

自転車で道路を横切り、単車と衝突した瞬間、自分が考えた事を今もはっきり覚えている。
「行け!」と頭の中の僕が言った。
「大丈夫だよ。衝突なんかしないよ。突き抜けたらいつもの生活があるよ。行け!」。
次の瞬間全てが弾けた。
ふらふらと立ち上がり、小型 三輪トラックの荷台に上った。
ベッドによじ登ると、

「助かりまっしゃろか」。闇の中で父の声がした。

「命は?」。兄の声がした。
「それはこのぼんしだいやな」医者が言った。


小便の後に、ちり紙で性器を拭いてくれた。奇妙な感触だった。
音痴な僕には、嫌で嫌で仕方がなかった音楽の独唱のテストが迫っていた。

9月13日になると、決まってこのことを思い出す。
「命日」だと人にも言う。
あれは一種の自殺ではなかったかと思うこともある。