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■鵜川五郎小品展 (3月24日で終了)

2008年04月18日 23時19分16秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 以前も書いたが、道内の画家で、非常な力量の持ち主なのに全国での知名度が不当なまでに低い人は何人もいるだろうけど、あえてひとりだけ名を挙げよ-といわれれば、筆者は「鵜川五郎」であると言いたい。
 しかし、北斗市の旧上磯町の文化センターでひらかれた今回の小品展の、会場に置かれた芳名帳をめくってみても、ほとんどが地元の人ばかりで、札幌方面は皆無だった。美術館の学芸員の名もない。ひとり時代や画壇(中央も北海道も)から超然として、そして時代の狂気を静かに撃つこの画家に、誰かもっとスポットを当ててくれないだろうか。

 出品作の多くは1960-70年代のもので、鋭角の線でひかれた諷刺的なタッチ。当時の鵜川さんが描いていた油彩とも画風は共通する。あるいは、ベン・シャーンなどの影響があるのかもしれない。
 63年の「歳月」は抽象画のシリーズ。
 おなじ63年の「人間家族シリーズ」は、半円形に顔がデフォルメされた人間が大勢登場する。とくに諷刺対象が明示されているわけではないが、批評眼は鋭い。「旗よ!」はイデオロギーへの諷刺だろうか。
 65年の「ベトナム戦争シリーズ」は、声高に戦争の愚かしさを訴えるのではなく、ジャングルでのたうち廻る米兵への冷徹な視線が光る。

 72年の「黒い罠シリーズ」は、新聞の連載企画につけられたもの。新聞名は表示されていない。北海道新聞の函館支社のサツまわりが書いたのではないかと思うが、確証はない。
 興味深いのは、実際に新聞に印刷されているカットと、展示されている原画とが微妙に異なることだ。紛失に備えてもう1枚、おなじような絵を描いていたのかもしれない。

 最後は1996年の「最後の森シリーズ」「大野風景シリーズ」(92年)「木立や森シリーズ」(96年)。
 墨一色による深い世界だが、断じて水墨画ではない。
 わずかな濃淡の差によって、これほどまでに林や自然の実相に迫れるとは、驚くべき力量だと思う。


           

 画像は、旧大野町のせせらぎ温泉のロビーに飾られている油彩「北海道大野町風景シリーズ 栗の木の向こうの集落」。


 出品作は次のとおり。
 「歳月A」「歳月B」「歳月C」「歳月D」「歳月E」「歳月F」
 「人間家族A」「人間家族B」「対話」「双生児」「月影」「風船A」「風船B」「穴の中A」「穴の中B」「旗よ!」「旗」「不吉な影」「日向と日陰」「目撃」「祭り」「埋葬」
 「ベトナムの人」「ベトナムの森」「ベトナムの風」「ベトナム戦争」「ベトナムのカラス」「ベトナムのゲリラ」「ベトナムの山ひる」
 「ヒト」
 「漁師」
 「ヘルメット姿の兵士」
 「狙われたギャンブラー」「みじめな末路」「甘い斡旋」「虫けらと同じ」「家出の果て」「取り立て屋」「かっこよさへの幻想」「白い粉の圧力(1)」「白い粉への圧力(2)」「あなたもターゲット」「のさばる組織暴力」
 「最後の森シリーズA」「最後の森シリーズB」「最後の森シリーズC」「最後の森シリーズD」
 「風にそよぐ木々A」「栗の花咲く頃」「栗の花ざかり」「森」「栗木立」「カラスの森」「風にそよぐ木々B」「バイパス沿いの木立」「北稲里東外れの木」「本町東裏の林」「丘のアカシヤ」「馬頭観音の栗並木」「森の秋」「栗の木立の森」「駅裏の夏の木々」




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