北海道美術ネット別館

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■N.P.Blood 21 vol.9 會田千夏展 (12月18日まで、北見)

2011年12月06日 22時23分06秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 北海道と東北の若手美術家を紹介する「N.P.Blood」シリーズも5年目。
 今回も、同時に2人の個展を開く形式になっており、札幌の會田千夏さんの絵画と、十勝管内中札内村の藤原千也さんの木彫を紹介している。

 このエントリでは、初日のアーティストトークも交えて紹介する。

 會田さんは、札幌大谷短大時代は、精緻な描写の人物画を制作していた。
 初期の4点が、この会場にも展示されており、モデルは自分自身。筆者はギャラリーたぴおで見ており、なつかしかった。

 同大専攻科などを経て、多摩美術大に編入したが、そこでカルチャーショックを受けたという。油彩を学びにきているのに、立体に色を塗ったり演劇に没頭している同級生がいたのだ。
 「自分でしかできない表現ってなんだろう」
と考え、まったく絵が描けない時期が続いた。

「ともかく具象や人物を組み立てていく考えから抜け出さなきゃいけないな」
と決め、人物と背景をいったん切り離したらどうなるだろう、という考えに至ったのが2004年以降の作品である。

 彼女の代表作ともいえる「katarijima」シリーズについては…。

「いろんなかたちのものが点在しているイメージだったのが、一つの大きなものが増殖して、下の方が朽ちていく、それが養分になってまた大きくなっていく-というイメージに変わっていった。自分とは別のもの、という感覚から、自画像みたいな感覚や気持ち、意識はしていないかもしれない気持ちを描いている」

「(自分の抱いているイメージを)実物大で描きたい、ひとつのかたちで区切るんじゃなくて、ほんとの大きさで見てもらいたいと考えたら、大きくなっていました」

 霧のような、湿った大気のような、ふしぎな世界を描く會田さんも、ことし3月の大震災に大きな衝撃を受けてしばらく絵筆を執れなかったという。

 会場にあった、彼女の自筆の文章。

 harucoは、今迄の私の絵の中で、一番穏やかな性格を持ったキャラクターだと思っています。また、そういう穏やかな願いを持ちながら描こうとした絵でもあります。
 この絵を描き始める一ヶ月ほど前に、あの大きな災害がありました。毎日、凄まじい惨状を報道で知る中、こんなとき、絵を描いているものなんて何の役にも力にもならないと感じ、絵を描く気持ちにもなれませんでした。
 6月の全道展が近づき、展覧会の為の作品を描かなければなりませんでした。描こうと決めたのは、どんなに寒くても辛くても、必ず訪れる春のカタチでした。氷が解けて、温まった土の匂い、一番に芽吹いた可愛い黄緑を感じる生活が必ず戻ってくると、願っています。


 事前に、今回はほとんど既発表作で、新作は札幌芸術の森美術館に展示している、という話を聞いていたが、「haruco」のような新作に接することができて、良かったと思う。

 幻想的で、彼岸的な世界を展開しているように見えながら、鑑賞者がいろいろな思いを自由に託すことができるという一点で、現実世界とのつながりを強く有しているのが、會田さんの絵画なのかもしれない。
 會田さんの絵画は、一見現実離れしているかのようでいて、実は、わたしたちの世界をうつしているのだ。


 出品作は次の通り。
・2002年
旅の入り口(194×97)
雨の日の自画像(194×97)

・2003年
そして、風は止む(162×130.3)
昨日、蟲達の囁きを聞いた、、、(91×91)

・2004年
katari-jima 2004.7(116.7×91)
katari-jima 2004.8(80×220 3枚)

・2005年
katari-jima 2005.1(259×194)
katari-jima 2005.1.12(194×194)
katari-jima 2005.5(240×240)
katari-jima 2005.7.7(300×80)

・2006年
momoco 2006.6(162×130.3)
katari-jima 2006.11(220×400)
考える根(16.1×11.6)※

・2007年
sun people 2007.6.13(162×130.3)

・2008年
sun people 2008.6.1(72.7×60.6)
sun people 2008.10.21(53×45.5)
train 2008.1.16 (45.5×38、53×45.5、45.5×38 3点組み)
train 2008.6.11a(162×180)
train 2008.6.11b (162×180)
windpipe-sleety 2008.11.18.a (91×72.7)
windpipe-sleety 2008.11.18.b (91×72.7)
windpipe-sleety 2008.11.18.c (91×72.7)

・2009年
katari-jima 2009.5.11 (116.7×80.3)
katari-jima 2009.6.8.a (72.7×50)
katari-jima 2009.6.8.b (72.7×50)
katari-jima 2009.6.10 (162×162)
an only chile 2009.1(20×20)※
眠らないもの達 2009.9.a(14.5×10)※

・2010年
portrait 2010.6.28 (162×162)

・2011年
portrait 2011.3.13(90×90)
haruco 2011(194×162)
※は鉛筆、ドローイング。ほかはすべて油彩、パネル


2011年11月19日(土)~12月18日(日)9:30~5:00(入館~4:30) 月曜休み。11月24、29日も休み
北網圏北見文化センター美術館(北見市公園町)

vol.9とvol.10をあわせて:一般600(500)円・高大生300(200)円・小中生100(50)円。
かっこ内は10人以上の団体料金

●初日午前10時、最終日午後1時半からアーティストトーク(要観覧券)

●ワークショップあり

 1980年、札幌生まれ。
 99年、全道展初出品、2003年協会賞、04年奨励賞、05年全道展60周年記念賞、09年会友賞。
 2010年には、JRタワーアートプラネッツ2010優秀賞。

 主な個展
會田千夏展(2004年、札幌/ギャラリーたぴお)
會田千夏展~Katari-jima~(2005年、東京/ペッパーズ・ロフト・ギャラリー)
會田千夏個展“SNOW WHITE”(2008年、東京/不忍画廊)
Chinatsu AITA Exhibition at Mt.HARUKA(2008年、小樽/Dala Space)
會田千夏個展 (2009年)
會田千夏個展■會田千夏小品・ドローイング展(2009年)
“portrait2010.3.24”(2010年、札幌/きのとやcafe)
第20回道銀芸術文化奨励賞受賞記念 會田千夏展(2011年、札幌/らいらっく・ぎゃらりい)

 主なグループ展・他
2005 第1回寒昴展(ギャラリーどらーる/札幌)
   第24回損保ジャパン選抜奨励展
2006 New Point vol.3(大同ギャラリー/札幌)以降、毎年出品
   札幌美術展「幻想の刻 永遠の夢」(札幌市民ギャラリー)
   3colors(不忍画廊/東京)
   アイアンフェスタ2006企画展「霞」(新日鉄体育館/室蘭)
   A☆MUSE☆LAND☆2007 “BEATIFUL DREAMER”(北海道立近代美術館)
2007 VOCA展2007(上野の森美術館/東京)
   D.E.P2007(不忍画廊)
   樽前arty2007(工房LEO/苫小牧)
   TCAF2007(東京美術倶楽部/東京)
2008 霞inたぴお(ギャラリーたぴお)
   アートフェア東京2008(国際フォーラム/東京)
   号外・樽前arty(苫小牧市文化交流センター)
   ASIA TOP GALLERY HOTEL ART FAIR 08(ニューオータニ東京)
   法邑芸術文化振興会企画展【滲-shin-】
2009 絵画の場合(ギャラリーエッセ/札幌)


=以下、画像なし
さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展(2009年7月)
44th 札幌大谷大学・札幌大谷大学短期大学部同窓会美術科 谷の会展(2009年6月)
法邑芸術文化振興会企画展【滲-shin-】 (2008年10月)
第63回全道展(2008年6月)
企画展「07-08展」
第13回さいとうギャラリー企画 夏まつり「風」パートII (2007年)
New Point Vol.4(2007年)
會田千夏、久保綾乃 二人展「ビオトープ」(2006年)
05→06展
第58回全道展(2003年)
第57回全道展(2002年)




・JR北見駅から約1.7キロ、徒歩22分
・JR柏陽駅から約1.4キロ、徒歩19分
・北海道北見バス「1 小泉8号」行きに乗り「野付牛公園入口」で降車、約400メートル、徒歩5分
(この路線は日中15分間隔で運行)




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