連載小説をはじめます。
「Q」の意味はQueenです。
途中から登場します。
お楽しみ下さい。
一 プロローグ
物語は無垢で仕事熱心な青年大谷光一君が、戸建て住宅団地の一番奥にある小さな家のインターホンを押したことから始まった。
彼がマニュアルやパンフレットがぎっしりと詰まった鞄と、一体二㎏の商品が入ったキャリーバッグを引きずりながら、百軒あまりの住宅団地に迷い込んだのは、大暑、最高気温四十度を記録した日だった。
彼の目的地が奈良県S郡T町大字Tの明生(めいせい)団地だったので、迷い込んだという表現は適切でないかもしれない。
しかし、汗まみれになり、意識もぼんやりして、ひたすらにインターホーンを押して歩く彼の姿は、迷路に迷い込んだハツカネズミのようだった。
彼は犬型ロボット『愛慕((あいぼ)』のセールスマンである。
昔はS社の製品であったが、今は中国で作っている。
技術力の高い中国にS社が丸投げしてしまった。
それをS社が逆輸入している。
名前も『アイボ』から『愛慕(あいぼ)』になった。
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