今昔物語を読んでいます。夢中になっています。「芋粥」を読みました。芥川龍之介の「芋粥」は読んだかどうか? どちらにしても遠い昔の話です。改めてiPadで読んでみようと思いました。iPadで青空文庫を読むのは
i文庫HDが一番だと思います。作品名・作者別の索引も充実しています。電子ブックの機能も十分です。コピーも簡単で自分なりのスクラップも出来ます。(
著作権の関係でしょうか、意外とコピーの出来ない電子ブックが多いですよ)。今昔物語の「芋粥」と芥川の「芋粥」の比較は、ネットでもすぐ出てきます。今さら言うまでもないということで、私は、芥川のこの文に惹かれました。少し長いですけど引用します。
「「いけぬのう、お身たちは。」と云ふ。その顔を見、その声を聞いた者は、誰でも一時或いぢらしさに打たれてしまふ。(彼等にいぢめられるのは、一人、この赤鼻の五位だけではない、彼等の知らない誰かが――多数の誰かが、彼の顔と声とを借りて、彼等の無情を責めてゐる。)――さう云ふ気が、朧げながら、彼等の心に、一瞬の間、しみこんで来るからである。唯その時の心もちを、何時までも持続ける者は甚少い。その少い中の一人に、或無位の侍があつた。これは丹波の国から来た男で、まだ柔かい口髭が、やつと鼻の下に、生えかかつた位の青年である。勿論、この男も始めは皆と一しよに、何の理由もなく、赤鼻の五位を軽蔑した。所が、或日何かの折に、「いけぬのう、お身たちは」と云ふ声を聞いてからは、どうしても、それが頭を離れない。それ以来、この男の眼にだけは、五位が全く別人として、映るやうになつた。栄養の不足した、血色の悪い、間のぬけた五位の顔に世間の迫害にべそを掻いた、「人間」が覗いてゐるからである。この無位の侍には、五位の事を考へる度に、世の中のすべてが急に本来の下等さを露すやうに思はれた。さうしてそれと同時に霜げた赤鼻と数へる程の口髭とが
何となく一味の慰安を自分の心に伝へてくれるやうに思はれた。…… しかし、それは、唯この男一人に、限つた事である」
この無位の侍については今昔物語にはありません。また、芥川の「芋粥」でもここだけです。味わい深く色々考えさせられます。みなさんは、どう思いますか?