ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2013.3.21 新しいブラの季節に思うこと

2013-03-21 19:07:07 | 日記
 8年前の春、ちょうど今頃のこと。
 初発の手術後の傷がまだ癒えず、加えて25回、5週間毎日通った放射線治療中だった。傷口に限らず、放射線を当てている部分の肌はすっかり敏感になって火傷状に赤く腫れており、それまで使っていた普通のブラが触れると痛そうで、怖くて出来なくなった。
 そのため、入院中に身に付けていた胸帯をブラ代わりにつけていた。
 当時は外出すると言っても、自宅から2つ先の駅にあった病院に通院するだけ。寒さが厳しい時期だったし、厚着をしていたからブラなしでもそれほど目立つわけでもなく、それで我慢するしかなかった。
 けれど、やっぱりブラなしでは何となく心もとないし、傷口を庇うせいか背筋も伸びず、気付けば猫背で下を向いて歩いており、気持ちもどんどん下向きになっていた。

 ネットで検索して、乳がん術後用の下着等を個室で試着出来るというランジェリー会社の存在を知った。都内とはいえ、都心を超えて結構東の方。雛人形のお店で有名な駅が最寄だった。
 すっかり体力が落ちていて、1人でそこまで遠出をする自信がなかったので、春休みに夫と息子が国立博物館を見学しにいく日に合わせて予約をした。
 受付を済ませるとマンツーマンで専門のアドバイザーが付いてくれ、淡いピンクとベージュの色調の広い個室のフィッティングルームに案内された。お茶もサービスされてリラックスした雰囲気。アドバイス、採寸、試着・・・と1時間ほどだったろうか。綺麗なレースのパステルカラーのブラを沢山買いこんだ。2カ月近くぶりにつけたブラは傷口に当たることもなくとても優しく包み込んでくれて、それでも不思議なくらい気持ちも姿勢もしゃきんとした。凝り固まっていた気持ちがほぐれていくのを感じた。嬉しかった。部屋から出た時には買ったばかりの一番お気に入りのものを付け、微笑みながらビルを後にした。
 春の日、コートを脱いで少し胸を張って歩くことが出来たあの日の喜びは今でも忘れられない。
 遠いからそう何度も来られないだろうし、と何年分も買いこんだ。何より次回元気に来ることが出来るのだろうか、と一抹の不安は残っていた。

 以後、2月半ばくらいに毎年、新しい商品のパンフレットが送られてくる。それをめくるのも楽しかった。
 が、3年を経たずに再発し、2回目に訪れたのが4年前の春のこと。タキソテール6クールの治療が終了してまもなくだった。既に最初の中心静脈ポートが鎖骨下に設置されており、これまでのブラの肩ひもがポートや傷口に当たって痛いのも気になっていた。けれど、家から片道1時間半はたっぷりかかるので、体力がめっきり落ちた当時は1人で出かける自信がなかった。浮腫みが酷く(最後の1か月で8キロ近く増えた。)、履ける靴も1足しかなかった。
 けれど、とにかく治療が終わったということで、息子がスキースクールで留守なのに合わせて、夫と2人でお祝いにお花見を兼ねて都心のホテルに宿泊して、その日に合わせて予約した。
 この時はかつらを被って試着。初回から4年経っているのにその時のデータがちゃんと残っていた。採寸をすると、浮腫んでいたせいかサイズがちょっと大きくなっていた。肩ひもがポートに当たらないものを選んで、また何年分もまとめ買いした。
 今度こそ、次回は(生きて)来られないかもしれない、と思いつつ。

 そして、今回。何はともあれ再び4年が経った。そして4年前と同じかつらを被っている。
 今年のカタログで目星をつけておいた数量限定やら新製品やらを沢山試着させて頂いた。アンダーバストは前回より2センチ減(あとで夫に「痩せたよ〜」と言ったら「トップだって(減なん)でしょ」と言われた。あんまりだ。)。ピンクやラベンダーの大好きなパステルカラーを中心にベーシックなものも併せて、これまた沢山買いこんだ。
 一つ違うことは「また、次回も元気に生き伸びて来ます!」と言ってエレベーターまで送ってくれるアドバイザーさんに挨拶したこと。
 今年の新作、桜をモチーフにしたピンクの可愛いレースのブラをしながら、自分のお気に入りの下着をつけるだけでこうも前向きになれるのか、とその力を実感している。

 今日は陽差しは明るかったが、風は冷たかった。それでもいろいろな花がどんどん咲いている。雪柳の白も青空に眩しく映える。サクラは3,4分咲きといったところか。
 週末にはお花見が楽しめそうだけれど、日曜日は無情にも雨の予報。花散らしの冷たい雨になるようだ。なんとも意地の悪いお天気であることだ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする