「初めは重宝していたんです。食べないし、休憩時間もいらない。文句も言いませんしねぇ。一日中働く。閉店後の掃除は任せられる」
だけどムッシュは少しずつ変化していった。
「私らにだって、苦手なお客様はいます。人間ですからね」
ムッシュの態度が、客によって微妙にちがってきた。そーと音を立てずに水を置く客と、少し乱雑に置く客。
「ロボ・ボーイの接客態度が悪い客は私らが苦手だと思う客と一致しているんですよ」
それが段々と激しくなってきた。水をこぼすようになってきた。やくざに殴られると、反撃した。
「それと」
彼は言葉を句切った。
「彼は眠るようになった」
「眠る」
「私にはそう見えました。無反応になるのです。そういうことで返品しました」
「今はどこにいるのですか」
「敦賀だと聞いています」
「敦賀?」
「福井県じゃないですか」
福井県と言われても分からない。確か北陸だ。
「何なら、本部に聞いてみましょうか?」
「結構です。聞いてみただけですから」
「それはそうですね」
「でも、雪が深いだろうなあ。僕も北国の出なんですよ」
彼は出口まで送ってくれた。
「雪道は滑りますよ。気をつけて」
私の心は何年ぶりかで弾んでいた。敦賀へ行こう。ムッシュを探そう。
だけどムッシュは少しずつ変化していった。
「私らにだって、苦手なお客様はいます。人間ですからね」
ムッシュの態度が、客によって微妙にちがってきた。そーと音を立てずに水を置く客と、少し乱雑に置く客。
「ロボ・ボーイの接客態度が悪い客は私らが苦手だと思う客と一致しているんですよ」
それが段々と激しくなってきた。水をこぼすようになってきた。やくざに殴られると、反撃した。
「それと」
彼は言葉を句切った。
「彼は眠るようになった」
「眠る」
「私にはそう見えました。無反応になるのです。そういうことで返品しました」
「今はどこにいるのですか」
「敦賀だと聞いています」
「敦賀?」
「福井県じゃないですか」
福井県と言われても分からない。確か北陸だ。
「何なら、本部に聞いてみましょうか?」
「結構です。聞いてみただけですから」
「それはそうですね」
「でも、雪が深いだろうなあ。僕も北国の出なんですよ」
彼は出口まで送ってくれた。
「雪道は滑りますよ。気をつけて」
私の心は何年ぶりかで弾んでいた。敦賀へ行こう。ムッシュを探そう。