つれづれなるままに

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映画「おとうと」

2010年02月07日 | 芸能
                       映画「おとうと」

映画「おとうと」を観てきた。
監督は山田洋次。
東京で薬剤店を開いて堅実に生きてきた姉と、大阪で何かと問題ばかりを起こしてきた弟との、再会と別れを優しく切々と謳いあげる、笑いと涙にあふれた物語です。

姉の吟子に扮するのは、吉永小百合
冗談ばかりの弟と真面目な姉の、微妙にかみ合わないおかしさを軽やかに演じると同時に、賢い姉であり母である吟子の家族への愛情を全身からにじませ、スクリーンに優しさと温かみを添えています。
愚かな弟の鉄郎には、笑福亭鶴瓶
何かと問題ばかり起こしてはいるが愛すべき存在である彼の姿に、『男はつらいよ』の“寅さん”が重なります。
吟子の娘、小春には、蒼井優
小春の幼なじみで大工の亨には、加瀬亮
また鉄郎さえ絶句させる吟子の義母に加藤治子、厳格な兄に小林稔侍が扮し、小日向文世、石田ゆり子、笹野高史、森本レオ、キムラ緑子、近藤公園など、錚々たる顔ぶれが出演しています。
戦後の昭和に生まれ育った姉と弟の切りようにも切れない絆を、バブル景気の直前に生まれた娘の眼を通して描く映画で、現在とこれからの日本の家族の姿です。

小春の結婚披露宴に現われ、破天荒な行動を演ずる笑福亭鶴瓶がとても良い。
まわりの人たちからは疎んじられる弟を、姉の吉永小百合は弟のしたことの尻拭いに奔走する。
その弟が死ぬ時のラストシーンは、泣かせる。
どこにも存在する家庭の一端を自然に演出している山田洋次監督の秀作である。
鶴瓶の役が、今は亡き渥美清のフーテンの寅さんを髣髴させるものがある。

映画館の中では、ストーリーが展開する度に声を出して感想を述べている年配のおばさんたちがいた。映画の中に自分を映し出しているのだろう。
ラストシーンは場内からすすり泣く音が聞こえてきた。

(2月7日記)
コメント
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