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■「トット商店街」をさっぽろ雪まつりで見てきた

2017年02月10日 23時59分59秒 | 札幌国際芸術祭
 札幌国際芸術祭の参加アーティストである岸野雄一さんが、さっぽろ雪まつり・大通会場の大雪像「トット商店街」で芸術監督を務めるというので、見に行ってきました。




 大雪像は、日本のテレビ史の生き証人黒柳徹子さんをテーマにしたもの。
 黒柳さんが抱えて舞い降りてきた大きなテレビに、音楽とともに映像を投影します。

 とはいっても、近年流行のプロジェクトマッピングとは趣が異なり、ローテクなところがいいんですね。

 スクリーンのように平滑な雪像の表面をメインに映像が映し出され、その周囲にも時折カラーの映像が映し出されますが、メインのほうはモノクロの、幻燈ふうの素朴な映像が多いです。
 そして、その前を、動物などの影が往来するのですが、それはプロジェクターの前で人形を実際に動かしているものの影なのです。

(ちなみにナレーションは黒柳さんご本人です)




 商店街の春夏秋冬という章立てですが、夏の途中からは、影絵を動かしていた岸野さんと犬が舞台の上に飛び出してきます。

 これといったストーリーはなく、四季の移ろいがなんともほのぼのとした短編劇でした。



 ただ、ここで表現されている「四季」を、筆者はいささか複雑な思いを抱きながら見ていました。

 わたしたちは子供のころから、テレビや図鑑、絵本などで、とくにお正月を中心に「日本の四季の移り変わり」に触れます。
 しかし、それは決して「わたしたち自身が体験する季節」ではないのです。 

 もちろん、年越しそばや鏡餅といった風習は共通しています。
 しかし札幌で、門松をたてている家はほとんどないし、屋外で新年早々羽根つきやたこあげをしている人を実際にこの目で見たことは一度もありません。
 羽根つきやたこあげは、テレビや漫画などのメディアの中にしか存在しない「日本の四季」なのです。

 この「トット商店街」にも、そういう、北海道とは関係のない「日本の四季」がところどころに出てきます。

 お正月もそうですし、「秋」の記号である柿の木もそうです。
 夕焼け空に、柿の実がなった木の枝にカラスが止まっている情景を見ると、「秋だなあ」と感じると同時に、自分の血肉となった体感ではなく、後天的に学習した「秋の情景」だなあという思いも湧き上がってくるのです。


 筆者は「本州の四季を押し付けるんじゃねえ!」
などと叫ぶほどの了見の狭さは持っていません。
 まあ、こんなもんだよな~、北海道だしね、と思います。

 北海道らしさと、北海道らしくないところ。
 道外から多くのアーティストと観客が集う国際芸術祭にあっては、そういう「内」と「外」がせめぎあうことで、新たな価値や表現が創出されていくのかもしれません。


(カワクボさんの「札幌ループライン」は別項)


2017年2月6日(月)~12日(日)午後5時15分、6時、7時、8時の4回
さっぽろ雪まつり大通会場・大通公園5丁目(中央区大通西5)


http://siaf.jp/event/totto-mall





札幌ループラインに続く)


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