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長岐和彦さん死去(上川管内美深町、画家)

2022年08月27日 09時44分06秒 | 情報・おしらせ
 白を基調とした抽象絵画やガラス絵で知られ、アートによるまちおこしにも積極的に取り組んできた上川管内美深町の画家、長岐和彦(なが き かずひこ)さんが亡くなりました。69歳でした。

 地元の文化センター「COM100」でガラス絵の個展を終えたばかりであり、この悲報は信じられません。

 長岐和彦さんは1996年の道展で協会賞(最高賞)を受賞し会友に推挙され、2000年には会員になりました(2019年に退会)。
 白や灰色を主調にした正方形の画面に、黒やさまざまな色の矩形や線が飛び散る抽象画は、筆者のようなしろうとにはやや難解でしたが、非常に理知的に画面を構築していく緊張度の高いものでした。
 たしか、96年当時は大同ギャラリーが企画展として、その年に三大公募展で受賞した人たちの展覧会を開いており、長岐和彦さんが受賞のインタビュー時とはうって変わって、蝶ネクタイ姿でおちゃめに登場したのに、驚いた記憶があります。
 1999年と2001年にはニューヨークでも個展を開き、そこで得た手応えも生かして新制作展にも出品しました(こちらも退会)。
 ニューヨークでは2000年、02年にグループ展に参加しています。

 また、旭川地域の道展会員とともに絵画グループ「ローギュラート」を結成、旭川や札幌で展示を行いました。
 晩年は、カナダで習得したガラス絵の制作・発表に取り組んでいました。


 長岐さんの本職は町職員で、教育委員会時代には、複合文化施設である「COM100」開館に向けて奔走しました。
 町議会事務局の事務局長(これは、几帳面で、かつ柔軟性がなければ務まらない要職)の後、退職し、町議を1期務め、一般質問を再三行うなど熱心に活動していました。

 長岐さんのすごいところは、画風から想像されるような「孤高の抽象画家」では決してなく、町内のふつうのおばさんたちと、田舎のファッションショーみたいなイベントを企画して何度も開催したり、「美深アートシーン」と銘打って、町内外の画家・美術家に声をかけて展覧会を複数回、それも手弁当で企画・実施していることです。
 札幌、旭川、ニューヨークで自分の絵を発表すればいいや、というのではなく、過疎化(木材不況や国鉄赤字ローカル線問題)に悩むわがマチの活性化にも真剣でした。

 
 筆者が長岐さんに会ったのは2019年が最後です。
 このときは別件で美深を訪れていたのですが、ばったりお会いして、誘われるがまま車に同乗し、町内のCOM100などを案内してもらいました。
 その後、ご自宅に招かれてコーヒーをごちそうになりました。
 家は、クールな長岐さんらしく、非常にきれいに整理整頓されていたのを覚えています(モデルハウスのように、生活感が薄いというか、モノがぜんぜん無い!)。
 一方で熱心な野球ファンでもある、米国メジャーリーグやファイターズの記念グッズなどが飾ってあったのでした。


 最後の個展については、数日前の北海道新聞に記事が載り( https://www.hokkaido-np.co.jp/article/719470 )、共同通信社のサイトにも転載されました。

 独自の技法でガラス絵を描く画家。和紙やアクリル絵の具で下地を作った板に、細かく砕いたガラスを接着して描く。

(中略)

 2019年に町の友好都市、アシュクラフト村(カナダ)でグループ展を開いた際に、現地のガラス工芸作家に出会い、即興で作品を作った。油絵とは違う、ガラス独特の表現に魅了され、制作をスタート。

 ガラスの粉末や破片を一つ一つ貼り付けるため、制作には最長で2カ月を要したこともあるという。「光の当たり方でさまざまな色が出る。その出合いは一期一会です」と魅力を語る。</blockquoute></dev>


 ご冥福をお祈りするとともに、これを読んでいる皆さんには、できるだけ長生きしてくださいと、言いたいです。

 通夜 27日 午後6時
 告別式 28日 午前10時
 喪主 長岐和典

 会場はいずれも
098 2227 中川郡美深町北町11番地 日蓮宗 正法山 妙顕寺
です。


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