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■北村哲朗彫刻展 ー樹憶 II― (2023年6月12~17日、札幌)

2023年06月22日 22時22分22秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 登別在住で、伊達市大滝の作業場へ通って制作を続けている北村哲朗さんは、いま間違いなく、道内で最も精力的に活動する彫刻家です。
 この14年間、ほぼ毎年個展を開き、新作を発表している人はいません。
 そもそも画家にくらべて彫刻家は人数が少ない上、搬入搬出に手間がかかります。その制作ぶりには、頭が下がります。
 
 北村さんの木彫は、表面をつややかに仕上げることはなく、削り跡が残ります。着彩もしません。
 あまり子細にエスキスなどを書くこともせず、じかに木材と向き合い、木と対話しながら制作していっているのがわかります。

 右端は、案内状に印刷されていた「風琴」。
 ケヤキ材を用いており、他の作品に比べると色が濃い。
 直線が多いのも特徴です。

 これは制作で出た端材を有効活用しようとして作った作品。
 上部の、鋭い部品がオクターブと同じ七つになっているのは偶然だそうで、手風琴(アコーディオン)を思わせる形状になっています。
 
 左が「天地人」。
 右が「結実」。

 会場には「結実」を含め、2018年の胆振東部沖地震の被災木を用いた作品がいくつかあります。

 当時の報道写真を覚えている方も多いでしょうが、胆振管内厚真町などでは山崩れがあちこちで発生し、大量の木が倒れました。
 胆振総合振興局がそれらの木材の利用を募ったところ、北村さんが手を挙げ、それらを用いて制作した彫刻を、被害の大きかった厚真町、安平町、むかわ町に寄贈したのだそうです。
 北村さんはかつて早来(安平町)や鵡川(むかわ町)に住んだことがありました。
 
 
 「風待ち」もそんな一点。
 公共施設内に設置するには大きすぎると厚真町から言われて、戻ってきた作品。高さ2メートル以上あります。

 2艘の舟が帆をたてて、向かい合っているようにも見えます。

「風を受けて心に帆を立てるように」
という思いが込められた、モニュメント的な要素のある作品です。

 北村さんの作品は、穂別町民センターのロビーや、早来町おいわけ子ども園などに置かれているそう。

 制作にあたっては、苫小牧の企業であるイワクラのサポートを受けたとのこと。
 
 このほか「水脈」と「風の生まれるところ」、窓際に置かれていた小品「双風」「大地より」「風を集めて」が、被災した木による作品です。
 
 
 もう一点、背の高い作品がありました。
 クルミ材を用いた「りつ」。

 くりぬいた部分を削るのはけっこう難しかったそうです。
 
 このほか
「歩」「光陰」(同題2点)「変換」「座」
など。


 会場入り口に、80代を迎えてなおパワフルなインスタレーションに取り組む札幌の楢原武正さんが今年1月の個展で書いた「樹憶」という作品が、会場全体の案内看板のように掛かっていました。
 
 
 ところが、楢原さんは、そのできばえに今ひとつ満足していなかったらしく、わざわざレタリングをし直して会場に持ってきたそうです。
 こちらはどこか大正ロマン風の文字になっています。

 北村さんは1956年生まれ。
「70歳になるまでは今のペースでできると思う」と、元気なところをみせており、来年も同じ会場で個展を開く予定とのことです。
 見習わなくては…。


2023年6月13日(火)~18日(日)午前10時~午後6時
GALLERY ESSE(札幌市北区北9西3 レ・ノール北9条)

過去の関連記事へのリンク
北村哲朗彫刻展ー地平と辺縁ー (2019、室蘭)
北村哲朗彫刻展―地平と辺縁Ⅱ― (2018)

北村哲朗 彫刻展―境界の構図 (2015)
首展 (2015)
北村哲朗彫刻展 (2010、画像なし)


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