした工作のほうがとっつきやすいという人もいるかもしれません。
ただこれらの工作は、言葉による補いがなければ、いったい何なのか、筆者にはよくわからなかったです。
これは、会場にあった説明文。
英語やドイツ語のほか、フィン後(フィンランドの公用語)、インドネシア語、タガログ語(フィリピンで用いられる)、タイ語、韓国語などがあり、海外からの観光客にも伝わるようにという作者の思いがこもっています。
多くの作品を作り上げ、展示を開くために役所をまわって後援を取り付けるなど、Mさんの行動力には敬服するしかありません。
でも、これほどのエネルギーがあるのなら、うつ病自体がもうかなり快方にむかっているんじゃないだろうかと感じてしまいます。
動き回った次の日は疲れて寝ているとMさんは話すのですが、それは誰でも似たり寄ったりではないかと思います。
なので、これがアートではないということであれば、Mさんには、快癒してもらい、病気にとらわれることなく、工作する必要もない人生を今後おくってもらうのが、最良なのではないでしょうか。
ただ、これだけの精力を注いだ展示に多くの人が足を運ぶことこそが、Mさんをいちばん元気にするでしょうから、皆さんには会場を訪れて、病気のつらさやくるしさに共感してもらえたらと思うのです。
本人は、アートや美術という語を使っていません。
もちろん、何がアートなのかを決めるのは本人の申告とは限りません。
Mさんは、おなじような境遇で絵や音楽で表現する人もいるが、自分はそういう才能はないので、工作で表現していると話していました。
ここに展示されているのがアートか否かというのも論じるに値する主題であり、アーサー・C・ダントーの議論などを思い出しもするのですが、きょうは深入りしません。
Mさんの工作がアートとして優れているかどうかは、正直なところいささか疑問があります。
たとえば冒頭画像は「隔靴搔痒」という作品です。
100円ショップで買ったというミニチュアの靴を並べた作品は、見た目はユニークですが、隔靴搔痒という言葉をビジュアル化したものだともいえそうです。ただ、アートとして優れているかは、この場合たいした話ではないわけです。
これはインターネットや電話、郵便など、いろいろな相談先につながろうとしてつながらない、あるいはつながりが混乱しているという図式を表現しています。
Mさんは「もっと早く行政に相談すればよかった」と振り返ります。
うつ病を患って混乱している状態、ということはわかります。
そして、多くの人に見てもらい、病気の実態を知ってほしいというMさんの熱い思いも伝わってきます。
ただ筆者は、これって表現というより説明だよなあーという気がしてしまうのも確かなのです。
靴をちりばめたり、古い地図やフロッピーディスクを並べたりして迂回的に説明することが悪いとはいいませんが、言葉でストレートに語ったほうがそのつらさにより共感してもらえるのではないかとも思ってしまうのです。
もちろん、言葉よりも、こうした工作のほうがとっつきやすいという人もいるかもしれません。
ただこれらの工作は、言葉による補いがなければ、いったい何なのか、筆者にはよくわからなかったです。
これは、会場にあった説明文。
英語やドイツ語のほか、フィン後(フィンランドの公用語)、インドネシア語、タガログ語(フィリピンで用いられる)、タイ語、韓国語などがあり、海外からの観光客にも伝わるようにという作者の思いがこもっています。
多くの作品を作り上げ、展示を開くために役所をまわって後援を取り付けるなど、Mさんの行動力には敬服するしかありません。
でも、これほどのエネルギーがあるのなら、うつ病自体がもうかなり快方にむかっているんじゃないだろうかと感じてしまいます。
動き回った次の日は疲れて寝ているとMさんは話すのですが、それは誰でも似たり寄ったりではないかと思います。
なので、これがアートではないということであれば、Mさんには、快癒してもらい、病気にとらわれることなく、工作する必要もない人生を今後おくってもらうのが、最良なのではないでしょうか。
ただ、これだけの精力を注いだ展示に多くの人が足を運ぶことこそが、Mさんをいちばん元気にするでしょうから、皆さんには会場を訪れて、病気のつらさやくるしさに共感してもらえたらと思うのです。
※追記。もし本人が「作らずにはいられない」のであれば、それは立派にアートなのではないかと思います。そして、その強度を支えるのが、構図やコンセプトの巧拙よりもまず作者の熱量だというふうにも思います
2024年12月10日(火)~15日(日)午前9時~午後7時
札幌市資料館(中央区大通西13)
・地下鉄東西線「西11丁目駅」から約290メートル、徒歩4分。「西18丁目駅」から約560メートル、徒歩7分
・市電「中央区役所前」から約420メートル、徒歩6分。「西15丁目」から約430メートル、徒歩6分
・じょうてつバス「西11丁目駅前」から約330~390メートル、徒歩5分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「北1条西12丁目」から約230メートル、徒歩3分
(小樽、岩内方面行き都市間高速バス、小樽・手稲方面と札幌駅前を結ぶ快速・普通のバスの、全便が止まります=北大経由小樽行きを除く)
・ジェイアール北海道バス「51 啓明線」(札幌駅前―北1西4―啓明ターミナル)で「大通西14丁目」降車、約350メートル、徒歩5分。この停留所から乗って終点で降りればギャラリー門馬へ直行できます
※駐車場はありません。周辺にコインパーキングが何カ所かあります
2024年12月10日(火)~15日(日)午前9時~午後7時
札幌市資料館(中央区大通西13)
・地下鉄東西線「西11丁目駅」から約290メートル、徒歩4分。「西18丁目駅」から約560メートル、徒歩7分
・市電「中央区役所前」から約420メートル、徒歩6分。「西15丁目」から約430メートル、徒歩6分
・じょうてつバス「西11丁目駅前」から約330~390メートル、徒歩5分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「北1条西12丁目」から約230メートル、徒歩3分
(小樽、岩内方面行き都市間高速バス、小樽・手稲方面と札幌駅前を結ぶ快速・普通のバスの、全便が止まります=北大経由小樽行きを除く)
・ジェイアール北海道バス「51 啓明線」(札幌駅前―北1西4―啓明ターミナル)で「大通西14丁目」降車、約350メートル、徒歩5分。この停留所から乗って終点で降りればギャラリー門馬へ直行できます
※駐車場はありません。周辺にコインパーキングが何カ所かあります