廣澤正俊さんは、滝川西や札幌西陵高などで教壇に立ちつつ油彩を描いていた道展会員。
会場に貼ってあった略年譜によると、1949年秋田県二ツ井町生まれ、51年に来道、73年に道教大特設美術科を卒業-とある。
道展には69年に初出品で入選。70年に北海道新聞社賞、71年に朝日新聞社賞を受けて73年に会友、79年に会員となっている。
89年に脳腫瘍が見つかり、2007年に再発し学校を休職。08年5月に亡くなった。
個展は1984年に滝川で1度開いたきり。札幌での初個展が遺作展になってしまった。
道展の会場で見ても印象的で、筆者は1998年に書いた道展評でも図版をつけて廣澤さんの「宙を超えて-追憶」をとりあげている。今回、十数年ぶりにこの絵と再会して、とてもなつかしい思いがした。
しかし、やはり個展会場でまとめて見ると、迫力が違う。個展をほとんどしたことのない人にもかかわらずこれほど多くの小品があるというのも意外だった。
時計台ギャラリーのA、B両室が使われており、大作はほぼ年代順に並んでいるが、小品はランダムである。
A室のヤマ場は「カーニバルの終わり」「ショーがはねて」といった、群像を描いた作品群だろう。サーカスの公演後の人間たちを描いているようであるが、ダイスをふったり、帽子をかぶっている人々は、たとえば三岸好太郎や増田誠とは違ったタイプの、静かな存在感をたたえている。顔つきがいやにバタ臭いのもふしぎな魅力だ。
画家は90年代なかばにイタリア旅行をしたらしく、シエナの風景などに取材した小品が数多く展示されていた。
その際の蓄積は大作にも反映されている。
筆者は最初に「宙を超えて 追憶」を見た際、ふと、有元利夫のことを思い出した。たしかに、初期ルネサンスふうたたずまいという点では共通する雰囲気があるが、しかし、画面はまったく異なる。この作品は、城塞に囲まれた、建物の密集する都市を描いたもので、人の姿はない。
しかし、人間が描かれていない絵は彼の作品ではむしろ例外で、続く「宙を超えて 遙かな夢」では、白いスカートの少女が横たわる姿が描かれるとともに、手前にはドゥオモのような建物が配されている。イタリア的な遠い地へのあこがれが、日常とないまぜになって構成されたこのあたりの作品は、かなりの高みに達している。
あらためて早世の惜しまれる画家だと思った。
出品作は次の通り。特記しないものは油彩。
自画像II F10、72年
自画像I F8、70年
車窓からの風景 F6、96年
灰皿のある静物 F8、74年
林檎 F6、2000年
母と子 F100、70年
マイ・コレクション F100、79年
ショーがはねて F100、86年
川辺の椅子 F6、85年
赤いドレス P20、85年
浮遊する婦人像 F8、06年
静寂 M50、85年
遙かな夢 P10、01年
万華鏡 F30、06年
カーニバルの終わり F100、87年
ショーがはねてII F100、87年
幕間 S80、88年
何処へ I S80、90年
何処へII S120、91年
追想 S80、91年
メモリー S30、05年
宙に向かって F100、93年
丘の上の街-イタリア F8、95年
シエーナ 旅情 F4、95年
黒衣の少女 F6、73年
ラ・フランスのある静物 P4、05年
ランプのある静物 F8、74年
コーヒーミルのある静物 F6、85年
函館の夏 F8、78年
絵を描く婦人 F3、86年
シャルトル風景 F1、84年
追憶の街 SM、02年
パリの夢 F4、85年
シェーナのドォーモ F6、96年
手稲山遠望 F6、97年(※メモの字が汚くてちょっと自信ないです。すいません)
静物、右手のある F4、05年
アッシジの街角 F8、95年
扉 F4、85年
二体の人形 F4、85年
小さなピエロのいる静物 F6、81年
林檎三個 F3、2000年
青いチョッキの少女 F6、85年
シェーナの広場 F6、96年
ブルージュ・運河 F8、85年
赤い服の人形 P6、85年
滝川の川辺・冬 F20、85年
宙を超えて-街 F100、94年
宙を超えて-旅人 F100、95年
宙を超えて-黙する物たち F100、96年
宙を超えて-追憶 F100、98年
宙を超えて-遙かな夢 F100、01年
宙を超えて-遠い記憶 F130、04年
宙を超えて-くり返される問い F130、03年
遠い記憶 F100、08年
春を待つ F10、01年
日覆いのある店先 F8、92年
少女、ブルージュを背景に F10、85年
・淡彩
冬の港 26.7×14.5センチ 81年
シェーナ風景 21.5×14.5センチ 94年
シェーナの大聖堂 21.5×14.5センチ 94年
北の海 冬 23.5×16.3センチ 83年
・デッサン
眠る子 40.5×31.0センチ 00年
輪舞(ロンド) 40.5×31.0センチ 00年
ベネチア・ゴンドラ 35.0×23.2センチ 94年
2010年4月26日(月)~5月1日(土)10:00~6:00(最終日~5:00)
札幌時計台ギャラリー(札幌市中央区北1西3 地図A)
■廣澤正俊さん死去 (2008年)
会場に貼ってあった略年譜によると、1949年秋田県二ツ井町生まれ、51年に来道、73年に道教大特設美術科を卒業-とある。
道展には69年に初出品で入選。70年に北海道新聞社賞、71年に朝日新聞社賞を受けて73年に会友、79年に会員となっている。
89年に脳腫瘍が見つかり、2007年に再発し学校を休職。08年5月に亡くなった。
個展は1984年に滝川で1度開いたきり。札幌での初個展が遺作展になってしまった。
道展の会場で見ても印象的で、筆者は1998年に書いた道展評でも図版をつけて廣澤さんの「宙を超えて-追憶」をとりあげている。今回、十数年ぶりにこの絵と再会して、とてもなつかしい思いがした。
しかし、やはり個展会場でまとめて見ると、迫力が違う。個展をほとんどしたことのない人にもかかわらずこれほど多くの小品があるというのも意外だった。
時計台ギャラリーのA、B両室が使われており、大作はほぼ年代順に並んでいるが、小品はランダムである。
A室のヤマ場は「カーニバルの終わり」「ショーがはねて」といった、群像を描いた作品群だろう。サーカスの公演後の人間たちを描いているようであるが、ダイスをふったり、帽子をかぶっている人々は、たとえば三岸好太郎や増田誠とは違ったタイプの、静かな存在感をたたえている。顔つきがいやにバタ臭いのもふしぎな魅力だ。
画家は90年代なかばにイタリア旅行をしたらしく、シエナの風景などに取材した小品が数多く展示されていた。
その際の蓄積は大作にも反映されている。
筆者は最初に「宙を超えて 追憶」を見た際、ふと、有元利夫のことを思い出した。たしかに、初期ルネサンスふうたたずまいという点では共通する雰囲気があるが、しかし、画面はまったく異なる。この作品は、城塞に囲まれた、建物の密集する都市を描いたもので、人の姿はない。
しかし、人間が描かれていない絵は彼の作品ではむしろ例外で、続く「宙を超えて 遙かな夢」では、白いスカートの少女が横たわる姿が描かれるとともに、手前にはドゥオモのような建物が配されている。イタリア的な遠い地へのあこがれが、日常とないまぜになって構成されたこのあたりの作品は、かなりの高みに達している。
あらためて早世の惜しまれる画家だと思った。
出品作は次の通り。特記しないものは油彩。
自画像II F10、72年
自画像I F8、70年
車窓からの風景 F6、96年
灰皿のある静物 F8、74年
林檎 F6、2000年
母と子 F100、70年
マイ・コレクション F100、79年
ショーがはねて F100、86年
川辺の椅子 F6、85年
赤いドレス P20、85年
浮遊する婦人像 F8、06年
静寂 M50、85年
遙かな夢 P10、01年
万華鏡 F30、06年
カーニバルの終わり F100、87年
ショーがはねてII F100、87年
幕間 S80、88年
何処へ I S80、90年
何処へII S120、91年
追想 S80、91年
メモリー S30、05年
宙に向かって F100、93年
丘の上の街-イタリア F8、95年
シエーナ 旅情 F4、95年
黒衣の少女 F6、73年
ラ・フランスのある静物 P4、05年
ランプのある静物 F8、74年
コーヒーミルのある静物 F6、85年
函館の夏 F8、78年
絵を描く婦人 F3、86年
シャルトル風景 F1、84年
追憶の街 SM、02年
パリの夢 F4、85年
シェーナのドォーモ F6、96年
手稲山遠望 F6、97年(※メモの字が汚くてちょっと自信ないです。すいません)
静物、右手のある F4、05年
アッシジの街角 F8、95年
扉 F4、85年
二体の人形 F4、85年
小さなピエロのいる静物 F6、81年
林檎三個 F3、2000年
青いチョッキの少女 F6、85年
シェーナの広場 F6、96年
ブルージュ・運河 F8、85年
赤い服の人形 P6、85年
滝川の川辺・冬 F20、85年
宙を超えて-街 F100、94年
宙を超えて-旅人 F100、95年
宙を超えて-黙する物たち F100、96年
宙を超えて-追憶 F100、98年
宙を超えて-遙かな夢 F100、01年
宙を超えて-遠い記憶 F130、04年
宙を超えて-くり返される問い F130、03年
遠い記憶 F100、08年
春を待つ F10、01年
日覆いのある店先 F8、92年
少女、ブルージュを背景に F10、85年
・淡彩
冬の港 26.7×14.5センチ 81年
シェーナ風景 21.5×14.5センチ 94年
シェーナの大聖堂 21.5×14.5センチ 94年
北の海 冬 23.5×16.3センチ 83年
・デッサン
眠る子 40.5×31.0センチ 00年
輪舞(ロンド) 40.5×31.0センチ 00年
ベネチア・ゴンドラ 35.0×23.2センチ 94年
2010年4月26日(月)~5月1日(土)10:00~6:00(最終日~5:00)
札幌時計台ギャラリー(札幌市中央区北1西3 地図A)
■廣澤正俊さん死去 (2008年)