高齢者は処理速度が落ちるので要注意
2010-12-08 | 認知心理学
高齢者は処理速度が落ちるので要注意
高齢者の交通事故がどんどん増えている。若い頃に身につけた運転技能である。いつまでも運転できるはずとの思いは強い。この思いは、前述したように心理学的には間違いではない。しかし今度は、「ただし」と言う話しをしなければならない。
高齢になっても結晶性知能はあまり劣化しないのに対して、流動性知能は低下してくることはよく知られた事実である。
ところが最近の研究によると(ディアリ「知能」岩波書店の基づく)、これら2つの知能よりももっと根源に情報の処理速度の因子があるらしいことがわかってきたのである。そして、高齢者は、この情報処理速度が遅くなるがゆえに、知能全体、とりわけスピードを要求される流動性知能でより得点が低くなるらしいということがわかってきたのである。
言われてみれば当たり前のこの事実は、2つの点で重要である。
一つは、時間さえかけることができるなら、高齢者の知能劣化という事実は消えてしまうかもしれないということ。じっくりと時間をかけて解いてよいなら、問題解決でも高齢者でも若者に負けないくらいの力を発揮できるのかもしれないのである。
もう一つは、逆に、即応が要求される状況では、高齢者は能力的に太刀打ちできないということ。瞬間の判断と動作が随所で求められる車の運転のような状況は、高齢者にとっては非常にリスクが高いことになる。
この点を自覚できれば、高齢者も能力に応じた生活を楽しむことができるし、そうすべきだと思う。
「認知と学習の心理学」より