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■尾形香三夫追悼展 (2023年4月1日~5月5日、岩見沢)

2023年05月03日 20時33分45秒 | 展覧会の紹介-工芸、クラフト
 驚くほど精緻な練上技法による壺や皿などを手がけ、米国や香港などでも高く評価されていた岩見沢市の陶芸家、尾形香三夫さんの、市内初の個展は、残念ながら遺作展になってしまいました。
 尾形さんは昨年夏、亡くなりました。

 冒頭画像、左側に、赤い地に作品写真がたくさんあしらわれている大きな布が貼ってあります。
 これは和服の裏地だそうで(実物は隣室に飾ってあります)、一番下の、尖端がとがっている物と、中央の、開口部分にもしのぎ模様が施してある作品の2点が、最後の作品とのこと。
 
 毎年のように札幌で個展を、最初は大同ギャラリーで、のちにさいとうギャラリーで開いていた尾形さん。
 遺作展というのはさびしいものです。これまで、当たり前のように毎年見てきた作品が、もう見られなくなるから。
 会場にやって来た奥さまの美幸さんによると、7月に香港で最後の遺作展があるそうですが、国内ではしばらく展示の予定はないとのこと。

 色の異なる粘土を細かにつなぎ合わせ、めくるめく模様をつくりだす、いわば「尾形マジック」を目の当たりにするのも、これが最後になるのでしょうか。

 これらの中から1点だけでも、いま道立近代美術館で開催中の「トリック×イリュージョン!」展に並んでいたらいいのになあと、思いました。
 実際には平らな面でも、目の錯覚で波打っているように見えます。
 かと思えば、陶板では実際に波打っているものもあります。
 
 
 次の画像は、真ん中のパーツのうち、左上から下に突き出ている部分と、右下から上に突き出ている部分の色が実は同じだそうです。
 どう見ても左上の炎のような形のほうが、灰色が薄く見えます。
 
 
 その次は、会場でいちばん古い作品。
 まだ独自の練り上げ技法にたどり着く前のもので、初期に尾形さんが取り組んだ、表面にひび割れを入れる技法により作られました。
 
 
 隣室には、焼成前の壺が3点陳列されていました。
 うち1点は素焼きのみが終わっているそうです。
 焼く前でも、意外と色合いが分かるものだなあと思いました。

 美幸さんのお話では、ほんとうに最期の仕事は箱書きだったそうで、病室に箱と筆を持ち込んで書いたこともあったそうです。

 会場で無料配布していた、美幸さんの筆になる「尾形香三夫創作の軌跡」も必読。
 かつて「幻化げん げ 文」という題を見て、梅崎春生だな~と思った記憶がありますが、尾形さんは若い頃小説家を目指していて、特に梅崎春生の「幻化」が好きだったそうです。<自分が小説に没頭していたあの時と、陶芸とが図らずも融合した事にとても喜んでいました>と書いてあります。
 そして<最終的に行きついた本は、ニーチェ、老子、荘子といった哲学でした>とも。

 尾形さんには個展会場では何度も会いましたが、本の話は一度もした記憶がありません。
 重ね重ね、残念です。

 残念といえば、長男でロックボーカリストの尾形回帰さんが4月29日、会場でギャラリートークと弾き語りしたそうで、これは行きたかったです。


2023年4月1日(土)~5月5日(金)午前10時~午後6時、水曜と4月30日休み、木曜は午後1時30分から
岩見沢市絵画ホール・松島正幸絵画館(岩見沢市7西1)
一般210円、高大生150円(中学生以下無料)


□スーパー練上・尾形香三夫 https://ogatak-m.jimdo.com/

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06年の個展

03年の個展(画像なし)

02年の個展




岩見沢市絵画ホール・松島正幸記念館への道順(アクセス)

・JR岩見沢駅から約1.06キロ、徒歩14分

・中央バスの都市間高速バス「高速いわみざわ号」に乗り「市民開館前」から約620メートル、徒歩8分、「4条西5丁目」から約660メートル、徒歩8分。終点岩見沢駅ターミナルからは約1.1キロ、徒歩14分


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