シンプルな女性の坐像や、明るい色面構成による版画などで知られる札幌の西村さんは、毎年この時期に個展をひらいています。
画壇の傾向などとはまったく無縁に、ごく簡素な作品を生みだし続ける西村さんの絵は、見ていてほんとうに心がいやされる思いがします。
冒頭の画像は時計台ギャラリーA室の、奥の壁。
緑系の絵ばかり5点をならべました。
額のガラスにいくぶん反射が見られるのは、すいません。
やわらかくやさしい緑色の諧調が、ほっとさせます。
「坐っている人が見ている風景かもしれません」
と西村さん。
まったくの想像ではなくて、じっさいの風景をスケッチしたものがもとになっているのだそうです。
「最小の要素で最大の効果をあげたい」
と西村さんは話しておられました。
雑談の中で、話題は熊谷守一にもおよびました。
たしかに、西村さんの絵は熊谷守一に共通するものがあるように感じます。
ただ、熊谷の絵が、モティーフのまわりを黒い輪郭線で囲っていることが多いのに対し、西村さんの場合は、色面と色面の境目が絶妙なんです。
風景画を描く際に、たとえば山の稜線などに苦労した方は多いのではないかと思いますが、西村さんはふたつの要素をくっきりと区切るのではなく、輪郭線に頼るのでもなく、ちょうどいいあんばいに震える線がやさしく両者を分かち、画面に動きと落ち着きとを与えているのではないでしょうか。
いずれにせよ、これほどシンプルな画面で、絵にするのは、易しいようでいて、じつは相当にむつかしいものと思われます。
ずっと眺めていたい。そんな気にさせられる個展でした。
出品作は次のとおり。
「帰郷」88.0×171.6センチ
「月住山」20F
「雨上がり」15F
「山路」15P
「朝霧」「夜明け前」「回想」「空」「月と山と」「冬山」=以上10F
「山と星」「黄金山」=以上8F
「山に向いて」「夏の朝」「海峡」「雲」「静山」「月明かり」「静日」=以上8P
「月と山」「姉妹山」=以上6F
「青空」「静寂」「山と海」「浅緑」「静山」「胡国の山」=以上4F
「ある山」「山景色」「大月」「まるやま」「三日月」「月遠く」=以上SM
「山は美し」0号
「内なる風景-H」「内なる風景-M」「内なる風景-N」「内なる風景-K」「内なる風景-I」「内なる風景-J」「内なる風景-V」「内なる風景S-9」「内なる風景S-10」「内なる風景S-12」「内なる風景S-17」「内なる風景S-14」「内なる風景S-15」「内なる風景S-16」「内なる風景S-13」=以上版画
08年6月23日(月)-28日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
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