(文中敬称略)
版画のみの団体公募展で、略称は「版画展」。
士別では2002、05、08年に巡回展が開かれているが、札幌では7年ぶり(のはず)。
さすがにうまい作品が集まっており、見ごたえ十分。技法的にも木版、リトグラフ、ウォータレスリトグラフ、メゾチントなどほとんど網羅されており、複数の技法を併用した作品も多い。
ただ、毎年巡回してきているわけではないので、この展覧会がどんな性格を持つものなのか、すこし説明があったほうが札幌の愛好家には親切ではないかと思う。
道内からは
伊藤倭子「グラスに薔薇」 メゾチント、アクアチント
金沢一彦「オルフェウス」 サンドブラスト、銅版
小池暢子「風に吹かれて」 エッチング、アクアチント
小林 大「ヴェロニカ」 メゾチント
渋谷正巳「ヒマラヤ紀行-マチャプチャレ.L.1.」 メゾチント
手島圭三郎「しまふくろうの木」 木版
府川 誠「雪陽」 リトグラフ
渡會純价「トレモロの朝」 銅版
が出品されている。
全90点中8点が道内というのは悪くない数字だ。
なお、準会員は道内、道外問わず作品が出ていないので、今回の巡回展は「会員以上」という仕切りになっているのだと思われる。
このなかでは、小池暢子の作品を久しぶりに見た。
木の上に「風の家」という看板がかかっていて、葉のない枝と枝の間をレールや汽車、馬が行き来する童画調の作品。冬に見ると、心がほんわかする。
道外会員はめったに見る機会がないので新鮮。
なかでも「静かな夜系」とでも呼びたくなるような、シンプルで心癒やされる作品が目を引いた。
島田節子「NIWA-シズカ」(リトグラフ、木版)、岡田まりゑ「ふるコトバ」(銅版凹凸版、コラージュ)、近藤幸「夜を交わす」(木版)、松下サトル「銀の月、眠る空」(木版)などだ。
これらは、ただ甘いだけのイラストレーションとは一線を画しており、画面そのものの強度は保ちつつも、静かで平穏な世界に見る者を誘う。
一方で、佐竹邦子「winds work-39」(木によるリトグラフ)、鈴木吐志哉「北奥への飛行」(木版)といった、パワフルな作品もあり、平木美鶴「ベンチと栗」(木版)などカラフルで楽しい作品もある。
意外と少数派だったのが、シュルレアリスムの系譜をひく幻想的な作。木口木版や銅版には向いていると思うのだが。そのなかで、蒲池清爾「全ての人間を覆う見えない拘束具」(エッチング)は、骨骼で包まれた裸婦や木々などを克明に描き、16世紀ごろの銅版画とSFの世界が合体したようなふしぎな世界を表現していた。
また、山本桂右「staircase H」(リトグラフ)は、四つの並行した上り階段をリアルに描き、利渉重雄「王国の系譜」(エッチング、アクアチント)は架空の城塞都市を題材にし、いずれも静かな中に荘厳さを感じさせた。
2009年11月21日(土)-12月20日(日)10:00-7:00
プラニスホール(中央区北5西2 札幌エスタ11階=旧そごう)
一般300円、高大生200円、中学以下無料
・エスタのエレベーターは込みます。1階、2階から乗れないこともあるので、地下から乗るのがおすすめ
■第70回記念 版画展巡回展(2002年)
版画のみの団体公募展で、略称は「版画展」。
士別では2002、05、08年に巡回展が開かれているが、札幌では7年ぶり(のはず)。
さすがにうまい作品が集まっており、見ごたえ十分。技法的にも木版、リトグラフ、ウォータレスリトグラフ、メゾチントなどほとんど網羅されており、複数の技法を併用した作品も多い。
ただ、毎年巡回してきているわけではないので、この展覧会がどんな性格を持つものなのか、すこし説明があったほうが札幌の愛好家には親切ではないかと思う。
道内からは
伊藤倭子「グラスに薔薇」 メゾチント、アクアチント
金沢一彦「オルフェウス」 サンドブラスト、銅版
小池暢子「風に吹かれて」 エッチング、アクアチント
小林 大「ヴェロニカ」 メゾチント
渋谷正巳「ヒマラヤ紀行-マチャプチャレ.L.1.」 メゾチント
手島圭三郎「しまふくろうの木」 木版
府川 誠「雪陽」 リトグラフ
渡會純价「トレモロの朝」 銅版
が出品されている。
全90点中8点が道内というのは悪くない数字だ。
なお、準会員は道内、道外問わず作品が出ていないので、今回の巡回展は「会員以上」という仕切りになっているのだと思われる。
このなかでは、小池暢子の作品を久しぶりに見た。
木の上に「風の家」という看板がかかっていて、葉のない枝と枝の間をレールや汽車、馬が行き来する童画調の作品。冬に見ると、心がほんわかする。
道外会員はめったに見る機会がないので新鮮。
なかでも「静かな夜系」とでも呼びたくなるような、シンプルで心癒やされる作品が目を引いた。
島田節子「NIWA-シズカ」(リトグラフ、木版)、岡田まりゑ「ふるコトバ」(銅版凹凸版、コラージュ)、近藤幸「夜を交わす」(木版)、松下サトル「銀の月、眠る空」(木版)などだ。
これらは、ただ甘いだけのイラストレーションとは一線を画しており、画面そのものの強度は保ちつつも、静かで平穏な世界に見る者を誘う。
一方で、佐竹邦子「winds work-39」(木によるリトグラフ)、鈴木吐志哉「北奥への飛行」(木版)といった、パワフルな作品もあり、平木美鶴「ベンチと栗」(木版)などカラフルで楽しい作品もある。
意外と少数派だったのが、シュルレアリスムの系譜をひく幻想的な作。木口木版や銅版には向いていると思うのだが。そのなかで、蒲池清爾「全ての人間を覆う見えない拘束具」(エッチング)は、骨骼で包まれた裸婦や木々などを克明に描き、16世紀ごろの銅版画とSFの世界が合体したようなふしぎな世界を表現していた。
また、山本桂右「staircase H」(リトグラフ)は、四つの並行した上り階段をリアルに描き、利渉重雄「王国の系譜」(エッチング、アクアチント)は架空の城塞都市を題材にし、いずれも静かな中に荘厳さを感じさせた。
2009年11月21日(土)-12月20日(日)10:00-7:00
プラニスホール(中央区北5西2 札幌エスタ11階=旧そごう)
一般300円、高大生200円、中学以下無料
・エスタのエレベーターは込みます。1階、2階から乗れないこともあるので、地下から乗るのがおすすめ
■第70回記念 版画展巡回展(2002年)