これまでも何度もご紹介している朝日新聞・静岡版の渡辺先生の連載。先週末は食事の問題だった。以下転載させて頂く。
※ ※ ※(転載開始)
がん内科医のひとり言(2013年3月15日)
がんと栄養
■普通の食事楽しむのが一番
がん患者は○○を食べてはだめ、▽▽はがんにいい、といった話がマスコミなどでまことしやかに語られています。絶食や断食などの間違った食事で低栄養状態に陥ったがん患者が餓死したという痛ましい話もありました。
栄養や食事療法、温泉などの物理療法をまとめて補完代替医療と呼び、本当に効果があるかについて、科学的に証明しようという取り組みも行われています。
大豆に含まれるイソフラボンは、その化学構造が女性ホルモンに似ており、大変弱いのですが女性ホルモンのような働きを持つことが知られています。乳がんの発生や増殖は女性ホルモンによって促進されることから、大豆製品は乳がん患者によくないのではないか、と言う意見が古くからありました。
一方で、日本、韓国、中国では、乳がんの発生率が欧米に比べて低いことが知られています。しかし、ハワイや米国本土に住む東洋人の2世、3世の女性の乳がん発生率は欧米人と同じであることから、食事、とくに東洋人が多く摂取する大豆食品は、乳がんには予防的に働いているのではないか、という説もあります。
豆腐を多く食べる沖縄県、納豆を多く食べる茨城県では他県に比べ、乳がんが少ない、という日本の研究結果もこの説を支持しています。
私の答えはこうです。
「大豆イソフラボンを大量に濃縮したサプリメントは、女性ホルモンのような働きで、ひょっとしたら乳がんの増殖が刺激されるかもしれないのでやめておきましょう。しかし、毎日食べても納豆、みそ汁、豆腐、おから、煮豆などの大豆食品に含まれるイソフラボンの量は少ないので、ひょっとしたら乳がんの増殖が抑制されるかもしれません」
「おいしいね」と、毎日の糧を神様に感謝しながら、普通の食事を楽しむのが一番よいと思います。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)
(転載終了)※ ※ ※
まあ、絶食や断食で餓死というのはあまりに極端だと思うけれど、ただでさえ治療中で食欲不振だったり、味覚異常だったりすることが多い中、あれはダメ、これはダメとなったら生きていても本当につまらないだろうな、と思う。
以前にも書いたけれど、数年前にジェイン・プラントさんの「乳がんと牛乳」という本を読んで、乳製品や牛肉を摂る事がとても恐ろしくなった。牛乳は、もともとお腹の調子が悪くなるので、飲めなくても全くストレスはない。とはいえ、この著者のように徹底的に乳製品を摂らないというのは、普通の生活をしていく上であまりに非現実的だ。チーズを使ったイタリアンは好きだし、免疫力をアップするための赤いヨーグルトドリンクも飲めなくなってしまう。
だから“焼き肉命!”と言うほど牛肉が大好きの夫や息子と一緒に、積極的に焼き肉店で食事をするということは遠慮するものの、レストランでメインに牛肉が出てきたら、代替メニューがあるかどうか確認して、替えてもらえればラッキー、無理なら頂く、というレベル。なるべく避ける程度の緩い感じで続けてきている。
乳がんを例にとり、大豆のイソフラボンの話をされているが、要はどんな高名な先生だって絶対・・・なんて言い切ることは出来ないのだ。そして百人百様の人間の体にどれほど百人百様の作用があるか、などということはとてもじゃないけれど解らない。
ひょっとしたら・・・かもしれない、というのが本音のところだろう。そして、大量濃縮しているサプリメントを過信して摂り続けることはあまり良くはないだろうなと思うし(本音を言えば美味しくない薬のようなサプリメントの類はあまり摂りたくない。)、自然に食品から摂っている分には量として高が知れているから、それほど大きなダメージにもならないように思う。
繰り返しになるが、世の中には“絶対”なんてことはあり得ない。だからこそ、先生が書いておられる通り、日々「美味しいね」と笑顔で食事が頂ける幸せに感謝しながら-これは普通に暮らせているとついつい忘れがちなことだけれど、一旦この幸せを失うとどれほどそのことが有難いことなのか、身に沁みる(これは私が単なる食いしん坊だからか?)。だから普通に食事が出来る喜びを忘れるのは一番もったいないことだと思う。-なるべくバランス良く、旬の食材を取り入れながら好き嫌いなく食事を愉しむのがベストなのだろう。
さて、新しい1週間が始まった。なんとなく花曇りの一日。夜には雨風が強くなるという予報どおり、帰宅するときには雨がポツポツ降り出し、風も強く、かつらを押さえながら傘をさすのが難儀になった。
※ ※ ※(転載開始)
がん内科医のひとり言(2013年3月15日)
がんと栄養
■普通の食事楽しむのが一番
がん患者は○○を食べてはだめ、▽▽はがんにいい、といった話がマスコミなどでまことしやかに語られています。絶食や断食などの間違った食事で低栄養状態に陥ったがん患者が餓死したという痛ましい話もありました。
栄養や食事療法、温泉などの物理療法をまとめて補完代替医療と呼び、本当に効果があるかについて、科学的に証明しようという取り組みも行われています。
大豆に含まれるイソフラボンは、その化学構造が女性ホルモンに似ており、大変弱いのですが女性ホルモンのような働きを持つことが知られています。乳がんの発生や増殖は女性ホルモンによって促進されることから、大豆製品は乳がん患者によくないのではないか、と言う意見が古くからありました。
一方で、日本、韓国、中国では、乳がんの発生率が欧米に比べて低いことが知られています。しかし、ハワイや米国本土に住む東洋人の2世、3世の女性の乳がん発生率は欧米人と同じであることから、食事、とくに東洋人が多く摂取する大豆食品は、乳がんには予防的に働いているのではないか、という説もあります。
豆腐を多く食べる沖縄県、納豆を多く食べる茨城県では他県に比べ、乳がんが少ない、という日本の研究結果もこの説を支持しています。
私の答えはこうです。
「大豆イソフラボンを大量に濃縮したサプリメントは、女性ホルモンのような働きで、ひょっとしたら乳がんの増殖が刺激されるかもしれないのでやめておきましょう。しかし、毎日食べても納豆、みそ汁、豆腐、おから、煮豆などの大豆食品に含まれるイソフラボンの量は少ないので、ひょっとしたら乳がんの増殖が抑制されるかもしれません」
「おいしいね」と、毎日の糧を神様に感謝しながら、普通の食事を楽しむのが一番よいと思います。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)
(転載終了)※ ※ ※
まあ、絶食や断食で餓死というのはあまりに極端だと思うけれど、ただでさえ治療中で食欲不振だったり、味覚異常だったりすることが多い中、あれはダメ、これはダメとなったら生きていても本当につまらないだろうな、と思う。
以前にも書いたけれど、数年前にジェイン・プラントさんの「乳がんと牛乳」という本を読んで、乳製品や牛肉を摂る事がとても恐ろしくなった。牛乳は、もともとお腹の調子が悪くなるので、飲めなくても全くストレスはない。とはいえ、この著者のように徹底的に乳製品を摂らないというのは、普通の生活をしていく上であまりに非現実的だ。チーズを使ったイタリアンは好きだし、免疫力をアップするための赤いヨーグルトドリンクも飲めなくなってしまう。
だから“焼き肉命!”と言うほど牛肉が大好きの夫や息子と一緒に、積極的に焼き肉店で食事をするということは遠慮するものの、レストランでメインに牛肉が出てきたら、代替メニューがあるかどうか確認して、替えてもらえればラッキー、無理なら頂く、というレベル。なるべく避ける程度の緩い感じで続けてきている。
乳がんを例にとり、大豆のイソフラボンの話をされているが、要はどんな高名な先生だって絶対・・・なんて言い切ることは出来ないのだ。そして百人百様の人間の体にどれほど百人百様の作用があるか、などということはとてもじゃないけれど解らない。
ひょっとしたら・・・かもしれない、というのが本音のところだろう。そして、大量濃縮しているサプリメントを過信して摂り続けることはあまり良くはないだろうなと思うし(本音を言えば美味しくない薬のようなサプリメントの類はあまり摂りたくない。)、自然に食品から摂っている分には量として高が知れているから、それほど大きなダメージにもならないように思う。
繰り返しになるが、世の中には“絶対”なんてことはあり得ない。だからこそ、先生が書いておられる通り、日々「美味しいね」と笑顔で食事が頂ける幸せに感謝しながら-これは普通に暮らせているとついつい忘れがちなことだけれど、一旦この幸せを失うとどれほどそのことが有難いことなのか、身に沁みる(これは私が単なる食いしん坊だからか?)。だから普通に食事が出来る喜びを忘れるのは一番もったいないことだと思う。-なるべくバランス良く、旬の食材を取り入れながら好き嫌いなく食事を愉しむのがベストなのだろう。
さて、新しい1週間が始まった。なんとなく花曇りの一日。夜には雨風が強くなるという予報どおり、帰宅するときには雨がポツポツ降り出し、風も強く、かつらを押さえながら傘をさすのが難儀になった。