小樽拠点、あるいはゆかりの美術家が毎年開いているグループ展。
昨年までの12人展から人数が1人増えたのは、日本画のさとう綾子さんが加わったためだ。
ほかの12氏は変わっていない。会場の市民ギャラリーは2部屋に分かれているが、入り口側(南側)を江川光博、大谷美由起、末永正子、高野理栄子、ナカムラアリ、八重樫眞一の、抽象的な傾向の画家が多く占め、となりのスペースは、徳吉和男、羽山雅愉、坂東宏哉、深山秀子、福原幸喜、森山誠と、具象的な傾向が優勢。それぞれの作家が、長めのコメントを書いてかかげているのもおもしろい。
個人的には、広い意味での「風景」を描いている画家たちに興味を抱いた。
八重樫眞一さんは、広角レンズでとらえたように広い範囲の街路などを1枚の画面に収め、薄い絵の具で風の流れを感じさせる叙情性豊かな絵を制作しているが、今回の「カシオペア」は縦構図で、灯台がメインのモティーフ。背景の空は緑、白、紺が入りまじり、情感を醸し出している、あらたな展開だと思う。
八重樫さんの文章だ。
ほかに「森の風」「遠く近く」。
末永正子さんの「景」にも注目した。
10~15センチぐらいの長さの白い線が何度も反復して、ジーンズの拡大写真のように画面を覆っている。
純然たる抽象画なのだが、筆者の目には、列車の窓から見える風景の印象にしか見えないのだ。
変形横長の「並」も同じ。
紺色の地に明滅するように点在する白と緑の矩形は、まさに、車窓を通りすぎていくあかりや信号など、風景以外には見えない。
末永さんは同題の「景」「並」をもう1点ずつ出している。
道立近代美術館の企画展に出品するなど活躍めざましい高野理栄子さんは「Ame」シリーズを7点。銅版画や、銅版画とコラグラフの混合だ。机上の風景と、広大な屋外の風景が通底し合うユニークな画面は今回も変わっていない。
羽山雅愉さんは「Tの万年筆」「水の音」「T氏の眼鏡」の3点。
手前に万年筆などの物を配し、窓の向こうの、羽山さん得意の、幻想の中にある小樽風景へと、見る者の視線をいざなっていく。
福原幸喜さんは「三日月湖」「夏日」を出品。
オーソドックスな写実の風景画である。
こういう風景画は、今は意外と取り組む人が少ないし、福原さんは、観光地でもなんでもない風景をていねいに見つめてていねいに描いているので、好感が持てる。じつは、貴重な存在だと思う。
オーソドックスといえば、徳吉和男さんはもっとオーソドックスかもしれない。
松島正幸の衣鉢を継ぐような丸みを帯びたタッチと鈍い落ち着きをたたえた色調で小樽運河などに向き合っている。「春雪」「冬日」「初冬」「二月」「雪後」
先日の個展で大幅に画風を転換した森山誠さんは、それ以前の旧作「卓上-I」「卓上-II」を出品している。灰色の卓上風景である。
ベテランらしい感慨がコメントの文面ににじみ出ている。
坂東宏哉さんは大作「事象の地平線」1点のみ。
珪藻土を用いたダイナミックなマチエールと、青を基調とした抽象画で、いつもながら力強い。
さとう綾子さんは日本画。
題材は花、というと、よくある絵のように思われるかもしれないが、1輪を真っ正面からとらえているのが異例である。
2016年6月21日(火)~26日(日)午前10時~午後5時
市立小樽美術館市民ギャラリー(色内1)
□Gallery Ari (ナカムラアリさんのサイト)
【告知】WAVE 12人展 (2015年5月19~24日、小樽)
■40周年小樽美術協会展 (2008)=大谷、羽山、ナカムラ、末永さんら出品
■第39回小樽美術協会展 (2007)=羽山、福原、ナカムラ、末永さんら出品
■Color's 5 色彩からの絵画性-女性5人展 (2013)
■企画展「07→08」=以上末永さん出品、画像なし
■New Point vol.12 (2015)=高野さん出品、画像なし
■高野理栄子展 "Ame" (2014)
■New Point Vol.11 (2014)
■モーション/エモーション 活性の都市 (2016、画像なし)
■羽山雅愉油彩・パステル展 (2013)
■第5回 北海道現代具象展 (2012、画像なし)
■羽山雅愉展 1(2009)
■第39回小樽美術協会展(2007年)
■具象の新世紀(2002年、画像なし)
■WAVE NOW 2014
■第44回 北海道教職員美術展(2014=写真なし)
■PLUS ONE THIS PLACE (2010)
■PLUS 1 Groove (2009年8月)
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 谷口明志 坂東宏哉 大島潤也 ダム・ダン・ライ(2009年8月)
■two members of PLUS 1 千代明・坂東宏哉(2008年)
■PLUS1 groove(07年8月)
■グループ・プラスワン展(06年)
■5th グループ・プラスワン(04年)=以上、坂東さん出品
■森山誠個展 (2016年6月)
■TAPIO LAST 終章 (2016年4月)
■森山誠個展 (2016年2月)
■自由美術北海道展 (2014)
■森山誠個展(2010年)
■自由美術北海道グループ展(2008年)
■2008年の個展
■自由美術/北海道グループ展(2007年)
■自由美術北海道(2006年)=画像なし
■2006年の個展
■2004年の個展
■あひる会絵画展(2004年)
■自由美術北海道展(2003年)
■自由美術北海道グループ展(2002年)
■森山誠個展(2002年)
■森山誠展(2001年)
■自由美術北海道グループ展(2001年)=画像なし
■第1回グループ水煌(すいこう)(2007)=深山さん出品
■深山秀子展(2004)=以上画像なし
■第81回道展 第51回北見移動展 (2012)
■八重樫眞一個展 (2008)
■八重樫眞一個展(2001)
=以上画像なし
昨年までの12人展から人数が1人増えたのは、日本画のさとう綾子さんが加わったためだ。
ほかの12氏は変わっていない。会場の市民ギャラリーは2部屋に分かれているが、入り口側(南側)を江川光博、大谷美由起、末永正子、高野理栄子、ナカムラアリ、八重樫眞一の、抽象的な傾向の画家が多く占め、となりのスペースは、徳吉和男、羽山雅愉、坂東宏哉、深山秀子、福原幸喜、森山誠と、具象的な傾向が優勢。それぞれの作家が、長めのコメントを書いてかかげているのもおもしろい。
個人的には、広い意味での「風景」を描いている画家たちに興味を抱いた。
八重樫眞一さんは、広角レンズでとらえたように広い範囲の街路などを1枚の画面に収め、薄い絵の具で風の流れを感じさせる叙情性豊かな絵を制作しているが、今回の「カシオペア」は縦構図で、灯台がメインのモティーフ。背景の空は緑、白、紺が入りまじり、情感を醸し出している、あらたな展開だと思う。
記憶の海。
日々の中でキラキラ光る
さざ波のような断片。
まだ来ない風は
かならずやってくるが
見えない不安に身構える。
くっきり、ぼんやり
連なる屋根のように心象の風景が
立ち上がる。
八重樫さんの文章だ。
ほかに「森の風」「遠く近く」。
末永正子さんの「景」にも注目した。
10~15センチぐらいの長さの白い線が何度も反復して、ジーンズの拡大写真のように画面を覆っている。
純然たる抽象画なのだが、筆者の目には、列車の窓から見える風景の印象にしか見えないのだ。
変形横長の「並」も同じ。
紺色の地に明滅するように点在する白と緑の矩形は、まさに、車窓を通りすぎていくあかりや信号など、風景以外には見えない。
末永さんは同題の「景」「並」をもう1点ずつ出している。
道立近代美術館の企画展に出品するなど活躍めざましい高野理栄子さんは「Ame」シリーズを7点。銅版画や、銅版画とコラグラフの混合だ。机上の風景と、広大な屋外の風景が通底し合うユニークな画面は今回も変わっていない。
雨足と同じ歩幅をとる
成長の連続で一旦凍結し氷晶をへて
再び融解する雨に会う
対象物とその空間を塗りつぶす青空の
これは何か。
色は匂い、
いつしか雨中に2つのサヴァイヴァーとなる。
直径0.5mm未満の雨粒を舌を出して唯味わう
羽山雅愉さんは「Tの万年筆」「水の音」「T氏の眼鏡」の3点。
手前に万年筆などの物を配し、窓の向こうの、羽山さん得意の、幻想の中にある小樽風景へと、見る者の視線をいざなっていく。
窓からの眺め
近頃は、窓から外を眺めることが
多くなった…。
若い頃は、他人の目が気になったが、
今は、自分の心の目が気になる…。
今日は、知人が居るわけでもないのに、
遠い被災地が眺められ、
その風景が
なかなか消えることがない
福原幸喜さんは「三日月湖」「夏日」を出品。
オーソドックスな写実の風景画である。
こういう風景画は、今は意外と取り組む人が少ないし、福原さんは、観光地でもなんでもない風景をていねいに見つめてていねいに描いているので、好感が持てる。じつは、貴重な存在だと思う。
オーソドックスといえば、徳吉和男さんはもっとオーソドックスかもしれない。
松島正幸の衣鉢を継ぐような丸みを帯びたタッチと鈍い落ち着きをたたえた色調で小樽運河などに向き合っている。「春雪」「冬日」「初冬」「二月」「雪後」
先日の個展で大幅に画風を転換した森山誠さんは、それ以前の旧作「卓上-I」「卓上-II」を出品している。灰色の卓上風景である。
およそ50数年
ただひたすら模索の中で
絵を続けてきた。
今ある私の絵は
その痕跡にすぎない。
絵という不可思議なものへの
執着が
私の絵のすべて
ベテランらしい感慨がコメントの文面ににじみ出ている。
坂東宏哉さんは大作「事象の地平線」1点のみ。
珪藻土を用いたダイナミックなマチエールと、青を基調とした抽象画で、いつもながら力強い。
さとう綾子さんは日本画。
題材は花、というと、よくある絵のように思われるかもしれないが、1輪を真っ正面からとらえているのが異例である。
2016年6月21日(火)~26日(日)午前10時~午後5時
市立小樽美術館市民ギャラリー(色内1)
□Gallery Ari (ナカムラアリさんのサイト)
【告知】WAVE 12人展 (2015年5月19~24日、小樽)
■40周年小樽美術協会展 (2008)=大谷、羽山、ナカムラ、末永さんら出品
■第39回小樽美術協会展 (2007)=羽山、福原、ナカムラ、末永さんら出品
■Color's 5 色彩からの絵画性-女性5人展 (2013)
■企画展「07→08」=以上末永さん出品、画像なし
■New Point vol.12 (2015)=高野さん出品、画像なし
■高野理栄子展 "Ame" (2014)
■New Point Vol.11 (2014)
■モーション/エモーション 活性の都市 (2016、画像なし)
■羽山雅愉油彩・パステル展 (2013)
■第5回 北海道現代具象展 (2012、画像なし)
■羽山雅愉展 1(2009)
■第39回小樽美術協会展(2007年)
■具象の新世紀(2002年、画像なし)
■WAVE NOW 2014
■第44回 北海道教職員美術展(2014=写真なし)
■PLUS ONE THIS PLACE (2010)
■PLUS 1 Groove (2009年8月)
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 谷口明志 坂東宏哉 大島潤也 ダム・ダン・ライ(2009年8月)
■two members of PLUS 1 千代明・坂東宏哉(2008年)
■PLUS1 groove(07年8月)
■グループ・プラスワン展(06年)
■5th グループ・プラスワン(04年)=以上、坂東さん出品
■森山誠個展 (2016年6月)
■TAPIO LAST 終章 (2016年4月)
■森山誠個展 (2016年2月)
■自由美術北海道展 (2014)
■森山誠個展(2010年)
■自由美術北海道グループ展(2008年)
■2008年の個展
■自由美術/北海道グループ展(2007年)
■自由美術北海道(2006年)=画像なし
■2006年の個展
■2004年の個展
■あひる会絵画展(2004年)
■自由美術北海道展(2003年)
■自由美術北海道グループ展(2002年)
■森山誠個展(2002年)
■森山誠展(2001年)
■自由美術北海道グループ展(2001年)=画像なし
■第1回グループ水煌(すいこう)(2007)=深山さん出品
■深山秀子展(2004)=以上画像なし
■第81回道展 第51回北見移動展 (2012)
■八重樫眞一個展 (2008)
■八重樫眞一個展(2001)
=以上画像なし