2020年5月12日(火)
『アメリカン・グラフィティ』を何度めかに見ていて。
主人公達よりは5歳ほども年下のキャロルというおてんば娘が、一生懸命背伸びしながら黄色い改造車のジョン・ミルナーにつきまとっている。
いよいよ家まで送りつけられ、車を降り際に、
"Do you like me?"
"Oh, I like you."
"No, do you like me?"
字面では何のことだかわからない。最初の質問で、キャロルは尻上がりに me を高く発音した。ごく普通の訊き方である。ジョンがあしらうように、おざなりに答えたのへ、二度目の質問ではことさら like を強く発音している。
学校英語の試験なんぞで、「この文脈では、どの語を強く発音すべきか」という定番の設問があるが、あの裏返しである。日本の従来の英語教育が大きく間違っていたとは思われない。内容は充実しており問題は取り組み方にあったのに、賢い人々が内容そのものをいじり回して破局的な結果をもたらしつつある。
それはさておき、
みそっかすのキャロルは認めてほしくてうずうずしており、しかし姉たちに相手にされず劣等感と闘う日々である。「私のこと、好き?」という字面だが、どちらかというと「私なんか、嫌い?」と言ってるのだ。
尻上がりに me が強調されるのは、疑問文のごく普通の発語としてそうなるところだが、強いて言うなら「(他の娘たちと比べて)私をどう思うか」と訊いていることになり、ジョンの答えも「(他の娘たちと比べて)嫌いじゃないさ」ぐらいのところ。
だからキャロルが食いついた。「(他の娘がどうこうじゃなくて、この私を)どう思ってるの?」
好きか嫌いかと like に力をこめたのである。
"Do you like me?"
"Oh, I like you."
"No, do you like me?"
暗がりに火花が飛んで、素敵にかわいいやりとりだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/ac/2d5e67902de6eb128e299151ae4b0fc0.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/ab/3e20a9b3432cafc4062014ad9ea1f7e4.jpg)
(ネット上に画像はたくさん挙がっているが、キャロルの映っている場面はなかなか見つからない。)
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