2020年5月31日(日)
健康心理学会は東北学院大学での開催を断念した。11月にバーチャルで開催する旨、ニューズレターを送ってきた封筒に大書されている。この規模の学会をバーチャルでどう運営するのか、御苦労を察しつつ興味津々である。
「新型コロナウイルス感染症の現状を鑑み」とあるのが少々残念、「現状に鑑み」が正しい。見渡せば誤用例が急増しており、いずれ悪貨が良貨を駆逐することになるのかもしれないが。
一方、まさしく感染症の現状に鑑みて中断されていた名人戦リーグは、6月から再開される。2ヶ月のブランクを埋めるべく強行日程が組まれており、これがどんな影響を及ぼすか。この間、新聞の観戦記欄も新規対局を掲載することができず、過去の名局の解説で食いつないでいた。それが、かえって嬉しかったりする。
今朝からは1998年の第23期名人戦挑戦手合い七番勝負、大三冠(二度目)の趙治勲名人に、リーグ戦8戦全勝の王立誠九段が挑んだ。名人の2勝1敗で迎えた第4局、「七大タイトル戦史上初の珍事が起こる」と記事の予告。そうか、あの一件か。
勝負所でコウが生じ、考慮していた趙が「僕の取り番?」と記録係に尋ね、「はい」との返事に応じてコウを抜いた。これがマチガイで実際にはコウダテする手順だったのである。
素人碁なら盤側から指摘が入り、「ゴメンゴメン」で打ち直すところだが、プロの公式対局では反則負けの可能性がある。記録係に尋ねたのが趙さんらしいところで、記録係もこの大棋士相手に「僕の役目じゃありません、訊かないでください」などとはとても言えない。「いいえ、コウダテする番です」と答えるべきところ、うっかり「はい」と言ってしまった。気の毒な話でもあり、いかにも趙治勲らしい逸話でもある。
結局、立会人裁定でこの一局は無勝負、これを機に記録係は手番に関する質問に答える義務のないことが確認され、あわせて番碁の記録係は二名置くことになった・・・ように記憶する。細かいこととはいえ制度変更のきっかけとなった、そして内容的には迫力満点の一局である。
「王はこの年の3月、世界戦LG杯で優勝するなど上昇気流に乗っていた。絶好調の源は、1992年頃から通い出した呉清源の研究会にあったという。
「碁を見てもらうと、瞬時にこう打つべしと斬新な手を示されました。当時の先生が示された手を、現在AIが打っています。すごい先生でした。」」
(内藤由起子記者)
Ω
【付記】
上記はマチガイ、この一件は、あの一件ではなかった。
→ https://blog.goo.ne.jp/ishimarium/e/0a5375d05f3a0041c1cdae7d45dc6e9c