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「絵画の場合 -最終章-」は「やや散漫になっ」てなどいない

2012年04月28日 23時26分43秒 | つれづれ日録
 北海道新聞夕刊の文化面に年4回、「季評 美術」という批評文が掲載されている。
 文化部や東京報道センターの記者ももちろん美術関係の記事を書いているのだが、その足らざるを補い、やや長いスパンからその時期開かれていた展覧会やニュースを総合的に取り上げてもらおうという趣旨なのだと思う。
 執筆者はけっこう短い周期で入れ替わっているが、これまで美術館の学芸員が執筆しており、現在は道立近代美術館学芸副館長の佐藤友哉氏が担当している。

 ことしの第1・四半期は、4月24日の夕刊に掲載された。

 メーンでとりあげているのは「花田和治の色と形」展や渋谷栄一展などで、そのこと自体に異論はないが(もっとも、花田展の会場は、佐藤友哉氏の職場であり、しかも、開催に当たっては佐藤氏が関与している可能性があるから、文句をつけようと思えばつけられるが、いまはそのことは措いておく)、筆者がひっかかったのは、末尾に近いあたりにあった次のくだりである。
 
 このほか「絵画の場合2012―最終章―」(3月14日~4月1日、札幌・ポルトギャラリー)、第11回を迎えた「サッポロ未来展」(3月19~24日に札幌時計台ギャラリー、28日~4月1日に市立小樽美術館)などあったが、いずれも前回と比較するとやや散漫になった印象を受けた。それぞれの作家の今後が期待される。
(引用終わり)

 このブログでは、筆者自身が「絵画の場合」展に深くかかわってきたという経緯があり、なかなか客観的な評価がしづらい事情もあり、同展覧会の総括めいた文章はまだ掲載していない(単に怠慢で遅れているという説もあるが)。
 しかし、それはそれとして、ここに引用した文章は、端的に言って事実誤認ではないかと思えてならない。

 先頃の「絵画の場合2012 最終章」が、前回に比べて多様性を欠いたという批判であれば、それは甘んじて受けられると思う。
 しかし「散漫」というのは、はっきりいって、逆だろう。

 「絵画の場合」という題のグループ展だが、これまでは、インスタレーションやコミュニケーションアート的な作品もけっこう多かった。
 今回は、いわゆるタブローの枠からはみ出した作家は2人だけで、いままでで最も落ち着いているというか、おとなしい、絵画に特化した印象を与える展覧会になっているというのが、ふつうの感覚ではないか。

 佐藤氏が、絵画史的認識の上に制作の苦闘を続けている絵画の場合展よりも、マニエリスム的な精緻さや多様性を繰り広げる「北海道現代具象展」第5回展の方を高く評価することそれ自体は、ここでうんぬんしようとは思わないが、だけど「散漫」は違うと思うなあ。


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