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■スウェーデンのすてきな芸術一家 リサ・ラーソン展 (2018年4月1日~6月10日、札幌)

2018年06月06日 11時09分00秒 | 展覧会の紹介-工芸、クラフト
(6月7日、画像を追加しました。)

 陶芸展というのは、時としてにわかアートファンにとっては敬遠したくなる対象だ。●●焼とか▲焼とかの区別ができないとしろうとだとさげすまれそうな気がするし、題名は何だろうと思ってパネルを見ると漢字が10個も続いてどう読むのかわからないことも多い。
 その点、この陶芸展は気楽である。パネルには「陶器」と書いてあるけれど、皿や花瓶といったいわゆる「うつわ」は全体の2割ぐらい。ほとんどが、人間や猫などのオブジェ(置物)なのだ。
 猫の目つきは、ムーミンシリーズに登場するミイみたいだし、女の人が男性をバーベルみたいにえいやっと持ち上げている「社会討論」など、理屈抜きで楽しい。いずれも、器としての用途をはなから考えていないので、むつかしい決まり事などもない。
 いろいろめんどうなことを考えずに見ることができる展覧会も、ときには悪くないと思う。


 しかし、そこがこの展覧会の、ツッコミどころでもある。
 かいつまんで言うと、リサ・ラーソンの作品そのものは楽しいのだが、それが現代の美術史、工芸や陶芸の歴史のなかで、どういう位置づけなのかが、この展覧会を見ているだけではよくわからないのだ。

 現代アートや絵画であれば、美術史をめぐる言説が世の中にはあふれていて、いま目の前の作品がどういうものであるのかは、判断のとっかかりがある。
 しかし、陶芸分野となると、日本国内はかろうじて歴史的な流れを追うことは可能でも、海外を含めた展開については学ぼうにも学ぶすべが乏しすぎる。
 だいたい、リサ・ラーソンとルーシー・リーとバーナード・リーチ以外にどんな陶芸家がいるのかすら、よく知らないのは不勉強な筆者だけなのか。

 彼女は日本の陶芸も好きらしく、四角い花器の釉薬のかけ方など、濱田庄司の影響が明らかだ。
 影響といえば、長くつしたのピッピの主人公の作品が今回出ていたが、彼女の髪型は、高畑勲監督のアニメ「パンダコパンダ」のみみちゃんによく似ている。


 この展覧会のもうひとつの特徴は、物販である。
 いつもならロビー近くのミュージアムショップで図録や関連商品を売っているのだが、今回は、展示室の一部を販売コーナーにあてている。
 したがって、入場券のない人は、関連商品を買うことができない。この形式は筆者は初めて見た。
 物販コーナーはにぎやかで、リサ・ラーソンの陶芸作品はもちろん、トートバッグ、手ぬぐい、菓子、ノート、クッションなど実にいろいろなものが売られていた。作者本人の実際の作品が、1万円台で入手できるというのは、美術館の展覧会ではふつうあり得ないことだ。
 もっとも、このコーナーに並んでいる陶芸作品は、「リサ・ラーソン作」といっても、彼女が一から十まで制作したものもあるかもしれないが、当初のデザインのみを彼女が手がけて、実際の量産作業や焼成はほかの人が携わっているのではないだろうか。もちろん、それも「リサ・ラーソン作」であることに間違いないのだが。

 リサ・ラーソンは1931年生まれのスウェーデン人。 
 展覧会には、画家の夫や、娘の編み物なども展示されている。
 総じて、ハッピーな展覧会であると思う。


2018年4月1日(日)~6月10日(日)午前9時45分~午後5時(6月は~5時半)、入場30分前まで。4月の月曜のみ休み
札幌芸術の森美術館(南区芸術の森2)




・地下鉄南北線真駒内駅バスターミナル2番出口から中央バスに乗り継ぎ「芸術の森入り口」降車

一般千円(900円)、高校・大学生700円(600円)、小・中学生400(300)円、小学生未満無料
※( )内は20人以上の団体料金
※65歳以上の方は当日料金が900円(団体800円)


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