保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

木造船の頃・・・

2005-04-25 23:18:00 | 船頭
4月に入り、毎日好天に恵まれている京都・保津川。

太陽の下での仕事である保津川下りは、
いい天気が続くと来客数も比例して好調に推移します。

しかし、好天が続くという事はいい事ばかりではないのです。

好天続きになると川の水位がじわじわ下がり出します。
水位が下がると川底に止まっている岩が水面に顔を
出したり浅瀬の河原が一段と浅くなり通れなくなります。

顔を出した岩は船が通過する際、船底にぶつかり
船を痛ませるし、浅い河原は船にブレーキをかけ
下手したら船がその場に止まってしまいます。

今の保津川下りの船はFRP船といって、樹脂で造った
強化プラスチィック船で、衝撃にメッポウ強く
船底が岩にぶっかってもけして壊れることは
ありません。
もっとも最初からFRP船が使用されていた訳ではなく
400年の歴史がある保津川下りの内、ここ30年程の事です。

昔の船は杉で造った木造船を使用していたのです。

木造船はFRP船とは異なり川底の岩にぶつかると簡単に割れたそうです。

船底がぶっかった衝撃で盛り上がり割れ、そこから川の水が
船の中に入ってくる事も日常茶飯事だったそうです。

今では想像できないこんな事態を船頭はどうして
処理してきたのでしょう?

古い船頭さんの話によると、なんと、底が割れた船が
水没してしまう前に最寄の川岸に着け、
お客さんを川岸に一旦降ろしていたそうです。
そして船の最後部に設置していた道具箱から
仕舞っていた予備の杉板を出し、破損箇所に当てて
木で作ってあるフナクギというクギを打ち込み
応急な処置をして、また出発していたというのです。

今ならちょっとしたニュースになりかねない話ですが、
その当時はお客さんも喜んで修理に付き合って頂いたといいます。

昔はなんとものんびりした時代だったのですね。

その分、船を潰してはならないと船頭の
操縦テクニックも相当高かった様です。

今はFRP船という絶対に割れない船の構造に
なりましたが、昔の船頭に習い、岩場を
縫っていくような高度な技術を身につけたいと
日々努力するはっちんなのです。