JR千歳線の沿線にある千歳、恵庭、北広島の3市の美術協会の63人が1点ずつ出品し、見ごたえのある絵画展になっています。千歳市民文化センター自主文化事業。
内訳は北広島15人、千歳17人、恵庭31人。それぞれの美術協会の会員数がこれだけとは思えず、有志が参加してこの人数になったのか、または過去の経緯などを勘案して割り当てたのか、そのあたりの事情は尋ねるのをわすれました。市の人口だけでみると、千歳が一番多いですが、出品者は恵庭がおよそ半数を占めています。
また、各市がまとまって展示するのではなく、1階と2階にまたがり、混在しています。パステルの小品から150号の油彩までサイズはさまざまです。
藤本寿枝(千歳)「帰り道の夕景」。水彩F50
縦構図の風景画。第一ホテルが見えるので千歳の中心部でしょうか。手前の古い家が夕方のやわらかい光の中にとらえられ、何気ない、むしろ凡庸ともいえる風景が、やさしく気高いものにすら感じられます。
中野圭子(千歳)「海月」。水彩F120
水彩でこのサイズはかなり異例の大きさ。たゆたう十数匹のクラゲを、ひたすら点描で覆いつくした労作。
山本恒二(恵庭)「風の大地」。アクリルF100
左手前にオオウバユリが2輪、遠景に黒々とした木々の塊を配した風景画。強いストロークが、吹きすさぶ風を表現しています。風そのものは目に見えないはずだし、漫画のように線を足せばいいというものでもないのに、たしかに風が吹いていることが感じられる作品。
水高和彦(恵庭)「風のコンポジション」。ミクストメディアS50 ×3
ロシア・ソヴィエトの画家マレーヴィチの「白の上の白」を思い出しました。あちらは直線と矩形による禁欲的な画面ですが、水高さんは、ゆるやかな曲線の重なりとマチエールの差異とによって、別タイプの「白の上の白」の世界をつくりだしているようです。
甲斐野弘幸(北広島)「land scape '24」。水彩F30
一般的な水彩画は白い部分を抜いて、濃い色は最後に描くと思うのですが、この絵はまず濃い色の矩形を置き、その上から水色を重ねています。さらにレース編みのような細かい文様が、かすかなあかりが明滅するように画面のあちこちに点在し、幻想的な抽象世界を現出させています。
山本紘正(恵庭)「扉の刻」。油彩F100
中央には、いすにすわって足を組んだ、白いシャツと黒っぽいスカート姿の女性が描かれています。それだけならよくある絵なのですが、背景では、壊れかけたキャンバスが転がる荒れたアトリエの床に、こちらに背中を向けて裸婦が横たわり、腕を組んだ男性がやはり後ろ向きに立ち尽くしています。女性の真後ろには大きなイーゼルが置かれています。背景の色は抑えられていますが、手前の女性との関係は不明で、不思議な光景を描いています。
高橋和子(北広島)「しあわせな樹」。油彩F100
色の配置によって再構成された風景画。藍色と緑、水色を組み合わせた木の肌の描写がおもしろいです。
長坂栄子(恵庭)「向日葵の詩 2024」。油彩F130
いったいどれだけ上に伸びていくヒマワリなんでしょうか。何十本もの株が絡まり合い、枯れかかった葉がおびただしく描かれて、生々しさを感じさせます。縦構図のヒマワリの絵は珍しく、よくあるヒマワリ畑の風景画とは違います。
清武昌(恵庭)「大気のフープ」。アクリルF30
線や色が点在する抽象画。ちょっと武田浩志さんを思い出しました。
伊藤光悦(北広島)「on the beach」。油彩F80
砂浜に横たわり目をつむる巨大なクジラの、頭部というか上半身だけが描かれています。空はベージュで、絵の具のつき具合が生々しいです。うまく言えないのですが、黙示録的な世界の広がりを感じます。筆者にとって伊藤光悦さんの絵はいつも、世界滅亡の静かな予言でもあるのです。
2024年12月11日(水)~15日(日)午前10時~午後5時(最終日3時)
千歳市民ギャラリー (千歳市千代田町5)
・JR千歳駅から約400メートル、徒歩5分
内訳は北広島15人、千歳17人、恵庭31人。それぞれの美術協会の会員数がこれだけとは思えず、有志が参加してこの人数になったのか、または過去の経緯などを勘案して割り当てたのか、そのあたりの事情は尋ねるのをわすれました。市の人口だけでみると、千歳が一番多いですが、出品者は恵庭がおよそ半数を占めています。
また、各市がまとまって展示するのではなく、1階と2階にまたがり、混在しています。パステルの小品から150号の油彩までサイズはさまざまです。
藤本寿枝(千歳)「帰り道の夕景」。水彩F50
縦構図の風景画。第一ホテルが見えるので千歳の中心部でしょうか。手前の古い家が夕方のやわらかい光の中にとらえられ、何気ない、むしろ凡庸ともいえる風景が、やさしく気高いものにすら感じられます。
中野圭子(千歳)「海月」。水彩F120
水彩でこのサイズはかなり異例の大きさ。たゆたう十数匹のクラゲを、ひたすら点描で覆いつくした労作。
山本恒二(恵庭)「風の大地」。アクリルF100
左手前にオオウバユリが2輪、遠景に黒々とした木々の塊を配した風景画。強いストロークが、吹きすさぶ風を表現しています。風そのものは目に見えないはずだし、漫画のように線を足せばいいというものでもないのに、たしかに風が吹いていることが感じられる作品。
水高和彦(恵庭)「風のコンポジション」。ミクストメディアS50 ×3
ロシア・ソヴィエトの画家マレーヴィチの「白の上の白」を思い出しました。あちらは直線と矩形による禁欲的な画面ですが、水高さんは、ゆるやかな曲線の重なりとマチエールの差異とによって、別タイプの「白の上の白」の世界をつくりだしているようです。
甲斐野弘幸(北広島)「land scape '24」。水彩F30
一般的な水彩画は白い部分を抜いて、濃い色は最後に描くと思うのですが、この絵はまず濃い色の矩形を置き、その上から水色を重ねています。さらにレース編みのような細かい文様が、かすかなあかりが明滅するように画面のあちこちに点在し、幻想的な抽象世界を現出させています。
山本紘正(恵庭)「扉の刻」。油彩F100
中央には、いすにすわって足を組んだ、白いシャツと黒っぽいスカート姿の女性が描かれています。それだけならよくある絵なのですが、背景では、壊れかけたキャンバスが転がる荒れたアトリエの床に、こちらに背中を向けて裸婦が横たわり、腕を組んだ男性がやはり後ろ向きに立ち尽くしています。女性の真後ろには大きなイーゼルが置かれています。背景の色は抑えられていますが、手前の女性との関係は不明で、不思議な光景を描いています。
高橋和子(北広島)「しあわせな樹」。油彩F100
色の配置によって再構成された風景画。藍色と緑、水色を組み合わせた木の肌の描写がおもしろいです。
長坂栄子(恵庭)「向日葵の詩 2024」。油彩F130
いったいどれだけ上に伸びていくヒマワリなんでしょうか。何十本もの株が絡まり合い、枯れかかった葉がおびただしく描かれて、生々しさを感じさせます。縦構図のヒマワリの絵は珍しく、よくあるヒマワリ畑の風景画とは違います。
清武昌(恵庭)「大気のフープ」。アクリルF30
線や色が点在する抽象画。ちょっと武田浩志さんを思い出しました。
伊藤光悦(北広島)「on the beach」。油彩F80
砂浜に横たわり目をつむる巨大なクジラの、頭部というか上半身だけが描かれています。空はベージュで、絵の具のつき具合が生々しいです。うまく言えないのですが、黙示録的な世界の広がりを感じます。筆者にとって伊藤光悦さんの絵はいつも、世界滅亡の静かな予言でもあるのです。
2024年12月11日(水)~15日(日)午前10時~午後5時(最終日3時)
千歳市民ギャラリー (千歳市千代田町5)
・JR千歳駅から約400メートル、徒歩5分