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危険予知————安全を先取りする

2021-04-02 | 安全、安心、
05/9/13

危険予知————安全を先取りする

●安全を先取りする
危険に遭遇してからでは間に合わない。かりに間に合っても、うまく対処できないこともある。そこで、あらかじめ想定できる危険の芽は摘み取ってしまおうというのが、危険予知の考えである。いわば、安全の先取りである。
むろん、こんなことが完璧にできるわけではない。人間の予知能力には限界があるし、状況のほうも時々刻々と変化し危険を潜在化してしまうからである。それでも、やらないよりはまし、さらに上手にやれば、危険回避には強力な方策の一つになることは間違いない。

●危険予知力を構成するもの
 危険予知力を構成する要素には「危険察知力」と「危険回避力」の2つがある。
 まず、危険察知力から。
 状況の中に潜在する危険を察知し、それへの対処をあらかじめ的確に予測できる力である。これも、さらに2つからなる。
一つは、しかるべき状況に入る前のオフライン危険察知力である。仕事をする前、スポーツをする前などに、想定内の危険を指摘できる力である。次章で取り上げるKYT(危険予知訓練)では、もっぱらこちらの予知力の養成を行う。危険との時間的、空間的距離が大きいのが一つの特徴である。
2つは、状況の中でのオンライン危険察知力である。今現在自分がいる状況の中で危険を発生する可能性を事前に察知する力である。最近では、現場力*の一つとして、その劣化が指摘されている。危険との時間的、空間的距離が小さいのが特徴である。
 危険察知力に加えて、危険回避力も大事である。
 必要に応じて想定される危険に応じて、それをどう回避するのがよいか、万が一、危険に遭遇してしまった時の適切対処を考えることができる力である。
オフライン危険察知での危険回避力としては、次の2つ。
・あらかじめ想定される危険の発生を押さえる対策を取る
・危険情報を共有することで危険回避行動を取る
オンライン危険察知での危険回避力としては、次の2つ。
・その発生を認識して周囲に報知する
・行為の中止、状況の進行停止も含めた危険の発生を押さえる適切な緊急行動をとる

●危険予知力を支える基盤能力
 危険予知は、すぐれて人の推論能力に依存しておこなわれる。その推測能力を支えるものとしては、次のようなものがある。
①危険についての知識
 どこにどんな危険が潜んでいるかについて、知識として知っているかどうかは、危険予知の質の基礎をなす。たとえば、雨中で夕方にどんな交通事故が多いのを知識として持っているかどうかである。当然、知識の有無によって、危険予知の内容は異なり、したがって、実際の運転も代わってくる。
②危険についての体験
 危険体験はヒヤリハット体験も含めても、それほど多くはない。多いとすれば、それは、自分か回りに何か問題があるので早急な点検が必要である。
危険体験は多くはないが、それでも、皆無という人もまれであろう。そこで、数少ない危険体験を危険予知に有効に活かす方策を考えることになる。
予期図式という考え方がある。危険予知に関する予期図式とは、過去の危険体験の結果として、眼前の危険を察知してそれに対処するための構造化された知識のまとまりである。この予期図式は、オンライン察知力と回避力の鍵となる。
予期図式は、しかし、教えられて身につく知識ではない。一種の勘のようなものである。長年にわたり、その状況(現場)で体験を通して作られる現場力の一つである。
③危険想像力
危険予知は、推論に加えて、これから起こるであろう危険についてあれこれと想像してみる力も必要である。状況を限定してもそこで起こるであろう危険のすべてをあらかじめ予知することは無理であるが、それでも想像力を働かせて、あれこれと危険について思いをめぐらしてみることは、無駄ではない。知識の活性化にも役立つし、危険に対する感受性を高める効果も期待できる。
④状況認識力
オンライン危険察知には、状況認識力は必須である。いつもと同じなのか、どこかに危険信号がないかを瞬時に見きわめる力である。予期
図式は知識駆動であるが、状況認識力は状況駆動である。いつもと機械の音が違う、何か臭う、といったような個別感覚ベースの認識と、さらに、状況全体をパターン(ゲシュタルト)としてとらえる認識とがある。

●残りはあと5行******
(K)

 
***
脚注
******
図 危険予知力の構成
        オフライン危険察知力
危険察知力  
    オンライン危険察知力
危険回避力

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 現場力
 製造業の工場長227人を対象としたアンケートの結果によると
(日経ビジネス2004年3月8日号)
「現場の力が落ちていると感じているか」と聞かれ
そう思うと答えた割合が、54.2%
「技術の伝承や教育体制の不備で、働く人に十分な知識や経験が与えられていない」と指摘した割合が、71.7.%。









第2.危険予知力の到達目標 <中学校>

 
「到達目標」
●危険察知力
○オフライン
・しかるべき想定される状況で、危険の存在とその内容を複数個指摘できる
・それぞれについて、対処、回避の仕方を複数個指摘でき
○オンライン
・実際の危険が存在する状況で、それを指摘できる
・周囲にそのことを知らせることができる

●危険回避力
○いくつかの状況において、みずから、危険予知行動ができる