創作日記&作品集

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9月13日

2016-09-14 13:56:54 | エッセイ
今年の9月13日も何事もなく過ぎた。
半世紀以上も前の9月13日、私は交通事故に遭った。
自転車で道路を横切り、単車と衝突した瞬間、自分が考えた事を今もはっきり覚えている。
「行け!」と頭の中の僕が言った。
「大丈夫だよ。衝突なんかしないよ。突き抜けたらいつもの生活があるよ。行け!」。
次の瞬間全てが弾けた。
ふらふらと立ち上がり、小型 三輪トラックの荷台に上った。
ベッドによじ登ると、「この子焦ってるわ」と看護婦が笑った。
「助かりまっしゃろか」。闇の中で父の声がした。「そんなことわからへん」医者が怒鳴った。
「命は?」。兄の声がした。
「それはこのぼんしだいやな」医者が言った。
意識が戻ると、知らないおばさんがいた。
商売が忙しかったから、付き添いを雇ったのだった。
小便の後に、ちり紙で性器を拭いてくれた。奇妙な感触だった。
音痴な僕には、嫌で嫌で仕方がなかった音楽の独唱のテストが迫っていた。
それを逃れられたのが。まず、嬉しかった。
9月13日になると、決まってこのことを思い出す。
「命日」だと人にも言う。
あれは一種の自殺ではなかったかと思うこともある。