散日拾遺

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福島へ往来

2014-11-19 07:30:24 | 日記

2014年11月18日(火)

 一週間前の火曜日は7時渋谷集合で、相馬まで日帰りの取材。福島出身で震災後も福島に留まり続けた臨床心理士Sさんに、じっくり話を聞きに行ったのだ。そのごく一部分を、放送教材の14回目で使うのだけれど、今は使えない部分がいつかきっと意味をもってくる。あるいは既に意味をもっている。

 今日は10回目の収録、前回より慣れてはきたが、どうもTVは好きになれない。というかTVに好かれていないらしい。スタッフに抱えられてどうにか運んでもらっているけれど、何だか性に合わないんだな。何が合わないか、あらまし見当はついているが、どうもしようがない。

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 「カンガ、あの人は才女じゃないや、でもルーかわいさに何とかしちゃうんだろう」

石田桃子の名訳、ふと原文が気になった。

 There's Kanga. She isn't Clever. Kanga isn't, but she would be so anxious about Roo that she would do a Good Thing to Do without thinking about it.

 なつかしいな、受験必須の so ~ that の構文だ。

 do a good thing to do without thinking about it.

 なんて素敵なこと!

 E.H. Shepard の挿絵がいつ見ても良い。草地を渡るイングランドの風が薫るようで、行ったこともないのにひどく懐かしい心持ちがする。ディズニーの「プー」はまったく別のもので、このあたりからディズニーの「世俗化」が顕著になったのだ。

 「世俗化」って妙だな、でもそんな感じのことだ。

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 夜、宅急便が届く。段ボール箱の様子が、田舎からのものと少し違っている。Sさんからだ。

 開けて最初に見えたのは、包む新聞紙の「福島民友」の文字。
 その下に次から次へと新鮮な野菜が現れ、歓声しきり。 数え上げれば・・・

 水菜、ほうれん草、ポエム(初めてだ!)、チンゲンサイ、白菜、ピーマン、 かぼちゃ、大根、長芋、ハヤトウリ(初めてだ!)、里芋、以上11 種類に、ずっしり重たい米までも。

 福島の誇りだ。

 Sさんが被災後の浜通りで臨床活動を続ける間、中通りの御実家では風評被害に耐えて作物を育て続けていた。そのひたむきが箱に一杯。

 後光がさしている。