月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

299.三木の中の異文化-三木の祭の国際文化的出来事-(月刊「祭」2020.9月6号)

2020-09-01 23:48:00 | 屋台・だんじり・神輿-組織、祭全体、社会との関わり-

●管理人はダブル(昔でいうところのハーフ)です。
 この祭関係の能書きを好き放題垂れ流していますが、きっと管理人の専門は何かとかになる方もいるでしょう(社交辞令で気になると言いましょう)。そこで、一応修士号(どこかの都知事みたいな詐称とワイロとコネでえたものではありませんが、あまり持っているからと言って「めっちゃ賢い」証明にはなりません。)を持っている「国際文化学」というものの話をしていこうと思います。
 
 その前に、管理人の秘密を。実は私、ダブル(昔でいうところのハーフ)です。といっとも、日本と韓国、日本とアメリカといったように2つの国家を跨いでのダブル(ハーフ)ではありません。
 播州三木明石町(大日町)生まれの父と、播州三木宿原村生まれの母との間に生まれたダブル(ハーフ)です。同じ三木市内、同じ三木中学校区、共に布団屋根屋台分布域ですが、その習慣は少しずつ異なります。
 例えば、屋台を担ぐ時に歌う伊勢音頭(祇園囃子)は、明石町(大宮八幡宮)は太鼓を3回打って1回休みのリズムで打たれます。しかし、宿原屋台(若宮八幡宮)は明石町とは旋律は違い、歌詞も違うものがあり、リズムは時々太鼓が2回の時もありずっとゆっくりです。宿原屋台関係者の若いお兄さんに聞いたところ三木で一番ゆっくりで、それが良さだといっていました。明石町は旧の「町方」であり、田んぼはありません。宿原は旧の農村で現在も田んぼがあります。なので、農村の宿原には「今年ゃ豊年どし」の歌詞があるけど、町方の明石町にはありません。元々同じ10月16日17日の祭でしたが、願うことも少し違うようです。
 
↑明石町の伊勢音頭
 
↑宿原の伊勢音頭
 
 同じ三木市内で、共に三段布団屋根の屋台で、共に「八幡宮」の祭だけど、屋台の所作から願うことまでそれぞれの文化は異なっています。2つの「異文化」の間に生まれた子どもという意味では、管理人もまた「ダブル(ハーフ)」ということになります。
 管理人の場合は明石町と宿原でしたが、例えば同じ明石町五町内でも大日町の母と清水町の父で生まれた子でも、大日文化と清水文化は異なります。同じ大日町でも一組と二組では違うし、同じ大日町の四組でもあの家とこの家では、、、といったように、この世の中の人は、ナメック星人でもない限り2つの異文化の間に生まれた「ダブル(ハーフ)」だといえます。
 
●国際文化学の英訳と「とほうもなく広い日本」
 国際文化学の英訳には、Intercultural Studiesという言葉が当てられています。管理人は、International cultural Studiesだと思っていたのですが、違っていました。そして、このInterculturalという言葉を選んだことで国際文化学たるものが、多様性を帯びた学問になると言えます。その説明のために、Intercultural, Internationalをそれぞれ、「国際」以外の言葉で訳してみます。
 
International cultural studies
•••国家際文化学
 nationalが国家という行政単位を表すので国家単位での相互文化・文化際の学問となります。
 
Intercultural studies•••文化際学
 culturalだとあらゆる文化を指すことができます。つまり同一国家内であっても異文化があるという前提で考えることになります。国際という字をあてていますが、国(くに)を邑(むら・くに)に変えることも可能でしょう。
 
 international cultural studies・国家際文化学は、intercultural studies•国際文化学・邑際文化学・文化際学の一分野にすぎないということになります。
 このinter cultural studiesという見方をすることで、日本という同一国家の中でも多様な文化が存在するという認識のもとに考えることができます。管理人の同窓生の一人は、バイクで日本一周を旅して「途方もなくひろい日本」と表現しました。飛行機、車、スマホで狭くなったように見えてもこの日本の中には、多様な文化が入り混じっておりそれぞれが個性を持っています。その個性を見つめて、それがお互いにどう影響しあっているのかを学ぶのが国際文化学です。



国際文化学的から見る三木の祭
例1 屋台の大宮八幡宮への伝播
 三木の大宮八幡宮では19世紀前半までは、檀鶴(だんづる・だんじり?)で芸を宮に奉納するのが基本的な秋祭のかたちでした。しかし、明治維新前後より現在のような屋台(太鼓台)と神輿の祭がさかんになってきます。
 これは、それより前にすぐ横の岩壺神社地域、久留美では屋台が担がれていた影響によると思われます。同じ播磨の国美嚢郡内での国際文化的な出来事です。
 
例2 反り屋根屋台の生成と伝播
 播磨西部では神輿屋根屋台が広く分布し、播磨東部では三段平屋根布団屋台が分布していました。その中間地、おそらく高砂市域あたりに、神輿屋根、平屋根のあいの子として生まれたのが反り屋根屋台です。
 
 

↑三木市三坂神社の加佐東屋台、三段布団屋根型


↑姫路市英賀神社英賀西屋台、神輿屋根型

↑高砂市曽根天満宮中筋屋台、反り屋根型
 
①華やかな反り屋根屋台は人気があり新調時作り替え時に反り屋根屋台がつくられたこと
②その屋台文化の中心地である高砂市の曽根が頻繁に新調を繰り返して中古の譲渡、転売が頻繁に行われたこと
 こな2つの理由によって、反り屋根屋台は平屋根分布地域やもともと屋台がなかったと思われる地域に増えてきました。三木市内でも下町屋台、大手屋台、新町屋台が昭和期に、興治屋台、細川の御酒神社屋台などが平成に反り屋根屋台となりました。
 これは、高砂市域と他地域で起こった播磨国内での国際文化的現象です。
 
例3 バッチの流行
 三木市内三木地区の祭の衣装は昭和期から平成初期、中期にかけてはニッカポッカなどの作業ズボンが主流でした。平成はじめころに、喧嘩などの防止の観点から、大宮八幡宮などでまずはズボンの色が白などに統一されはじめました。
 そして、平成中期ころから、インターネットなどで各地域の祭の情報を気軽に目にできることが増えました。そこで目にしたのが岸和田など泉州の地車祭ではかれているバッチです。

↑岸和田市弥栄神社大小路地車 バッチをはくのがこの地域のスタンダード
 
 この頃から、三木市内でもバッチを岸和田まで買いにいったり、ネットで注文する人が増えはじめ、現在は多くの人がバッチを好んではいています。また、三木市内でもバッチを扱う業者が出て来ました。
 しかし、完全に岸和田と同じになったわけではありません。
①依然作業ズボンの人もいること 
②岸和田のような細い袖の法被でないこと ③地下足袋とバッチの色が違う人がいること 
 などにより、岸和田とは違った祭衣装文化が生まれています。
 代表的な播州の祭地域である姫路や高砂のような「マワシ」、北条節句祭の着物は、着衣に手間がかかることから選ばれなかったと管理人は考えています。
 これも近年の三木の祭衣装文化に起きた国際文化的現象と言えるでしょう。
 

↑三木市岩壺神社芝町屋台 近年ではバッチをはく人が増えているが、作業ズボンの人もいる。法被の形が岸和田と違っていたり、地下足袋が違う色になっているので、岸和田とはまた雰囲気が異なってくる。
 
 
例4 三木の屋台構造、担ぎ方の広がり
 一方、三木地区の祭は規模の大きさや、大宮八幡宮の石段登りなどの影響か、一つのブランドとして認識され、他地域の祭に影響を与えるようになりました。
 また、芝町に屋台刺繍を扱う業者ができたこともあり、三木の祭の影響をうけた屋台や担ぎ方か増えてきました。播磨町阿閉神社の本庄屋台はその業者が屋台制作を手がけ、三木の屋台のように長めでよくしなる棒をつけました。上の芝町屋台に雰囲気も似ています。

↑播磨町阿閉神社の屋台
 
 
 明石市の屋台や加古川市八幡神社(宗佐厄神)の宗佐屋台では同様によくしなる棒だけでなく、担ぎ方もアヨイヤサーの掛け声をかけるようになりました。
 その一方で、宗佐屋台は同じ神社の屋台が神輿屋根型屋台であり衣装もマワシをしており、その屋台の練り子(担ぎ手)が手伝うことで、独特の祭りの風景が生まれています。加古川市がもともと赤以外の屋根の色の反り屋根が分布していたことにより、宗佐屋台の屋根の色も三木の屋台と違って昨年は黒くなっていました。
 
 
 
 これも播磨国の中でおきた国際文化的な出来事と言えるでしょう。
 
 こうして見ると、三木の祭は色々な地域の「異文化」の影響を受けて、元々の文化は変容するけど、その異文化と全く同じにはならない独自の文化を作り上げていることが分かります。
 
 
編集後記 -母校から消えた国際文化学-
 母校の龍谷大学は国際文化学部がなくなり、国際学部という名前は似てるけど全く性質の異なると思われる学部に変わってしまいました。就職対策など背に腹変えられない事情があってのことでしょうが、非常に残念です。ナショナル・国家間同士で考えるだけでは、限界があることからできたのが、カルチュラル・文化間で考える学問・国際文化学だったのに、、、また舞い戻ってしまいそうに感じました。後輩(国際学部の学生をそうみなせば)、先生方、職員の皆さまの奮闘と、国際文化学部の復活を強く望みます。
 
 
 
 
 


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